格×闘×王×コン×シ×デン×ト

gaction9969

文字の大きさ
9 / 16

#09:漫然に(準決勝)

しおりを挟む

 ―ああっとぉー、重量級同士のまことに!! 迫力のある一番となりましたこの準決勝っ!! 新星ガンフとリング中央でがっぷり組み合うのは、カシュウ=ドォドォだぁー!! さすが大農場主の息子、立派な体躯は極東のオオハシよりも一回りも大きく見えますっ!! ガンフにとっては自分より大きい相手との初対戦、どう出る? ……ああーっ!! カシュウの方から仕掛けた!! ガンフをロープの方へと投げ飛ばしーっ、自分もロープへと飛んで!! 反動で勢いをつけて、その逞しい腕を水平に保ったまま、ガンフに食らわせるー……っとやはり読んでいたぞガンフっ!! その腕の下をするりとかいくぐり、再びロープへと体を預けたーっ!! 両者再びロープに弾かれっ!! リング中央で交錯するー、っと何だ!? ガンフ、相手の頭を腋に抱え込んでっ!! 逆さまに高々と抱え上げたぁーっ何という力っ!! そのまま勢い良く後ろへ倒れこみっ!! カシュウの巨躯をキャンバスに叩きつけたぁー!! 決まったか? いやこれは決まったぁー!! ガンフ、いよいよ決勝へと駒を進めました………

 マスクの洗浄と補修は、とある業者に頼むことと相成ったらしい。とりあえずガンフ襲名云々は先送りとなったわけで。

「……お前さんに宿題を出しとく」

 ようやく悪臭から開放されて一息つけた(でもまだ鼻の中がむずむずする)後、オオハシさんはまた箪笥から何やら色褪せたノートのような冊子を取り出して僕の前に置いた。見てみろと促されたので、ごわごわした質感のその大判を恐る恐る開いてみる。

「……」

 新聞記事の切り抜きがたくさん貼ってあった。スクラップブックって奴だ。活字は……何だ? 英語っぽくない、いやアルファベットじゃない、これ。

「当時……ガンフが出た年のケチュラ関連のだ。大会は祭りが行われる9日間、毎日試合を組んでいて、まあ大盛り上がりだった。現地の新聞もテレビもこぞってそれを取り上げ、一大イベント……国民的行事になったっつーわけよ」

 オオハシさんが僕の正面でどっこいせ、と胡座をかきながら言う。

「そんなにでしたか……それほどまでとは正直思っていませんでしたけど」

 ぱりぱりと糊の剥がれる音がするので、僕は慎重にページを捲っていく。決して良くはない紙質が、さらに黄ばんで波打っているので見づらい事この上無いが、粗い白黒の写真には確かに、対戦相手と組み合って今まさに技を仕掛けようとしている、印刷では白っぽくなったマスクに顔を覆われた男の姿が見てとれた。意外にでっぷりとしたシルエットで僕に似ていなくもない。今のオオハシさんは少し腹周りが出ているだけで、そこまでのガタイをしているわけでも無いので、僕は少し驚く。

「30年前は、お前さんみたいな、いい身体つきをしてたんだがな。俺もトシだ。食ったところで肉にはならねえ」

 そう言いますが、身のこなしとか軽やかで、とても若々しいと感じましたが。

「……宿題っていうのは」

「翻訳だ。その記事はドチュルマの言語で書いてあるわけだが、まあ難解でな。読めなかった。というか無いんだ辞書とかその辺のものが。30年ほったらかしにしておいたが、最近じゃネットで希少言語の翻訳が出来るっていうじゃねえか。俺はその辺りからっきしなんで、お前さんにそれを訳してもらいたいわけよ。それが宿題」

 あるかなー、ドチュルマ語翻訳。そもそもこの文字をどう打ち込んだらいいものか判らないけど。

「まあ、ちょこちょこやっといてくれや。現地に飛ぶためのカネも工面しなきゃならねえから、あと2ヶ月は短期バイトだ。プラス実戦も兼ねたカネ回収もしなくちゃあならねえしな」

 ん? どういうことだろう。「実戦」? 「カネ回収」?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...