Current Me!!~転生したら異世界だった件

gaction9969

文字の大きさ
17 / 46

#017:珍妙だな!(あるいは、せめぎ合い空虚/鋼鉄のセルコン)

しおりを挟む
 ごわんごわんと、右こめかみを登り、前頭部を締め付けるようにして痛めつけながら、左こめかみを降りていくような血流を感じている……

 やっちまった。呑み過ぎた。

 「普段」の俺ならば、ほどほどの一歩手前くらいで切り上げている。翌日の仕事……長距離の運転には、過ぎた飲酒は少なからず必ず響くからであり。

 だが今回は、日常離れした……もっと言えば浮世離れした周りを包む雰囲気すべてが、俺を痛飲へと誘ったのであろう……

 それプラス、楽しい酒だった。見た目まるきり猫ではあったものの、飲みながらの対話は取りとめも無く、自分が何喋って何に笑ったのかも覚えていないほどだったものの。

 ついつい高揚した気分で盃をあおりあおって、後先考えずにただただ流し込んじまった、その結果がコレだ。アルコールは尋常じゃなく分解早いんだが、その後のアルデヒドを分解する機構がな……うまく働かないっつう難儀な体質だったことを、この「世界」に来て久しぶりに思い出しちまった。ぐえ、さながら頭に輪っかを嵌められた孫悟空の気分だぜ……

「……」

 とりあえず水でも、と、仰向け状態で寝転がっていた自分の状態を痛む頭でそろりそろりと理解すると共に、泥の中に埋められてるんじゃねえかくらいに重力がへばりついてくる感覚の身体も同様に静かに動かしていく。

 後頭部に感じるのは、ごわごわはしてたが、布の感触だ。かなり荒くて繊維の編み込まれ方まで頭皮で感じるほどだが、確かに人の手の入った布地……つまりはシーツ、あるいは枕カバー的なもの……ということは、俺はちゃんと宿を取ってそこのベッドか何かに寝ていたと、そういうわけだな。わけだよな? まったく覚えはないが。

そして、重い瞼をうすら開けて見えたのはほとんどが黒い闇であったものの、右手方向にぼんやり暗い瑠璃色の四角が見て取れた。そこからはうわんうわんと反響してくる酔っぱらい達の大声の残滓が、やや湿った空気の流れと共に漏れ入って来ているわけで、おそらくそこは開け放たれた窓なんだろう。諸々鑑みると、今はまだ夜明け前ってとこか。

「時間」というものがこの「異世界」でどうなっているかは分からないが、夕暮れ時に見たあの「太陽」の周りを「この天体」が公転しつつ自転もかましていると仮定して、なおかつネコルが言ってた「地球と似た」……っていう事を鵜呑みにするのなら、多分ここでの「1日」も、「24時間」くらいの体感なのだろう。

うんうん、ますます、諸々異世界ではあるが、元世界の物理は通用しそうで何よりだー、その勢いで上水道も蛇口も整備されてて、ひねったら飲用に足る水が出て来るかも知れねえ……との期待が、喉奥から酸味を帯びた液体と共に込み上げて来た俺は、ひとまず部屋の様子を探ろうと、まずは上体から起こすために、ままならない両腕を突っ張ってみるものの。

刹那、だった……(刹那って意味がよく分からなくなってきた……

左掌が掴んだものは、確かに布地シーツであろうかったのだが、その感触が、何というか、その下にクッションというか、いやそれにしては妙に温かく、弾力に富んだというか、表面に膜のような生硬さを有しているものの、ひと皮その直下には、熱く張りつめてなお揺蕩うというか、とにかく柔らかくそして緩やかな曲線カーブを描く丸い物体が、それが何かを確かめようと性急に触り撫で探り揉み上げる俺の指触覚に、まるで構成細胞ひとつひとつをも侵食するかのように凶悪な反発リパルジョンをしてくるのであった……

いや、いかん。これ以上、己の探求心のおもむくままに行動をしてしまうと、この世界までもが崩壊する可能性がある……そう、それは決して大袈裟な考えじゃあない。この異世界を支配せんとしてくるクズミィ神の上方に位置する「理を司る者」を、さらに上方から司りし者たちから、無慈悲な禁則警告を喰らい、この世界が微塵も残さずに消し去られること……それはあり得ないことではないのだから……

がんがん痛む頭蓋骨と大脳の狭間あたりで、そんな滅裂なことを考えてしまう俺だが、とりあえず左手を引っ込めた方が良さそうだとの結論にはすぐに至った。小指と薬指の股に偶然挟まっていた、周囲の柔らかさとはまた別の、硬さと柔らかさが共存しているかのような、不思議な豆のような感触のものは一体何だろうという好奇心を不断の努力で封じ込めた俺は、いったん落ち着こうと鼻から大きく深く空気を肺に取り入れようと吸い込んだ。

それがいけなかった。

「はっ、はっ、はぶしょぉぉぉぉぉぉォォォォッ!!」

 割と埃っぽい室内だったようで、その嗅ぎ慣れない異国の香辛料めいた刺激が俺の鼻奥を直撃した瞬間に盛大なくしゃみが飛び出てしまったのだが、それは良いとしつつも、その勢いで、左手も勢いよく前方へとスライドしてしまっていた。刹那、小指薬指間から、薬指―中指―人差し指―そして親指の腹を何かが連続的にこすれ弾かれていく感触が……ッ!!

「ふみゃああああああぁぁあああんッ!?」

 そして響き渡る甘い猫声……ッ!! 危険だッ……!! 危険な撃鉄トリガーを「理を司る者」は、反省もせず隙あらば引かせようと手ぐすね引いてやがるな……ッ!! だが世界の崩壊は、この俺が食い止めなくては……ッ!!(ケレソミー↓)

 薄暗い中でも艶めいて見える白い肢体、上体を起こしつつ、シーツを胸元まで引っ張り上げてこちらを驚きの顔で見やって来るのは、……嗚呼そう言えば「『ルール』によって、この世界では、陽が射している間は、ネコの姿にならなければいけない」とか言ってたっけ……でも夜、酒を一緒にかっ喰らってた時は猫の姿だったから、日光さえ浴びてなけりゃあ割と自分の意思で「人―猫」の「変化」は自由なのか……とか、そっち方面のどうでもいいことに意識を振っていないと、理性を保てそうもなかった。

「す、すまん……」

 なけなしの精神力をもって、俺は断じて不可抗力で同衾していたと言える、動くとギシギシいうベッドの壁際までずり寄り、そのざらとした質感の塗り壁に額を擦りつけて耐えようとするが。

すでに目を固く閉じてはいたものの、残像としてかえってはっきり焼き付いている、こちらを向いた潤んだ瞳と、華奢ながら豊潤であるところは豊潤に過ぎるその姿に大脳は埋め尽くされ、さらに二人が動いたことによって巻き起こった空気の流れが、俺の鼻腔に柑橘のような、甘酸っぱい芳香を運んで来るという……ギリギリの状況下なわけであって……

「……あ、あの……猫なら宿泊代も節約できると思ってそのままいたんですが……この方が楽なんで戻ってたんですよね……ごめんなさい」

 しおらしく言うその声も、もうあかんッ。最大窮地。であればもう、やるべきことは決まってる。この世界は……俺が、守るッ!!(ケレソミー↓)

ギン「撃てッ!! ネコル撃てェッ!! 『一点集中』とかいってた奴を、俺の大脳記憶野目掛け寸分違わずにィッ!!」

ネコ「えええええッ!? さすがに死んじゃいますよぅッ!? そ、それよりも凄いうなされてましたけど大丈夫ですか? あ、でも……うふふ、私が添い寝して髪の毛を指で梳いてあげてたら、子供みたいな笑顔を見せてくれながら落ち着いてすや寝に移行しましたけどね? ふふ、前髪トサカ降ろすと、銀閣さんって結構少年っぽい感じになってそれはそれでかわいいっていうか」

ギン「ん喋んじゃねえぇぇぇぇっぇえええッ!! 崩壊していいのか? お前の大切な世界なんだろうがよぉぉぉぉぉッ!?」

ネコ「おおお落ち着いて!? 『崩壊』ってなに!! クズ女神ミィしんの魔の手がいま正にここにッ!?」

ギン「ワケは今は聞くなッ、詳細もじっくりとは考えずッ、だが俺を信じろッ!! はやく……ッ、はやく俺の理性の残っている内に、俺の内側にいる凶悪な輩を……焼き尽くすんだよぉッ!!」(ケレソミー↓)

 もう駄目だ。いまだに躊躇している気配の美女ネコルの姿をなるべく見ないようにしながら薄目で何とか辺りを付けると、思い切って両腕を限界まで伸ばして、そのほっそりとした首をがしりと掴む。

「オラァ撃てぇッ、はよ撃てぇッ!! 撃たんかいぃぃぃぃぃぃいいいッ!!」

 ええ……これってその手のヘキじゃないですよね……いつも思うんですけど、本気でオトそうと締め付けてくるのって何ッ!? と、ようやく平常運転に戻ってきたらしきネコルの呻き声と共に。

「えええええもぉぉぉぉ、『全能ォォ、クラゥル=ミッサァィル』ッ!!」

 ……ミッサァィル、ミッサァィ……との流暢な余韻を残しながら、両の猫耳から限りなく横に近い斜め方向に一発づつ射出された青いエネルギーの塊が、俺の両こめかみを自動追尾ロックオンしながら接触したかと思った瞬間、激しい両側からの青い爆発に、俺の意識ははかなく消し飛ばさ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!

DAI
ファンタジー
【第一部完結!】 99回のさよならを越えた、究極の『ただいま』 99回転生した最強エルフは、のんびり暮らしたいだけなのに――なぜか家族が増えていく。 99回も転生したエルフの魔法使いフィーネは、 もう世界を救うことにも、英雄になることにも飽きていた。 今世の望みはただひとつ。 ――森の奥の丸太小屋で、静かにのんびり暮らすこと。 しかしその願いは、 **前世が日本人の少女・リリィ(12歳)**を拾ったことで、あっさり崩れ去る。 女神の力を秘めた転生少女、 水竜の神・ハク、 精霊神アイリス、 訳ありの戦士たち、 さらには―― 猫だと思って連れ帰ったら王女だった少女まで加わり、 丸太小屋はいつの間にか“大所帯”に!? 一方その裏で、 魔神教は「女神の魂」と「特別な血」を狙い、 世界を揺るがす陰謀を進めていた。 のんびり暮らしたいだけなのに、 なぜか神々と魔王と魔神教に囲まれていくエルフ。 「……面倒くさい」 そう呟きながらも、 大切な家族を守るためなら―― 99回分の経験と最強の魔法で、容赦はしない。 これは、 最強だけど戦いたくないエルフと、 転生1回目の少女、 そして増え続ける“家族”が紡ぐ、 癒しと激闘の異世界スローライフファンタジー。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...