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優しい人
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「あ、雨が弱まってきましたね!」
「………そうですね。」
「その花束、少しお貸しいただけませんか?」
エレーナはリュードの手に握られている花束を指してそう言った。
リュードの手の熱で先ほどよりもずいぶん萎れている。
「ええ、大丈夫ですが…。」
そう言いながらエレーナに花束を手渡した。
「ありがとうございます。」
エレーナはリュードから花束を受け取ると立ち上がって屋根のかかっているギリギリまでのところまで歩いた。
慌ててリュードが追いつくと、エレーナはその場で屈んで花束の紐を解きだした。
「このくらいの雨でしたら、少し晒していたほうがお花達が元気になりますから。余計なお世話でしたら申し訳ございません。」
そう言いながら、花束の紙を下敷きにして花を雨に晒した。
「滅相もございません、ありがとうございます。」
すくっと立ち上がったエレーナがくるりと振り返る。
「これで大丈夫です!ただ、雨に晒しすぎるのもよくありませんので、しばらくしたらまた花束の形に戻してお返ししますね。」
「ありがとうございます。」
「あ、花束を持つときは持ち手ではなく全体を抱えるように持つと手の熱が伝わりづらいので、長時間お持ちになれると思います。あと、花束のお花の中に熱に弱いお花があったのでずが、花束にするときはそれを一番内側になるようにまとめてしまっても大丈夫ですか?」
「え、ええ。大丈夫です。」
エレーナに一気にそう言われても、リュードにはどれがどの花か正直分からない。
「あ、あとこのお花。今は大丈夫なのですが、乾いたところで日が経つと葉っぱが強烈な香りを発するようになるので、葉を取ってしまっても大丈夫ですか?」
「え、ええ。大丈夫です。」
「あ、すみません…。喋り過ぎてしまいました。あの、その、植物が好きで、つい…。」
「大丈夫です、助かります。薬学を修められたとは聞きましたが、植物にまでお詳しいとは。」
「実は植物学も修めたんです。薬学と植物学は紙一重ですから。それにうちの領地は自然豊かなんです。」
エレーナはその花の葉を慣れた手つきで取り始めた。作業している姿は楽しそうである。エレーナは随分植物が好きなようだ。
「ふう。全部取れました!」
リュードが呆気に取られている間にエレーナは作業を終えてしまった。恐るべきスピードである。
しかし、そのせいでエレーナの手が土で汚れてしまった。
「エレーナ様、ありがとうございます。こちらお使いください。」
「あ。自分で持っていますので、大丈夫です!お気遣いありがとうございます。」
リュードがハンカチを差し出すと、エレーナは少し顔を紅くして自分のバスケットにハンカチを探しに行った。
「す、すみません。お恥ずかしいところをお見せいたしました…。」
ハンカチで手を拭きを終わると、少し俯きながらそう言うエレーナ。
恥ずかしいところというのは、土に汚れた手を見せたところだろうか。そうだとしたら貴族というのはむずかしい。
「いえ、エレーナ様にそうさせてしまったのは私ですし、とても助かりました。ありがとうございます。」
「これくらいで宜しければいつでも!それに今、リュード様にお礼できることと言ったらこれくらいしかありませんし…。」
「お礼………?」
エレーナにお礼をされるようなことをした覚えはない。
「宮殿では本を運ぶのを手伝っていただいたり、今日は宮殿まで送っていただいたり…。」
「騎士として当然のことです。お礼をされるようなことなどではございません。」
リュードがそうはっきりと告げるとエレーナはくすりと笑って。
「リュード様は、本当にお優しくて真面目な方なのですね。」
「………?」
自分が優しいだなんてことはよく分からない。リュードにとっては当たり前のことを当たり前にやっているだけである。困っている人がいたら助けるし、夜遅く一人で歩いている人がいれば声をかける。まあ、拒否されなければの話ではあるが。
「………そうですね。」
「その花束、少しお貸しいただけませんか?」
エレーナはリュードの手に握られている花束を指してそう言った。
リュードの手の熱で先ほどよりもずいぶん萎れている。
「ええ、大丈夫ですが…。」
そう言いながらエレーナに花束を手渡した。
「ありがとうございます。」
エレーナはリュードから花束を受け取ると立ち上がって屋根のかかっているギリギリまでのところまで歩いた。
慌ててリュードが追いつくと、エレーナはその場で屈んで花束の紐を解きだした。
「このくらいの雨でしたら、少し晒していたほうがお花達が元気になりますから。余計なお世話でしたら申し訳ございません。」
そう言いながら、花束の紙を下敷きにして花を雨に晒した。
「滅相もございません、ありがとうございます。」
すくっと立ち上がったエレーナがくるりと振り返る。
「これで大丈夫です!ただ、雨に晒しすぎるのもよくありませんので、しばらくしたらまた花束の形に戻してお返ししますね。」
「ありがとうございます。」
「あ、花束を持つときは持ち手ではなく全体を抱えるように持つと手の熱が伝わりづらいので、長時間お持ちになれると思います。あと、花束のお花の中に熱に弱いお花があったのでずが、花束にするときはそれを一番内側になるようにまとめてしまっても大丈夫ですか?」
「え、ええ。大丈夫です。」
エレーナに一気にそう言われても、リュードにはどれがどの花か正直分からない。
「あ、あとこのお花。今は大丈夫なのですが、乾いたところで日が経つと葉っぱが強烈な香りを発するようになるので、葉を取ってしまっても大丈夫ですか?」
「え、ええ。大丈夫です。」
「あ、すみません…。喋り過ぎてしまいました。あの、その、植物が好きで、つい…。」
「大丈夫です、助かります。薬学を修められたとは聞きましたが、植物にまでお詳しいとは。」
「実は植物学も修めたんです。薬学と植物学は紙一重ですから。それにうちの領地は自然豊かなんです。」
エレーナはその花の葉を慣れた手つきで取り始めた。作業している姿は楽しそうである。エレーナは随分植物が好きなようだ。
「ふう。全部取れました!」
リュードが呆気に取られている間にエレーナは作業を終えてしまった。恐るべきスピードである。
しかし、そのせいでエレーナの手が土で汚れてしまった。
「エレーナ様、ありがとうございます。こちらお使いください。」
「あ。自分で持っていますので、大丈夫です!お気遣いありがとうございます。」
リュードがハンカチを差し出すと、エレーナは少し顔を紅くして自分のバスケットにハンカチを探しに行った。
「す、すみません。お恥ずかしいところをお見せいたしました…。」
ハンカチで手を拭きを終わると、少し俯きながらそう言うエレーナ。
恥ずかしいところというのは、土に汚れた手を見せたところだろうか。そうだとしたら貴族というのはむずかしい。
「いえ、エレーナ様にそうさせてしまったのは私ですし、とても助かりました。ありがとうございます。」
「これくらいで宜しければいつでも!それに今、リュード様にお礼できることと言ったらこれくらいしかありませんし…。」
「お礼………?」
エレーナにお礼をされるようなことをした覚えはない。
「宮殿では本を運ぶのを手伝っていただいたり、今日は宮殿まで送っていただいたり…。」
「騎士として当然のことです。お礼をされるようなことなどではございません。」
リュードがそうはっきりと告げるとエレーナはくすりと笑って。
「リュード様は、本当にお優しくて真面目な方なのですね。」
「………?」
自分が優しいだなんてことはよく分からない。リュードにとっては当たり前のことを当たり前にやっているだけである。困っている人がいたら助けるし、夜遅く一人で歩いている人がいれば声をかける。まあ、拒否されなければの話ではあるが。
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