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Ally-30:奇妙なる★ARAI(あるいは、電撃せんタイ!/つらぬき童子)
しおりを挟む結構広い空間ながら、閉め切られた閉塞感と、何とも言えない空気感がもやるように漂うこの地下空間において、
「改めて細則を説明するわねぇん……持ち時間は一手三十秒未満、その目の前の『着手ボタン』を押している間だけマイクが音声を拾うわぁん。その間に自分の思いのたけを込めてぶつければいいだけの単純な競技よほぉぉぉん……」
筋骨がゲイラカイトが如く展開しているその巨人、ジョリーヌさんがむほりとまた怖ろし気にほくそ笑んでからそう告げつつ、さらに画面の電源も点ける。
浮かび上がったのは、中央に<D★G★K>のド派手な飾り文字と、その周囲を埋め尽くす、マス目のように区切られた小さな「窓」であったわけで。その中にはそれぞれ多種多様なる人の顔が映っており、「こちら」と映像で繋がったことを感知したからか、無音でありながらも各々が一気に盛り上がっていっているサマが画面全体が蠢くようにして伝わってくる。
これが「評価者」……!! 「100人の」、とか言ってたけど確かにそれくらいいそう。逐一を観察していくと老若男女様々な人たちでひしめいているよでも熱狂的に画面のこちら側を覗き込んでくる瞳は何かちょっと常軌を逸した興奮に彩られている気がするよ怖いよ……
「評価者の持ち点は『ひとり100pt』。つまりは最高得点『10,000pt』のうち、『7,500pt以上』であればアンタらがたの勝ちってわけぬぇん……」
くねっとまた無意味にしなを作りながら、ピンクつなぎの巨体がやけにごつい指で、黄郎氏が拘束されているソファの肘掛け辺りを指し示した。
「右手首を固定したるその『真実の輪』にはッ!! 簡易的な『嘘発見機』が取り付けられていて、対局者が嘘をついたと判断した瞬間……ッ、全身がエビ反るレベルの電流がお菊さんへと撃ち放たれるから気をつけてねぇん……すなわち『嘘は御法度』。そこのうっとおしい髪のコはそのくらいご存じだとは思うけ・ど」
何だろうこの異世界は……人智が及ばないところで何かが確実に狂気という名の歯車をぎしぎし廻していき、それによって更なる奇怪な巨大機構みたいなものまで動かされていくような気配……も、もうテレビ云々はどうでもいいから、ただ切にこの異空間から無事に帰りたい気持ちでいっぱいだよ……
とか思っていたけど。
「……前置きはそれくらいにして、ささとやればいい……」
黄郎氏……ッ!! 椅子に拘束されてなお、その不気味なほどの余裕っぷりは不動なるがまま……唯一自由な左手指を軽く指パッチンさせながら、ゆったりともたれかかっているよどうしたの一体……
「んなぁるほど? 結構な手練れっていうわけかしらぁん……いいわぁ……ではさっそく!! ……ん始めましょうかしらねぇん……」
何だろうこの二人の世界は……願わくばそこだけで完結してほしい世界だけど……どっこい僕の隣でアライくんが興味津々の体で鼻でふんふん言いながらかぶりついているよ確かにこういうの好きそうだものね……
<第一局:対局者:ミツワ イエロウ:DR:1600>
と、画面にはそのような表示が。あれ? 「DR」とかいう謎の数値もそうだけど、それより何より身元割れてない?
「登録済!! ……んそして『1600』って結構やり込んでるクチねぇん……あららこれはちょっとマズいか・も」
「登録」って、髪人氏はこの何とかっていうのを既にやったことがあるってことか……何が「聞いたことある」だよどっぷりつかってたんじゃないかでもそれは心強いということに他ならないかも……いやでもジョリーヌさんはそれを確認しても何か余裕の体だ……ほんとこれどういう世界なの。
まぁいいわぁん、「着手時間」はさっきも言った通り「30秒」しかないから。ささっと行っちゃってみてぇん……との、いまだ底を見せない御仁が促すままに。
「……」
第一局は始まったわけで。黄郎氏はせわしなく鳴らしていた左の手の動きを止めると、人差し指と中指を伸ばして重ねると、まるで将棋の駒をつまんで盤上この一手を指す時のようによどみなく揺るぎなく、目の前に設置されている赤いボタンに打ち降ろしていく……
はじまる……!! なぜこうなったのかは皆目わからないけれど、戦いが……ッ、まごうことなき戦いが……ッ!!
刹那、だった……
「……『塾で三人掛けの、自分がいつも座る席の反対側にいつも座って来る結構かわいい子がいて、それが一か月続いたからもうこれ自分に気があるとしか思えなくなって意を決して「あれ?いつも隣だね」とか声を掛けようとした、まさにその日のその授業終わりのその瞬間、別の男が待っていたらしく親しげにその子の肩を叩くと一緒に仲良く教室を連れ立って出て行った件……あやうく声を掛けなくて命拾いした安堵感と得も言われぬ喪失感で自尊心が引き裂かれそうになった件』」
な、何だこれはぁ~!? これが「DEP」? 闇が深すぎてよく把握できないのだ↑が→ッ。
「……このコやる……ッ!!」
ジョリーヌさんのトーテムポール面が腐り崩れたかのように歪んだ。え、これ評価そんな高いんですか? わからない……この世界わからないよ。というかリアルに過ぎるよこれ司る者の体験談なんじゃないのと思わせるほどのリアルさだよ……とか滅裂な思考に迷い込む僕をまた尻目に、
<集計中……>の文字が画面に大写しになり、沈黙がこの場を支配する……次の瞬間、
<評価点:7,232pt>
ぐっ、と髪人氏の喉奥が鳴ったような音が静寂の中、響く。「勝ち」のラインは「7,500」と言っていた。つまり、ほんの少しだけ、ほんとに惜しいところで、そこには届かなかったということなわけで。
で、でもよく分からないけどすごいよこんな点数取れたんだからいやぁ今までないがしろ気味にしていてごめん……みたいな、半分意味不明だったけど半分は本物のねぎらいを見せつつ、ソファにもたれて力を失ったかに見えるその細い背中に声を掛けようとした。
刹那、だった。
「Wooooooooooooooooooooooooomッ!!」
黄郎氏の体が、拘束されたままながら最大限に弓なりにしなったかと思った瞬間、そのような人が発したとは到底思えないほどの尋常じゃあない叫び声がこの閉鎖空間を震わせるかのように轟いたわけで。
「んぬこっこっこっこぉ……い~い雄叫びだったわねぇん……が、んが!! 迫る勢いだったけれど負けは負け……『規則』通りにお菊へ電流を放たせてもらったわぁん……」
ぃヤバいッ!! 今すぐここから逃げないと!! 上を向いたままガクガクと断続的な震えを見せている髪人……と、とんでもない電気椅子があったもんだ……いやそれより何より離脱ッ!! 離脱ぅぅぅぅ……ッ
と、僕が感情的撤退を皆に促そうとした、その瞬間だった。
「……仇は取るぜぇ伊右衛朗よぉ……」
どういうベクトルかはやはり分からなかったけれど、今度は猿人氏がッ!! わけのわからない真剣空気を醸しつつ、僕らの前にその幅広い背中を強張らせながら一歩踏み出していくよどうなってるの……
戦いは……ッ、まだまだ続きそうであり……ッ!! (もうお腹いっぱいだけどェ……)
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