高嶺の花と紅蓮の子

西園寺司

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リュードの心労

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「戻ったぞ、エミリオ。」


リュードが駐屯所に戻って執務室のドアを開けると一目散にエミリオが駆け寄ってきた。


「わあーー!!隊長おかえりなさい!会議大丈夫でしたか…?」

「ああ、まあ。ルペルと団長が庇ってくれてな。宰相殿もご理解のある方だったのが幸いした。」

「それは良かったです。あ、警備隊から回してもらった騎士達ってどうなるんですか?」

「警備隊に戻ってもらうことになった。我々も警備を一旦通常体制に戻す。」

「承知しました!あ、じゃあそのこと伝えてきますね。ついでに戻る騎士達の準備手伝ってきます!」

「ああ。ありがとう、エミリオ。」

「はーい!じゃあ行ってきます!」


そう言ってエミリオはバタバタと執務室を出て行ってしまった。


「メンツを組み直すか。」


いつもの状態に戻していいとはいえ、油断はならない。そう考えたリュードは一人で机に向き合い始めた。




「隊長戻りました!ってあれ?隊長???」


エミリオが元気よく執務室に戻ってきたが、執務室は静まり返っている。


「隊長…?」


誰もいない時は鍵を掛けてあるはずである。
リュードが鍵をかけ忘れることなど絶対になかった。
エミリオがもしやと思いながら、リュードの席までそろりと近づいてく。


「やっぱり。そりゃあお疲れですよね、隊長。」


リュードは珍しく机に突っ伏して寝落ちていた。
肉体的な疲れにならどこまでも強いのだろうが、ここ最近の心労は並大抵のものではなかった。


「というか、隊長が寝てるとこ初めて見たかも。」


エミリオは少し心を和ませながら、自分の上着を掛けようとリュードに近づいた。


コツッ。


エミリオは気の緩みから少しだけ、ほんの少しだけ足音を立ててしまった。
その瞬間ガバッと起き上がり辺りを見渡すリュード。


「すまない、エミリオ。寝てしまっていた。」

「いえ、いいんです!わああ、ごめんなさい!隊長のこと起こしちゃって!」

「いや、起こさせてすまなかった。」

「そういうことじゃありません!」

「???」

「違うんですよー、隊長にはもっと寝てほしいのに……。」

「充分に寝かせてもらっているが。」

「そういうことじゃなくて、休養!そう休養ですよ!休んでください、隊長!」

「休める時に休ませてもらっているぞ。」

「隊長のあれは休んでないです!」

「というか今私が休むわけにはいかないだろう。」

「それはそうですけど!そうなんですけど!もっとこう…えぇと。」


エミリオが上手い言葉が見つからず悩んでいると、バタバタと執務室に駆け込んでくる人があった。


「あ、ちょっと父さん!待って!ダメだって!」

「お前は黙っとれ!リュード隊長さんて人はどの人だい!!!!!」
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