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Ally-41:窮極なる★ARAI(あるいは、天上!スカーレット/カオスゲイザー)
しおりを挟む「ジローくんっ、良かった、来れたね」
背後からそのような、天上のサラトガが如くの(意味略)言葉がかかる。ああ何か良かった、このまま二人で登校しても何か間がもたなそうだったから。ぃやあご心配おかけしまして……みたいに少しおどけた感じで振り返った僕であったものの。
息せき切って駆けてきた天使は、何日か振りに見てもやはり可憐という概念を具現化したかのような美しさを煌き放ってきていたけれど、その焦げ茶色の髪は何故か御大同様の純然たる聖子ちゃんカットを具現していたわけで。
あれぇ、僕もしかして1985年にタイムスリップしちゃったのかなあ……と、まさかのW聖子に挟まれ、往時の正輝もかくやと思わせるほどの此処が正に聖輝末(意味略)な次元に落とされたのかと錯覚したのも束の間、
「え……誰その女」
感情の無い声が天使から放たれる……それはまるであのリコ御姉様ののっぴきならない時に似た、諸刃のゴシック体の角が尖る「不穏」という文字がフオンフオンと回転しながらこちらの首を刈らんと飛んでくるような恐怖を突きつけてくるものの。
あ、何だアライくんか……セーラー似合ってる!! えでも何でその髪型……私それにするって言ったよね……とその正体に気付いてなお、能面のような顔で唇をあまり動かさなくなった天使が無感情に問うているのが本当に怖いんだけれど。
アラ「我《ワ》ぁは前髪ば固めんとこんばになるんよ……本当じゃじ、決してシアンのと張り合おうとかそういう意図とか魂胆は無いのです……」
シア「ジローくん、ジョリーヌさんに例の嘘つくと全身がエビ反るレベルの電流が放たれるソファって発注できないかな……ジローくんがこの髪型が好き過ぎて異常に劣情を抱くってアライくんから聞いたからこれにしてきたのにこの仕打ち……ちょっとおかしくない……」
ジロ「待って待って!! 二人ともおかしいですぞッ、それにそもそも僕にそんな性癖は無いってば!! な、なぁにを世迷言を言ってるんだねアライくんはぁ~」
アラ「ジローの方を座らせた方がいいがばかいねぇ……いつかだったんげか食い入るように見ちょったがげに。ま、我ぁは、あの夜、あんちょげた事もあったばじ、ジローの好むば格好にしちゃだげがによぉ」
シア「え? 『あの夜』ってなに? 『あんちょげた』ってなに? 二人に何がアッタッテイウノ……?」
ジロ「待ってよ!! おかしいよ何も無かったよ!! 何で今日は徹頭徹尾、虚構で固めようとしてくるのッ!? コラ、顔を赤らめそして目を伏せ逸らさないッ!! そして三ツ輪さんも落ち着いてヒトの表情と感情を戻していこうッ!? 誓って言うけど僕は潔白だッ!!」
混沌の羅撫籠的時空間の中に、答え①……答え①……という謎の空耳がこだまするが、何だろうとか思っている暇は無い。せっかく今日が祭りの初日だというのに、団員内に禍根を残しては駄目だっ!! そう、いま僕がやらなければならないことは、この身の清廉を証明することに他ならぬッ……!! 落ち着け。顧みてやましい事など何も無い……ならば毅然とぉッ!! 僕は一回大きく息を吸い込み丹田に力を込めると、姿勢を正し、高らかに揺るぎない真実の言葉を紡ぎ出していく。
「僕は水曜の夜、アライくんを家の近場まで送っていっただけでありッ!! でも途中から体の震えが止まらなくなったアライくんを放っておくことも出来ずにッ!! お金も無かったから近くの公園にて自販機で買った『あったかコンポタ』を分け合いつつ飲みながらッ!! 落ち着くまでベンチに二人並んで座って手を握ってあげていた、ただのそれだけの事なんだよぉぁッ!! 『あんちょげた』ことなんて皆目何も無かったって、分かってくれるよねッ!? 三ツ輪さんッ!! 」
無辜なる魂の言の葉たちはしかし、
「……ぇぁ?」
という、日本人が苦手であるところの発音である「æ」を、とても綺麗にそして無感情に、さらに表情が抜け落ちてがらんどうになった顔で放った、いてつく波動が如くの天使の言葉にかき消されていくのであって。瞬間、僕らの周囲半径五メートルくらいの空間に、空気と熱とが奪われ去ったかのような、真空のような絶対零度のような場が展開していくようであって。
あっるぇ~、また僕なんかやっちゃいました~?
今まで生きてきた中でいちばんのっぴきならない空気を感じて、すかさず、ぼ僕何だかおなか痛くなってきちゃったから駅のトイレ借りてから行くね、と踵を返してその場から逃げ去ろうとするものの。
「うおいおいおい、皆そろってどうしたんだって、おろ? またジローくんだけカッコが」
「フッ……我が同志たち……みなそれぞれに個性ある聖子……」
まさかの金髪タイプの聖子と猿人タイプの聖子に退路を塞がれてしまい、進退窮まった僕は適当な高さの植え込みの段差を見繕うと、それによいしょとよじ登ってから、
「せ、聖子ハーレムエンドなんて、ま、まっぴら御免だってばよぉぉぉぉぉぉぉうッ!!」
とうっと高らかにジャンプ。そして最高到達点でこれでもかのキメ顔&キメポーズ。これ以上ない見事なシメを放ったものの、現実はそこで「終」の字が出て来ることもなく、ただ僕はコンマ一瞬出来たみんなの空白の時間を掠めとるようにして脱兎の如く学校へ向かって駆け出し逃げていくのであった……
そして、祭りが始まった。
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