高嶺の花と紅蓮の子

西園寺司

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疑念の騎士団長

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「失礼します。ジェイド騎士団長。」

「早かったな、リュード。」

リュードが宮殿に着いて、騎士団長の部屋に入るとジェイドは慌てて机の上の物を片付けた。

「ご用件は何でしょうか。」

「ああ。先日の山賊たちの事件のことでな。」

来た。

「はい。」

「彼らが使っていた薬の試作品みたいなものができたそうだ。」

ゆっくりと机から立ち上がり、リュードの方に近づいてくる。

「そこでだ。最前線で彼らと刃を交えた君にその被験を頼みたい。」

エレーナの言っていた通りだ。しかし、危険性について詳しく説明する気はないようだ。

「君以外に頼める者はいない。どうだリュード。」

間合いの内側以上に近づいてくる。互いの体が触れそうな位置からリュードの顔を覗き込んできた。
相手は現役の騎士団長。流石に迫力がある。リュードはまっすぐと前を見つめたまま答えた。

「お断りさせていただきたく存じます。」

「ほう、なぜ?」

リュードに断られると思っていなかったのか、少し目を丸くした後で理由を聞き返してきた。

「今の状態で数日でも防衛隊を離れるわけにはまいりません。」

「部下たちが心配か?おかしいな。君の代の防衛隊は優秀だと思っていたんだが。」

「いえ、部下たちは優秀です。戦闘になったときに信頼できる実力は全員持っています。」

「では心配いらないのではないか?」

「それは試作品なのですよね。危険性について説明いただきたいのですが。山賊たちはあの後全員息を引き取ったと風の噂で耳にしましたもので。」

「そうだな。山賊たちは全員死んだな。」

ジェイドは少し考えた後、パッと後ずさって笑みを浮かべた。

「まあ確かに言う通りだな、リュード。今の君を防衛隊から奪うわけにはいかない。それに君の名前は他国でも少し有名だしな。牽制にもなってるだろう。」

「?????」

「用件はそれだけだ。もう帰っていいぞ。」

「…はい。」

「わざわざ呼び出して悪かったな。」

にこやかにリュードを送り出すジェイド。あまりにもあっさりとした対応に拍子抜けである。エレーナからの事前情報でこちらが疑い過ぎていただけなのかもしれないが。
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