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#007:現金だな!(あるいは、アブノーマル/百花/センシビティ)
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ここに来るまでは威勢のいい啖呵を切りまくってしまっていた俺だが、小出しにされてくる情報の逐一が、己に利すること毛ほどもないことを実感していくに従い、やめときゃ良かった感が顔面の毛穴からにじみ出てくるかのようなのだが。吹きすさぶ風はあくまで爽快に俺の身体を巻き包むものの、かえってそれが薄らよそよそしい気もして真顔が常態になりつつあるが。いやいや気を取り直せ。
「俺の目的はその、『邪神』を倒すことなのか? この牧歌的な世界でのんびり気ままで、前に生きていた世界のどうってことのない知識がすげえ着目されてバンバン富が転がり込んでくるっつうようなてめえ本位のまったりスローライフを味わうって手もあるんじゃ」「いいえ。残された時間はそれほどありません」
食い気味も食い気味で、俺のはかなき提案は封殺された。
「……クズ女神の魔の手は、もはやこの世界の半分を蝕み覆い尽くさんばかりに広がっているのですから……ッ!!」
喋ってるうちに昂ってきたのか、その小型猫然とした体の周りから、湯気のような水色の氣のようなものが立ち昇ってきたのだが。こええよ。
……ええと、ネコル様のお力でちょちょいとそいつを殺っつけるてのはいかがなもんですかねい? と、相変わらず敬語のままならない俺は、そんな似非江戸前的な言葉でへりくだってみせるものの、
「……ダメ……なのです……『ルールを構築する』という一点において、彼女に干渉することは、例え『最強神様』であらせられようと、不可能なのです。クズミィ神もそれを深く理解している。その上で、一見、公平に見えて、その実、自分ら側が圧倒的有利になるように仕組まれた『ルール』を振りかざして、人間や怪物たちを掌握してきているのです……」
そこで一息つくと、ネコルは神妙な声で続けていく。憂いを秘めた猫顔。
「例えば私。『ルール』によって、この世界では、陽が射している間は、ネコの姿にならなければいけないし、私の超絶全能力は、クズミィ神に対しては行使することが出来なかったりするんです……その『ルール』を打ち破るには、また別の、それよりも強い『ルール』でかき消さなけばいけなかったり、でもそれはほぼほぼ不可能であったりと……もう、どうしようもないところまで来ているのです……」
その声はまた萎んでしまう。しょうがねえなあ。
「おいおい、だからこそ俺を呼んだんだろ? 何が出来るかは未ださっぱりわからねえけどよぉ、『最適な人材』っつってたよな? やれることがあるなら、俺は最大限お前さんの力になるぜ。現世、いや前世じゃあ、かかずりあう奴、やつ、皆に疎まれてきた俺だがよう、それだけに今は、この『今』は!! 吹っ切れたいとも思ってんだぜ……どうせ死んだ身でもあるしな。何でも言ってくれ。『死ね』と言われたら喜んで死ぬぜ」
ケレンミー♪ との、またしても意味わからねえ効果音みたいなのが脳内で響くが。と、
「べ、別にアンタだからってワケでもないんだからねッ!! それにクズミィを倒せずにこの『世界』が全部『ルール』に乗っ取られたら、どの道アンタは身体が真っ二つに裂けて死ぬんだからッ!!」
あっるぇ~、猫が何かピーキーな属性を露呈してきとるぅぅぅ……そしてまたしても後付けでのっぴきならない条件が付け加えられてきているのだ↑が→。
刹那、だった……
そんな、白目になりそうなシチュエーションの中、それを薙ぎ払うかのような男の声が響き渡ったのであった……
「はっはっは。随分と迂闊ですなぁ、ネコル様。『他世界』の死体漁りのようなことをしていたと思ったら、やれやれ『異世界転生』を臆面も無くやってくるとは流石に予想できませんでしたよ……まあ、どの道、アナタの行動は筒抜け。よってこの私が偵察と、出来うるならば『殲滅』を言い付かっておりますゆえ。いま、この場で、そこの野卑たる男と共に……潰させていただきますよ?」
いつの間に現れた? 「慇懃無礼」という文字を、その優男風の顔面に大書したかのような佇まい。光をまったく反射しない漆黒の、マントのようなローブのような物をそのひょろ長い体にまとっている。透き通るような「水色」のうっとおしい長髪は、確かに浮世離れしてはいるものの。
「……」
思わず殴りたくなるような人材だ。おそらくは敵、おそらくは邪神の使い、であろうが、まあそれはどうでもいい。味方であろうともぶん殴りたい感じだからなあ……「ルール」云々はまだ気になるところではあるが、ことタイマンで後れを取るわけにはいかねえ。
急速にイキれたガン垂れモードに移行した俺の横から、ヒギィ、相手の言う通りの「野卑」さが、全・細胞からにじみ垂れまくっているよ怖いよぅ……とのネコルの震え声が聞こえてくるものの。
任せろ。さっき言った「最大限、力になる」っつう言葉は……嘘じゃあねえから。
「俺の目的はその、『邪神』を倒すことなのか? この牧歌的な世界でのんびり気ままで、前に生きていた世界のどうってことのない知識がすげえ着目されてバンバン富が転がり込んでくるっつうようなてめえ本位のまったりスローライフを味わうって手もあるんじゃ」「いいえ。残された時間はそれほどありません」
食い気味も食い気味で、俺のはかなき提案は封殺された。
「……クズ女神の魔の手は、もはやこの世界の半分を蝕み覆い尽くさんばかりに広がっているのですから……ッ!!」
喋ってるうちに昂ってきたのか、その小型猫然とした体の周りから、湯気のような水色の氣のようなものが立ち昇ってきたのだが。こええよ。
……ええと、ネコル様のお力でちょちょいとそいつを殺っつけるてのはいかがなもんですかねい? と、相変わらず敬語のままならない俺は、そんな似非江戸前的な言葉でへりくだってみせるものの、
「……ダメ……なのです……『ルールを構築する』という一点において、彼女に干渉することは、例え『最強神様』であらせられようと、不可能なのです。クズミィ神もそれを深く理解している。その上で、一見、公平に見えて、その実、自分ら側が圧倒的有利になるように仕組まれた『ルール』を振りかざして、人間や怪物たちを掌握してきているのです……」
そこで一息つくと、ネコルは神妙な声で続けていく。憂いを秘めた猫顔。
「例えば私。『ルール』によって、この世界では、陽が射している間は、ネコの姿にならなければいけないし、私の超絶全能力は、クズミィ神に対しては行使することが出来なかったりするんです……その『ルール』を打ち破るには、また別の、それよりも強い『ルール』でかき消さなけばいけなかったり、でもそれはほぼほぼ不可能であったりと……もう、どうしようもないところまで来ているのです……」
その声はまた萎んでしまう。しょうがねえなあ。
「おいおい、だからこそ俺を呼んだんだろ? 何が出来るかは未ださっぱりわからねえけどよぉ、『最適な人材』っつってたよな? やれることがあるなら、俺は最大限お前さんの力になるぜ。現世、いや前世じゃあ、かかずりあう奴、やつ、皆に疎まれてきた俺だがよう、それだけに今は、この『今』は!! 吹っ切れたいとも思ってんだぜ……どうせ死んだ身でもあるしな。何でも言ってくれ。『死ね』と言われたら喜んで死ぬぜ」
ケレンミー♪ との、またしても意味わからねえ効果音みたいなのが脳内で響くが。と、
「べ、別にアンタだからってワケでもないんだからねッ!! それにクズミィを倒せずにこの『世界』が全部『ルール』に乗っ取られたら、どの道アンタは身体が真っ二つに裂けて死ぬんだからッ!!」
あっるぇ~、猫が何かピーキーな属性を露呈してきとるぅぅぅ……そしてまたしても後付けでのっぴきならない条件が付け加えられてきているのだ↑が→。
刹那、だった……
そんな、白目になりそうなシチュエーションの中、それを薙ぎ払うかのような男の声が響き渡ったのであった……
「はっはっは。随分と迂闊ですなぁ、ネコル様。『他世界』の死体漁りのようなことをしていたと思ったら、やれやれ『異世界転生』を臆面も無くやってくるとは流石に予想できませんでしたよ……まあ、どの道、アナタの行動は筒抜け。よってこの私が偵察と、出来うるならば『殲滅』を言い付かっておりますゆえ。いま、この場で、そこの野卑たる男と共に……潰させていただきますよ?」
いつの間に現れた? 「慇懃無礼」という文字を、その優男風の顔面に大書したかのような佇まい。光をまったく反射しない漆黒の、マントのようなローブのような物をそのひょろ長い体にまとっている。透き通るような「水色」のうっとおしい長髪は、確かに浮世離れしてはいるものの。
「……」
思わず殴りたくなるような人材だ。おそらくは敵、おそらくは邪神の使い、であろうが、まあそれはどうでもいい。味方であろうともぶん殴りたい感じだからなあ……「ルール」云々はまだ気になるところではあるが、ことタイマンで後れを取るわけにはいかねえ。
急速にイキれたガン垂れモードに移行した俺の横から、ヒギィ、相手の言う通りの「野卑」さが、全・細胞からにじみ垂れまくっているよ怖いよぅ……とのネコルの震え声が聞こえてくるものの。
任せろ。さっき言った「最大限、力になる」っつう言葉は……嘘じゃあねえから。
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