星に手が届く

私の願い

 高校生の私には叶わないと知りながら、思いを寄せている人が居る。でも、彼には想いを伝えない。伝えては、いけない。理由は、簡単だ。

｢俺、お前と幼馴染みで良かったわ。｣

この意味は、私には死刑宣告と同類の言葉に聞こえた。叶わぬ恋。それを知りながら願ってしまう。彼の恋を応援できない私は、最低だ。そして、最後に言われた言葉。それは、

｢お前も、好きな奴早く出来るといいなっ。｣

笑顔。眩しかった。輝かしかった。私にはもう存在すらしない、輝き。隣にいれない事を悟った。いや、突き付けられた。私は逃げた。遠くへ。｢さよなら｣も告げずに。
 
 就職活動も、懐かしくなった頃のクリスマスの事。一人悲しく帰途に着いていると、前から懐かしい声がする。忘れない彼の声。前を見ると、彼が居た。私は咄嗟に声を掛けようとしたが辞めた。出来なかった。それは、隣に彼の想いを寄せていた彼女が｢妻｣としてそこい存在したのだから。そして、子供まで。私は、気づかれない様逃げた。何もかも、考えられなくなるまで。家に飛び込んで、玄関に倒れ込んだ。足とかお腹を打ったがどうでもよかった。声を出して泣いた。傷付くことを恐れ逃げたのに。何故。この時。私は、虚しさしか無かった。

｢愛されたかった。｣

私は、その言葉を吐いた。そして、ベランダから夜空に向かって手を伸ばした。次の瞬間には、星に手が届いていた。