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☗1五金(あるいは、示したい、モノほど/示されたとて、なコトへと)
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「ここ」に来てから。とんでもなくポジティブで傲岸な、「昔のあたし」がちょくちょく「オモテ」に出てきている気がする。いや、確実にそうなりがちっていうか。
それを一段高いとこから俯瞰している位置感のあたしがいるということも認識している。何でだろう二つの視点……「対局者としての自分」と「解説者としての自分」、みたいな。こんな二面的なメンタルが、「異世界転移」というものの流儀なんだろうか。「演じる自分」……悪くはないんだけれど、ちょっとこわい。何でだろ。ここのものを自分の中に取り入れたからだろうか。今のひと呼吸ごとひと呼吸ごとにも、爽快なんだけどあぶなっかしくもある「全能感」みたいなものが身体全体を巡っている。それを見てる自分もいたりして、あたしの思考はちょっとどころじゃなくかなり混乱気味なのだけれど。そんな葛藤はもちろん表には出さず。今のこの「局面」に集中していく。
「……ハカナ殿、心強い言葉、痛み入る。我々は公国の尖兵としてかなる辺境の地に砦を敷いているが、ここ十数日、敵の異形なる攻撃を受け続け負傷、疲弊しているのが実態」
相対する玉座の上のこの「砦」の最高権力者、「将」と呼ばれていた壮年殿は、ややその強面を歪めつつ、あたしに言葉を発してくるけど。その目、その表情に向き合っていると、場違いには違いないだろうけど、この方も「演じている」んじゃないの、っていうどっか「俯瞰」した思考も巡る。いや、ひとってみんなそうなのかも。「外に向けて出す自分」。それは色々自分の中で考えて構築していくものなのかも、とかどんどん思考が逸れていっちゃう。集中しないと。呼吸を。深く長く。
「……我が方の全『棋兵』においては皆尽力しているものの防戦一方。いきなりの敵の予測不能な侵攻、からの不可解な戦況……そこに突如現れた貴殿という存在……何かが起こってはいると認識はしているが、それにどう対応していくべきか、決めかねている。とまでは言っておこう。そして正直に申すと、私はまだ貴殿を全面的に信用したわけではない」
「将」殿の言葉が重く響く。信用。けど、それを面と向かって告げてくれたことに真摯で真剣に向き合ってくれているんだということも感じている。それが外に向けたやり取りってものなんだろうか。今までのあたしを振り返ってみるに、ポジでもネガでもそんな風に自分以外の「相手」についてそこまで考えたことなんて無かった。いや、そんな自省を今してる場合でもない。そんな言葉にはこちらも真摯に応えるべきだと、それくらいはあたしでも分かる。
「……それは当然。であれば此処に居座らせるよりも、前線へと送り出してくださいませ。いくさ働き……そちらを以てして『戦況』『信用』、どちらも御前へと供させていただきたく」
あたしも考えるんだ。相手のことを考えて言葉を放つ。「異世界流儀」とやらで変わらされるってんなら、変わっていってるんだったら、変えていくまでだ。今の今までのことを全部頭の中に巻き返して構築してみる。初っ端に放り込まれた「戦場」。そこで陥った絶体絶命の危機。それを覆したあたしの中の何か。
はったりでジェスとかに言われてたままに自分でもフライング気味で名乗っちゃった「聖棋士」とやらだけれど、それプラスあの猫神さまが言っていた「将棋の力」で云々のこと、あの時確かに響いた「5二白駒」という「読み上げ」の声。それらの事から鑑みられるのは、やっぱり「将棋」であるはず。もっと言うと、「人間将棋」に近しい何かなんじゃないだろうか。そしてさらに。
「はっく」……って聞いたことある。「中将棋」だか「大将棋」だかの。普通の今の「本将棋」よりも盤面も広く、使う駒の数も種類も多い、言ってみれば「原始将棋」……それが該当するんじゃあないだろうか。いや、そうと決めて話を進めていく。自分で考えて自分で道を選ぶんだ。
「……なかなかに肝の据わった御方だ。その心意気、ふっ、ひどく気に入った。非常に……何と言うか、我が配下に欲しい人材よ」
「将」殿がその顔力を少し抜いて見せた微笑は、演技だろうか否か。どちらにしてもそんな好反応を引き出せたってことは、今までのやりとり、大きく間違ってはいないはず。
……あれ。何かあたし、凄い脳演算してる……あたかも落とせない対局の、初手から一手一手にびんびんに思考を巡らせてる時のような。そうだ……そうか、そうやって何事にも向き合えばよかったのかも。なんて、「異世界」に来てから、図らずも「前いた世界」での出来事がフラッシュバックする。今はまだどっちにも足突っ込んでる感じかもだけど。でもそれでもいいのかも。だって「転移」しようがあたしはあたしのまま、のはずだから。根っこのところは変わらない(はず)。
「……とは言え万全を期したいという私の、さらには負け戦ばかりで押し込まれているが故の周到さも汲んでくれれば幸いだ。そう、このまま何もせぬまま、貴殿を前線……ひいては『敵方』に向かわせるということは、万が一を考えて避けたいという考えを」
お互いの意識が。そしてお互いの意志が。まるで二人の間に中空からどすと落っこちてきた六寸九分の足付盤を挟んで、相手の思考の全部を漉し取ろうとするまである思考の応酬をしながら絡み合いつつ渾身の一手を放っていくかのような。そんな濃密な感じに。あれあたしって今、全部の思考が対局みたいになっている……
自分のメンタルというか思考状況がえらいことになってはいるものの、それは不快では全然無く。深く深く、自分の思考の奥底だけではなく、相手の思考の先の先まで。
「つまりは、力を示せと。先刻の敵方将の討ち取り……あれが策……狂言ではない可能性がないかまだ測りかねていると」
思考と合致した言葉を放つこと、そのことの重要性と、何と言うかの爽快さを感じている。感じているままに向き合っていく。
「そこまでの理解。ますます欲しいな。であればゆえに、こちらの無粋なる『試し』も、造作なきこととは思うが」
微笑よりも深い、例えるなら「にやり」とした笑い。それは多分にこちらに向けて作られたものであるとは思ったけど、その奥に潜む思考は逆に、真実の、真意に近づいたと思えた。あとはあたしの「力」を示すまでだ。
……まあそれがいまいち自分でも掴めてはいないんだけれど。うぅんどうしよう。ハッタリに伴った行動もなくっちゃあやっぱりダメだよね……
「……」
砦の、中庭まで移動してくれとのことで、あたしの付き人みたいな立場を買って出てくれたジェスとゼルメダの二人にお任せしつつ、そこへと至る石造りの狭い通路をなるべくゆっくりと進んでいくのだけれど。
「ニャフフフ……なかなかの『無双』っぷり……これはあれですかニャ? 『夢みた自分をまるごと自分に投影する』という……あの例のアレですかニャって、うおっあぶねニャッ!?」
足元の暗がりからそんな聞き覚えがあり過ぎる猫声があたしにだけ聞こえるほどの夜盗の闇がたり的なデシベルで響いて来た。のは何となく予期していたこともあって、諸々を乗せたあたしの左足がそのしなやかな黒猫の体躯へ向けて何一つ躊躇なく踏み出されていくのを慌てて飛びすさり避ける気配だけが薄闇の中を漂ってくる。
「……なに」
「く、唇を全く動かさない熟練の技を以てしてさらには何故か声が/遅れて/聴こえるのはニャぜなのでしょう……わわわわ私ですにゃんよ、超絶女神ことネコルニ……うおっあぶぶ」
あくまで歩様に不自然さは滲ませないように、それでいて的確に足元にまとわりついてくる小動物の気配と思考を先取りしてみて、踏み下ろす位置とタイミングを修正していく。逃げ惑う気配が一歩ごとに漂ってくるけど。
「……だからなに」
「ほほほほらアレですにゃんよ、チュートリアリックなお得情報を逐一レクチャーしてくる愛くるしいマスコット的な……」
猫の姿に擬態しているのは、周りに正体を掴ませないためか、それとも己の趣味嗜好なのかそれともその両方なのか、それだけは把握は出来なかったけど、諸々の感情を差し引いてみて、いまこの状況ではありがたい存在と言えなくもなかった。ので仕方なく踏みつける角度は和らげてあげてみる。と、
「……あまり時間が無いのでひとつだけ、この世界のあらゆる『戦場』は『長方形の枡目』にて区切られる……そしてその間の『移動』は自らに与えられし『棋霊』の属性に依り抑制あるいは促進されてしまうということ……」
もったいぶって言ってくるけど、そして「にゃ」挟まんでも普通に喋れてるけど、「それ」は神である貴女が決めた法則なんでしょうよ。でも多分に「将棋」に根差しているということ、その裏は取れた。そしておそらくあたしの「棋霊」ってのは「白駒」。それの駒としての利きは聞いておきたかったとこだからまあ有用情報ってことで良しとしよう。小声で交わされたのはでも、予想以上に「良い」ものであった。
「白駒」は【左斜め前・前・右斜め前・後ろ】へと、飛車角のように他の駒が無ければどこまでも行けるという、なかなかの強駒なのですにゃんよ……と囁かれ、ふぅん大駒ばりの動きだ、これならそうそう相手に後れを取ることは無さそう……そして何かいつもの駒以外のが出てくるのって何か新鮮でいいかも、とか何となくの取っ掛かりと手ごたえを掴みかけている。
「そうそう、ただひとつ気をつけなければならにゃいのは、利き以外の『枡目』に自分の意思でもそうでなくても入ってしまった場合は何と……」
なるほど、そんな「異世界」ならではのルールってのもあるわけ。いいよ、それも面白い要素ではあるかも、とかあたしにしては前のめりに聞こうとした姿勢を取ったのだけれど。
刹那、だった……
「瞬間、身体が縦に真っ二つに裂けて死にますのニャ!! ぷぷ……これはド派手で笑えるファクターでにゃしょ?」
「からだが縦にまっぷたつ」
いやいやいやいや、全ッ然、笑えねーんだわッ!!
それを一段高いとこから俯瞰している位置感のあたしがいるということも認識している。何でだろう二つの視点……「対局者としての自分」と「解説者としての自分」、みたいな。こんな二面的なメンタルが、「異世界転移」というものの流儀なんだろうか。「演じる自分」……悪くはないんだけれど、ちょっとこわい。何でだろ。ここのものを自分の中に取り入れたからだろうか。今のひと呼吸ごとひと呼吸ごとにも、爽快なんだけどあぶなっかしくもある「全能感」みたいなものが身体全体を巡っている。それを見てる自分もいたりして、あたしの思考はちょっとどころじゃなくかなり混乱気味なのだけれど。そんな葛藤はもちろん表には出さず。今のこの「局面」に集中していく。
「……ハカナ殿、心強い言葉、痛み入る。我々は公国の尖兵としてかなる辺境の地に砦を敷いているが、ここ十数日、敵の異形なる攻撃を受け続け負傷、疲弊しているのが実態」
相対する玉座の上のこの「砦」の最高権力者、「将」と呼ばれていた壮年殿は、ややその強面を歪めつつ、あたしに言葉を発してくるけど。その目、その表情に向き合っていると、場違いには違いないだろうけど、この方も「演じている」んじゃないの、っていうどっか「俯瞰」した思考も巡る。いや、ひとってみんなそうなのかも。「外に向けて出す自分」。それは色々自分の中で考えて構築していくものなのかも、とかどんどん思考が逸れていっちゃう。集中しないと。呼吸を。深く長く。
「……我が方の全『棋兵』においては皆尽力しているものの防戦一方。いきなりの敵の予測不能な侵攻、からの不可解な戦況……そこに突如現れた貴殿という存在……何かが起こってはいると認識はしているが、それにどう対応していくべきか、決めかねている。とまでは言っておこう。そして正直に申すと、私はまだ貴殿を全面的に信用したわけではない」
「将」殿の言葉が重く響く。信用。けど、それを面と向かって告げてくれたことに真摯で真剣に向き合ってくれているんだということも感じている。それが外に向けたやり取りってものなんだろうか。今までのあたしを振り返ってみるに、ポジでもネガでもそんな風に自分以外の「相手」についてそこまで考えたことなんて無かった。いや、そんな自省を今してる場合でもない。そんな言葉にはこちらも真摯に応えるべきだと、それくらいはあたしでも分かる。
「……それは当然。であれば此処に居座らせるよりも、前線へと送り出してくださいませ。いくさ働き……そちらを以てして『戦況』『信用』、どちらも御前へと供させていただきたく」
あたしも考えるんだ。相手のことを考えて言葉を放つ。「異世界流儀」とやらで変わらされるってんなら、変わっていってるんだったら、変えていくまでだ。今の今までのことを全部頭の中に巻き返して構築してみる。初っ端に放り込まれた「戦場」。そこで陥った絶体絶命の危機。それを覆したあたしの中の何か。
はったりでジェスとかに言われてたままに自分でもフライング気味で名乗っちゃった「聖棋士」とやらだけれど、それプラスあの猫神さまが言っていた「将棋の力」で云々のこと、あの時確かに響いた「5二白駒」という「読み上げ」の声。それらの事から鑑みられるのは、やっぱり「将棋」であるはず。もっと言うと、「人間将棋」に近しい何かなんじゃないだろうか。そしてさらに。
「はっく」……って聞いたことある。「中将棋」だか「大将棋」だかの。普通の今の「本将棋」よりも盤面も広く、使う駒の数も種類も多い、言ってみれば「原始将棋」……それが該当するんじゃあないだろうか。いや、そうと決めて話を進めていく。自分で考えて自分で道を選ぶんだ。
「……なかなかに肝の据わった御方だ。その心意気、ふっ、ひどく気に入った。非常に……何と言うか、我が配下に欲しい人材よ」
「将」殿がその顔力を少し抜いて見せた微笑は、演技だろうか否か。どちらにしてもそんな好反応を引き出せたってことは、今までのやりとり、大きく間違ってはいないはず。
……あれ。何かあたし、凄い脳演算してる……あたかも落とせない対局の、初手から一手一手にびんびんに思考を巡らせてる時のような。そうだ……そうか、そうやって何事にも向き合えばよかったのかも。なんて、「異世界」に来てから、図らずも「前いた世界」での出来事がフラッシュバックする。今はまだどっちにも足突っ込んでる感じかもだけど。でもそれでもいいのかも。だって「転移」しようがあたしはあたしのまま、のはずだから。根っこのところは変わらない(はず)。
「……とは言え万全を期したいという私の、さらには負け戦ばかりで押し込まれているが故の周到さも汲んでくれれば幸いだ。そう、このまま何もせぬまま、貴殿を前線……ひいては『敵方』に向かわせるということは、万が一を考えて避けたいという考えを」
お互いの意識が。そしてお互いの意志が。まるで二人の間に中空からどすと落っこちてきた六寸九分の足付盤を挟んで、相手の思考の全部を漉し取ろうとするまである思考の応酬をしながら絡み合いつつ渾身の一手を放っていくかのような。そんな濃密な感じに。あれあたしって今、全部の思考が対局みたいになっている……
自分のメンタルというか思考状況がえらいことになってはいるものの、それは不快では全然無く。深く深く、自分の思考の奥底だけではなく、相手の思考の先の先まで。
「つまりは、力を示せと。先刻の敵方将の討ち取り……あれが策……狂言ではない可能性がないかまだ測りかねていると」
思考と合致した言葉を放つこと、そのことの重要性と、何と言うかの爽快さを感じている。感じているままに向き合っていく。
「そこまでの理解。ますます欲しいな。であればゆえに、こちらの無粋なる『試し』も、造作なきこととは思うが」
微笑よりも深い、例えるなら「にやり」とした笑い。それは多分にこちらに向けて作られたものであるとは思ったけど、その奥に潜む思考は逆に、真実の、真意に近づいたと思えた。あとはあたしの「力」を示すまでだ。
……まあそれがいまいち自分でも掴めてはいないんだけれど。うぅんどうしよう。ハッタリに伴った行動もなくっちゃあやっぱりダメだよね……
「……」
砦の、中庭まで移動してくれとのことで、あたしの付き人みたいな立場を買って出てくれたジェスとゼルメダの二人にお任せしつつ、そこへと至る石造りの狭い通路をなるべくゆっくりと進んでいくのだけれど。
「ニャフフフ……なかなかの『無双』っぷり……これはあれですかニャ? 『夢みた自分をまるごと自分に投影する』という……あの例のアレですかニャって、うおっあぶねニャッ!?」
足元の暗がりからそんな聞き覚えがあり過ぎる猫声があたしにだけ聞こえるほどの夜盗の闇がたり的なデシベルで響いて来た。のは何となく予期していたこともあって、諸々を乗せたあたしの左足がそのしなやかな黒猫の体躯へ向けて何一つ躊躇なく踏み出されていくのを慌てて飛びすさり避ける気配だけが薄闇の中を漂ってくる。
「……なに」
「く、唇を全く動かさない熟練の技を以てしてさらには何故か声が/遅れて/聴こえるのはニャぜなのでしょう……わわわわ私ですにゃんよ、超絶女神ことネコルニ……うおっあぶぶ」
あくまで歩様に不自然さは滲ませないように、それでいて的確に足元にまとわりついてくる小動物の気配と思考を先取りしてみて、踏み下ろす位置とタイミングを修正していく。逃げ惑う気配が一歩ごとに漂ってくるけど。
「……だからなに」
「ほほほほらアレですにゃんよ、チュートリアリックなお得情報を逐一レクチャーしてくる愛くるしいマスコット的な……」
猫の姿に擬態しているのは、周りに正体を掴ませないためか、それとも己の趣味嗜好なのかそれともその両方なのか、それだけは把握は出来なかったけど、諸々の感情を差し引いてみて、いまこの状況ではありがたい存在と言えなくもなかった。ので仕方なく踏みつける角度は和らげてあげてみる。と、
「……あまり時間が無いのでひとつだけ、この世界のあらゆる『戦場』は『長方形の枡目』にて区切られる……そしてその間の『移動』は自らに与えられし『棋霊』の属性に依り抑制あるいは促進されてしまうということ……」
もったいぶって言ってくるけど、そして「にゃ」挟まんでも普通に喋れてるけど、「それ」は神である貴女が決めた法則なんでしょうよ。でも多分に「将棋」に根差しているということ、その裏は取れた。そしておそらくあたしの「棋霊」ってのは「白駒」。それの駒としての利きは聞いておきたかったとこだからまあ有用情報ってことで良しとしよう。小声で交わされたのはでも、予想以上に「良い」ものであった。
「白駒」は【左斜め前・前・右斜め前・後ろ】へと、飛車角のように他の駒が無ければどこまでも行けるという、なかなかの強駒なのですにゃんよ……と囁かれ、ふぅん大駒ばりの動きだ、これならそうそう相手に後れを取ることは無さそう……そして何かいつもの駒以外のが出てくるのって何か新鮮でいいかも、とか何となくの取っ掛かりと手ごたえを掴みかけている。
「そうそう、ただひとつ気をつけなければならにゃいのは、利き以外の『枡目』に自分の意思でもそうでなくても入ってしまった場合は何と……」
なるほど、そんな「異世界」ならではのルールってのもあるわけ。いいよ、それも面白い要素ではあるかも、とかあたしにしては前のめりに聞こうとした姿勢を取ったのだけれど。
刹那、だった……
「瞬間、身体が縦に真っ二つに裂けて死にますのニャ!! ぷぷ……これはド派手で笑えるファクターでにゃしょ?」
「からだが縦にまっぷたつ」
いやいやいやいや、全ッ然、笑えねーんだわッ!!
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