Current Me!!~転生したら異世界だった件

gaction9969

文字の大きさ
8 / 46

#008:存外だな!(あるいは、混沌辻=カードファイト/レリゴー)

しおりを挟む
「キミが……異世界から転生してきたという……『在来テンプレ』なる者か。フフフ……ネコル様、随分と渋い男前を連れてきたようだが、まったくもって『力』は感じさせませぬなあ……これはわざわざこの『ル:ズユド=イメタァ』が出張るほどのこともありませんでしたね……」

 テンプレなる物言いはお前だろ、とのつっこみは取りあえず保留し、俺はその野郎の出方を窺うに留めた。ご丁寧に自己紹介まで挟んでくれてきたが、発音が難しそうなので以下「長髪ロンゲ」と呼称する。

 それよりも「渋い男前」だとぅッ? この、泣く子もえずくと称された、イキり時には「動の快楽殺人鬼」、平常時には「静のシリアルキラー」とまで言われるほどの、この負の顔力ガンリキを持つ俺の顔が……? 

 ……なるほど。チーレムの扉が閉ざされていたというわけではなかったわけか……

 つい「動」の顔つきになってしまって、くつくつと自然と笑い声が喉奥からこみ上げてしまうサマを、えええ……みたいな腐った溜息を放ちつつ横目で見てくるネコル。え何で俺には諸々厳しいの? いや落ち着け。そうゆう展開を期待するにもまずは目の前のこいつをどうにかしなくちゃあならねえよな……それよりもなぜ「日本語」が通じるんだよ、とのもっともな疑問をその猫顔にぶつけてみるが、

 ―「日本語ジャポネジア」こそ……すべての言語の最上位に君臨する……柔軟かつ包容力を持つ最強女神オボス=コボゴホポスのごたる言語ですからコポォ……異世界のスタンダードは『大正義★日本語』、これ豆なのですわぁ……

 陶酔、酩酊、あと何かに彩られたかのような何とも表現できない顔貌カオをするので、お、おう……とだけ流すに留めた。いや、さっきから留まることしか出来てねえ……

 と、思わず視界を真正面へと戻すと、何か、待っててくれた感じの、目の前の長髪と真顔の目が合った。軽く頷き合ったのは錯覚かも知れねえが、とにかく進行を、との利害ががっちり嵌まった感覚があり、次の瞬間、また高笑いと共に展開が……始まった……

「私の『手札カードデッキ』には『光白こうはくマゼンタ』も『Rankランクエイト』の物も含まれている……あなたがたに、何もさせず封殺レジメンタスすることも可能というわけだ……」

 待てまてまてまて。一文節に1ミリも理解の及ばない単語をこれでもかと無駄なく敷き詰めてくるのはやめろぉッ!! 日本語が公用語スタンダードと言ったわりには、全ッ然、その話す言葉の意味が鼓膜以降に伝導してこないのだ↑が→。

「くっ……銀閣ギンカクさん、これはいきなりの強敵ですよ……そんなレア手札カードを何枚も所持しているなんて……ッ!!」

 ネコルが猫顔を強張らせながら言うが、割とその立ち位置はノリノリの方角だ。俺は完全に置いてけぼりかよ。

「いや……ていうか、これ何? 『カードバトル』なの?」

 思わずそんな拍子も感情も抜け出た声でそう聞いてしまったのだが。

 ……それがいけなかった。

 ―そそそそうですぞこれこそがこの世界の理ッ!! 勝者が自らの持つ「ルール」を相手に承認させうることのできる、魂の殴り合いなのですぞコポぉぉッ!!

 そんな、多分に興奮閾値振り切れ感漂う食い気味の声で鼻息荒くそう告げられた。うん……説明のようで説明になってねえ。英語を広東語に翻訳されたかのようだが。

 だがその沈黙がさらなる説明の「待ち」と勘違いされてしまったようで、畳みかけるような「説明」がネコルの猫口から紡ぎ出されてきてしまう。

「勝負は『三番勝負』にて先に『二番』取った者の勝ちとなる……ッ!! そのまず初っ端、『精神属性スピリチュアル・アトリビュート』は3種類。『天』『地』『海』。いわゆる『3すくみ』の関係になっていて、その出し手により、問答無用に決着がつく。これが勝負の一つ目」

【ルール1】
 「天」は「地」に勝ち、「地」は「海」に勝ち、「海」は「天」に勝つ。

「二つ目、『心色彩ハートカラー』はコモン6種類。『光の三原色』に属する『光レッド(r)』『光ブルー(b)』『光グリーン(g)』、そして『闇の三原色』に属する『闇マゼンタ(m)』『闇シアン(c)』『闇イエロー(y)』。属が同じであれば、これらも『3すくみ』となる」

【ルール2】
 「光レッド」は「光ブルー」に勝ち、「光ブルー」は「光グリーン」に勝ち、「光グリーン」は「光レッド」に勝つ。
 同じく「闇マゼンタ」は「闇シアン」に勝ち、「闇シアン」は「闇イエロー」に勝ち、「闇イエロー」は「闇マゼンタ」に勝つ。

【ルール3】
 「光レッド」は、「闇マゼンタ」および「闇イエロー」にも勝つ。「闇シアン」とは引き分けるものの、「闇黒レッド(R)」へと「スペクトルチェンジ」する。
 「光ブルー」は、「闇シアン」および「闇マゼンタ」にも勝つ。「闇イエロー」とは引き分けるものの、「闇黒ブルー(B)」へと「スペクトルチェンジ」する
 「光グリーン」は、「闇イエロー」および「闇シアン」にも勝つ。「闇マゼンタ」とは引き分けるものの、「闇黒グリーン(G)」へと「スペクトルチェンジ」する

【ルール4】
 レア6種も基本は3すくみ。
 「闇黒レッド」は「闇黒ブルー」に勝ち、「闇黒ブルー」は「闇黒グリーン」に勝ち、「闇黒グリーン」は「闇黒レッド」に勝つ。
 「光白マゼンタ(M)」は「光白シアン(C)」に勝ち、「光白シアン」は「光白イエロー(Y)」に勝ち、「光白イエロー」は「光白マゼンタ」に勝つ。

【ルール5】
 レア6種は「闇黒」が「光白」を凌駕する。
 「闇黒レッド」は、「光白マゼンタ」および「光白イエロー」にも勝つ。「光白シアン」とは引き分けた上、「光ブルー」へと「スペクトルチェンジ」してしまう。
 「闇黒ブルー」は、「光白シアン」および「光白マゼンタ」にも勝つ。「光白イエロー」とは引き分けた上、「光グリーン」へと「スペクトルチェンジ」してしまう。
 「闇黒グリーン」は、「光白イエロー」および「光白シアン」にも勝つ。「光白マゼンタ」とは引き分けた上、「光レッド」へと「スペクトルチェンジ」してしまう。

【ルール6】
 双方が「同一」の色だった時は引き分けとなるが、「光」に属する場合は「極光白ホワイト」、「闇」に属する場合は「極闇黒ブラック」へと「レジェンダルシフト」が起こる。
 「レジェンド」は無敵。レアとコモン全てに勝つ。ただし「レジェンド」同士がかち合った際は、引き分けの上、コモンのいずれかにランダムで変化する。

【ルール7】
「『魂数字《ソウルナンバー》』は、1から9まで。単純に数字の大きい方が勝ち。例外で『1』は『9』に勝つ」

 以上ですにゃん♪ と軽く締められたが、ん長ぁぁぁぁぁぁぁぁあああいッ!!

 特に「色」のところが不必要な複雑さな気がしてとめどないのだが。逆にシンプルに過ぎる感も無いが、もっと「属性」とか「数字」を見習えや。

 いや……それより何より、俺には手持ちの「手札」とやらが、びた一枚無い……まさかさっきの福引補助券じみた奴がそれだったりすんのか? と思って再びポケットから引きずり出してみたが、それらはまごうこと無きぺらぺらの補助券だった。いやだとしたらどないすんねん。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

処理中です...