あなたととなりになるまでは

ROTOM

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わたし

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 中学の入学式。私は自分の手で勝ち取った制服で、あふれんばかりの期待を、身体の外に出さないように家を出た。たぶん漏れていたと思うが。
 それもそのはず、今日が私にとっての新しいスタートを飾る日なのだ。
 小学校の苦い思い出から。
 
 校門の前には記念撮影用の長蛇の列ができていた。大きく「入学式」と書かれている白い看板が今日はディズニーランドの空飛ぶダンボさながらの人気を誇っていた。
 大体の人はその列を通り過ぎる時に、「〇〇ちゃんいるのかな?」などと知り合いを見つけようとするかもしれないが私はそんなことはしない。知り合いがいないと思ったからこの学校に入学するのだから。
 
 体育館はさすが私立だなあという一言に尽きた。私の小学校の二倍以上は確実にある。そしてもう一つ私が感動したのはトイレだった。
 ドアを開けた瞬間フタが自動で開き、私を迎え入れてくれた。さらにお手洗いも自動、石鹸も送風機もアルコール消毒液までもある。ここまでしてくれるトイレと出会ったのは東京のデパート以来だった。こんなトイレに毎日お手洗いに行けるなんてどんなに素晴らしいことだろう。私は普段取り組み式の便所でも使用しているのかと思わせるくらい過剰に感心していた。
 どんな些細なことでも幸せに感じてしまうほど今日という日を楽しみにしていたから。
 そんなこんなであっという間に式が始まり、クラスが発表され、呼名も行われた。
 とんでもなく元気な返事をした女の子がいたことなど言うまでもないだろう。

 教室に移動し、担任の先生から、これからの予定と簡単な自己紹介がされた。
 珍しいことに同じ学年の先生に同性同名の先生がいるらしく、俺を呼ぶときには苗字でよんでくれと言われた。
 その後生徒の自己紹介が始まり、私は惜しげもなく元気な女の子であることを前面に押して私を紹介した。数時間前のデカイ返事の女として、もう、みんなには認識してもらえていたので第一関門はクリアしていた。
 「」ことを悟らせないということを。

 自己紹介が終わり、集合写真も撮り終えたところで解散となった。出席番号の近い女の子と他愛もない話をしたところで私の新生活の初日が終了した。
 この調子なら私は元気キャラとしてやっていけるだろうという自負もあった。
 しかし、少し不思議に思った人もいるかもしれない。入学式のことをなぜそこまで詳細に覚えているのかということに。
 確かに入学式とは特別な日ではある、それでも正確すぎる。その答えはすぐにわかることになる。
 
 その日の晩、私は明日の準備をしていた。まだ登校2日目なので授業があるわけでもなく、荷物は多くはないのだが、私は前の日には全て準備をしておきたい性格なのだ。
 筆箱を鞄に入れようとしたとき、一本の電話がかかってきた。母が皿洗いを止めて手を拭き、感じの良い高い声で出るとそれは病院からだった。
 入院していた祖父が、たった今息を引き取ったらしい。
 
 
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