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<K03> このチートな称号は……なに?

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††

「女神様。やっぱちゃんと約束は守ってくれましたね。流石女神様です。」
「なんか馬鹿にされてるようにも聞こえるんだけど、とりあえずそれほどでもありません、とお応えします。」

 ほんとちゃんとしてると女神何だよなぁ。
 
 美しさも神々しさも、黙って必要なことだけ話してれば、正にTHE女神って感じ。
 
「お陰で無駄な幼児プレイとか、言語の問題とか文字を習う苦行を逃れられました。」

 私は軽く礼をする。でもこれはホント。
 この点はマジで感謝してるんだ。
 
 だって17歳の記憶持って生まれて、なんで幼児プレイを強要されないといけないわけ?
 
 それに言葉だってまた1から習うとか、苦行そのものじゃない。絶対やだ。
 
 だから女神様にお願いしたの。
 
 一つは私が4歳になるまで前世の記憶を封印してくれと。4歳の誕生日に覚醒させてくれと。
 
 これをお願いしたの。
 
 これは大成功だったわけです。

 そしてもう一つのお願い。
 
 これが重要。
 
 このまま育っても妾腹の第3皇女なんて、ほんと名ばかりの皇族。しかもあの王様ほんとお盛んで王子も3人いるって言うし、私含めて6人の子持ちとか、それも全部腹違い。

 ドスケベ親父の称号でももってんのか、と突っ込みたくなる。

 とはいってもこれって普通らしい。家格の高い貴族とは大概は側室を持ってる。そして子供も沢山持っている。
 子沢山の理由は予備。家督を継ぐ者の予備、さらにその予備。つまり継承者を途切れさせないためらしい。
 
 女は本来不要なのだが、あっちこっちの貴族や王国に政略結婚で送り込むためとか。
 
 昔の日本も欧州も、結局女は使い捨ての道具ってことです。男尊女卑まっしぐらなんですね。
 
 そして男を生ませる為に、また優れた者を造るために側室は多く持つとか。結局女は子供を生むための道具です。
 
 なんだか現実って残酷。
 
 それは置いといてと、第3皇女だとまず跡目争いのレースに参加は無理。となればいずれはどこそこの貴族の正妻か側室が関の山。それも無理矢理的な政略結婚。
 
 碌な人生になるとは思えない。
 
 だったら、前世はバッドラックだった私としては、それを覆すべく、あることを女神様にお願いした。
 
 チートな能力をくれと。
 
 だって折角ファンタジーな世界だって言うなら、楽しまなきゃ損だ。剣と魔法、そして魔獣と魔族とか物騒な奴らが居る世界だ。つまり冒険だ、ファンタジーだ。
 
 まんまゲームの世界じゃん。
 
 ということでもし魔王とかが居るなら、そいつに勝てるか、または対等に戦える能力が欲しいとお願いした。飲んでくれなきゃ転生しないという脅しとともに。
 
「ほんとにいいですか?この称号を与えると、貴女は必然的に戦いに駆り出される人生になりますよ。」
「ゲームみたいなものでしょ?楽しんで戦って、そして死ぬなら死ぬわ。」

 なんか女神様が溜息吐いてる。
 
「この称号は性質上Unknownにできません。鑑定眼を持つものがいれば、直ぐに解ってしまいます。」
「鑑定眼?」
「対象のステータスやスキル、称号を見る事が出来るスキルです。」
「へぇ、そんなのもあるんだ。」

 自分のステータスとかが見えるのは生まれた時から、でも他人のは見えない。見るためにスキルが必要か。不便なんだか便利なんだか。最もゲームとかで、自分のステータスが見えないってのは無いもんね。
 
「いいよっ!」

 あたしは少し考えてから応えた。その応えに女神はまた嘆息すると、パチンと指を鳴らした。
 
「その称号をもったとはいえ、あとは貴女の努力次第です。努力と鍛錬がなければ……」
「うん、わかってる。インター出るために中学から鍛え続けたからね、身体を傷めつけるのは慣れてるから。」

 そうだ、マゾじゃないけど身体を虐めるのは慣れてる。しかも今度は17歳の知恵をもって4歳から鍛えるんだ。
 
 
 
 
 私はゆっくり眼を覚ました。
 
 明るい光が眩しい。誰かが覗き込んで驚いた様子で、誰かを呼んだ。直ぐにわらわらと集まってくる人たち。
 
 見た顔が沢山いる。うん、全部覚えている。
 
 母様や執事や侍女達。私が眼を開けた事で大騒ぎしている。
 
 泣き崩れる者多数。結構大事にされてるんだ、私。

 流石に王様は来なかった。所詮は第3皇女、死のうと生きようとそれほどのことではないのかも。
 
 でも可愛がって貰ってた記憶は有るんだけどなぁ。記憶をたどると、忙しい傍らに会いに来てくれて、すごく優しく接してくれた。
 
 しかし女神様も、なんていうか常識知らずよね。4歳の幼児に雷落とすとか、何考えてるんだか。

 普通は死ぬっての。あ。死んで生き返ったのか。

 お陰であれから私の事って、雷に撃たれても死なない神童だとかいう人まで居るし……困る。
 
 逆に雲一つない晴天で落ちるとか、アレは神の雷槌では無いのかとか、それに耐えた第3皇女は魔族ではないか、なんて奇妙な噂まで出てる。

 なわけ無いってのに~。全て常識知らずの女神様が悪い。

 そんなわけで変に色々と心配する人が居たりして、ベッドの中の私は監視つき状態。常に侍女が傍に居てくれて至れり尽せり。
 
 おトイレも連れてって下さいます。
 
 お風呂もいつも以上に丁寧に。
 
 ほんとすべて女神様のお陰です。ばかやろーーーっ!
 
 で、だ。
 
 約束のものを拝見しましょうか。
 
──ステータス。

 視界の中にステータスパネルが広がる。
 
 アリス=ルイーザ
 【種族】人種
 【年齢】4歳
 【状態】普通
 【Lv】01
 【HP】150
 【MP】150
 【SP】150
 【最大攻撃力】1
 【最大防御力】1
 【最大魔法攻撃力】1
 【最大魔法防御力】1
 【最大回避】1

 スキル
 【剣術】Lv.10
 【回避】Lv.10
 【土術】Lv.10
 【氷術】Lv.10
 【炎術】Lv.10
 【風術】Lv.10
 【雷術】Lv.10
 【超速再生】Lv.1
 【属性耐性】
  【土耐性】Lv.10
  【氷耐性】Lv.10
  【炎耐性】Lv.10
  【風耐性】Lv.10
  【雷耐性】Lv.10
  【闇耐性】Lv.10 
 【状態異常耐性】Lv.10
 
 称号
 【天臨王】
 
 なに…これ?
 ステータスが一般的4歳児に比べておよそ10倍。まあこれはいいとして、スキルが色々増えてる。なんかスキルのレベルも微妙な高さね。
 
 習いたてよりはある程度【剣術】を使えるけど、訓練とか鍛錬ってのはこれを鍛えて上げろってことかな。
 
 【超速再生】っていうのもなんか名前からして面白そう。怪我しても一瞬で治してくれるのかな。これは便利かな~。訓練が捗りそうね。
 
 でも最後のこれ、称号の【天臨王】ってなんだろ。
 
 称号【天臨王】天より降臨せし者。天の理地の理を知り森羅万象を知る者。付与されるスキル:【剣術】【回避】【土術】【氷術】【炎術】【風術】【雷術】【超速再生】【属性耐性(全)】ext【覚醒】

 なにこの説明。この説明だけみると、森羅万象を操る神みたいな存在ってこと?私が頼んだのは魔王に匹敵する力なのに……
 
 へ?
 
 魔王と匹敵って……
 
 まさかつまりこれってあれ?
 
 魔王ってそんな強い存在なの?
 
 あわよくば勇者になって魔王を倒して~なんて思ってたけど、それどころじゃないっぽい。
 
 ちょっとビビった。
 
 でも、なんか嫌な予感しかしない~。
 
 女神様……今度じっくり話してみたいわ。
 
††
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