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1.悪戯メッセージ
①
2013年、春。
「……ねむ」
いつにも増して落ち着きの無い教室の中。あくびを噛み殺す。
「なあ、森也しんや。あの茶色っぽいの、染めてると思う?」
「いや、地毛やろ」
斜め前の席から、ひそませ切れていない声が届けられる。それを適当にあしらって、教壇の前に立つ人物に目をやった。
「はじめまして」
うちのクラスに転校生らしい。
一番後ろの席で肘をつきながら、俺はため息を漏らす。
環境の変化は好きじゃなかった。
彼の吊り上がった細い眼を睨む。東京から来たらしい。
転校生だというのに、それらしい緊張も見せず堂々としている。
その態度が不自然に見えてしまうから、不安を誤魔化すように窓の外へ目線を移した。
相変わらずの田園風景。緩い風が、蓮華畑の花を撫でた。
「これからよろしくお願いします」
――わたしたちの噂学校 掲示板サイト
「噂の人殺しカメレオンが、転校した件@鷹谷」
「コメント」
「ああ、Kを自殺させた奴?」
「そうそう」
「死んでないだろ?」
「未遂よ。とっくに復帰してる」
「3階から飛び降りたんだよね? めっちゃ騒がれてた」
「で、どこ行ったの? 転校先は?」
「亀之湖中学校ってところらしい。兵庫の田舎」
「次の被害が出るな、気の毒すぎるわ」
…………
――この記事にコメントする
**
休み時間。後ろの席にはクラスメイトが集まった。
俺と転校生を入れても総勢7名。田舎の過疎化は深刻だ。
「前の学校私立やったん? 金持ちや」
「そんなんじゃないよ」
質問攻めに遭う新参者を、とりあえず気の毒に思う。
「ちょっとー。さっきから圭輔、佐山くんに話しかけすぎ。うちも喋りたいのに」
「はあ? じゃあアイも喋ったらええやん。なんやねん」
こういう争いの種を。
「お前ら、どっちも一方的やねん。なあ、佐山。そっちも聞きたいこととかあるやろ? 転校してきたばっかりやねんから」
静かに拾って、平穏を保つのは俺の役割だった。
「そうですね。質問、いいですか?」
ーー「ですね」?
ーー「ですか」?
控えめに頷く転校生を前に、俺の笑顔は固まった。周りのみんなも、不思議そうに彼を見る。
「……なんで俺にだけ敬語?」
佐山は、きょとんと俺の顔を眺め、「ああ」と納得したらしい声を出した。
「なんか目上っぽい感じがして」
「……そう?」
「老けてるんちゃう」
「は?」
ニヤニヤする圭輔を睨む。
木南町立 亀之湖中学校。
ここは生徒数が50人にも満たない、ごくごく小さな学校だ。
教師は3人しかいないので、彼らは何科目も掛け持ちすることになっている。
俺たちは、そんな学校の3年F組に在籍していた。
通常サイズのクラス教室に、机がわずか7台。縦に2列、横に3列、と1席。昨日まで長方形を成していたそれは、歪に変形された。
「聞きたいことと言えば、やっぱりこの奇妙なクラス名ですかね」
「ああ、Fね」
当然の疑問だと俺は頷く。
しかし転校生からの質問に誰も答えようとしないので、隣に立っていた圭輔の顔をうかがった。
「説明してやれよ?」
「えっ。俺?」
びくりと仰け反る、赤茶色の短髪男。長身の彼を見上げながら、俺は眉根を寄せた。
「誰でもええけど。嫌なん?」
「ちゃうけどさ、Fは、ほら。ファンタジックのFや」
「はあ? だっさ。そんなださかった?」
「森也が説明しろ言うたんやんか」
「言うたけど。そんなんやった? 俺もっと違う単語やった気すんねんけど」
首を傾げる俺に向かって、圭輔は「気のせいや、ださくて悪かったな」と文句を連ねる。
うちの学年は人数が極端に少ないため、1クラスしかない。だから、クラス名など本来存在しないのだ。
Fは、小学生の時に圭輔たちが勝手に決めた非公式の呼び名である。
「三年ファンタジック組かあー。へえー」
露骨だな。棒読みの佐山に呆れながら、俺はこいつの顔って最近はやりの爬虫類顔だなあ、と関係のないことをぼんやりと考えていた。
数学の授業中。
ノートにシャーペンを走らせながら、俺は後ろに座る転校生を気にしていた。
今は物珍しいから人気者扱いだが、ほとぼりが冷めたとき彼はどんなポジションに収まるのだろうか。
「梶、お前は途中式書けって何回言わせるねん」
「おお、都留。いつの間に背後に」
頭上から降って来た声に驚いて顔を上げると、そこには数学担当かつクラス担任の姿があった。
「お前、聞いたぞ。また遅刻したらしいな。毎日毎日」
「朝弱いねんもん……」
「言い訳になるかあ」
彼が振り上げた巨大な三角定規を慌てて掴む。
「待った待った。ほら、あそこのアホが問題解けんくて困っとうで。行ったらな」
「誰がアホや」
俺の言葉が自分に向けられていると即座に理解したらしい。振り向いた圭輔から抗議の声が上がる。
「こら喧嘩すんな。渋谷しぶたに、どこがわからんねん」
「全部わからんくて話にならん」
自覚しているとは。意外と謙虚な奴だ。
「先生と仲が良いんですね」
いきなり背中に投げかけられた声に驚きながら、振り返る。そこには、つまらなさそうに俺を見る佐山がいた。
与えられた課題はすべて終えたらしい。シャーペンから手を離している。
「ふーん、勉強できるんや……」
「あ、意外です?」
「いや別に。……で、なんか言った?」
「変わったクラスですね。授業中に私語があるとは」
「え」
ぎょっとして佐山を凝視する。こいつ、今までどんな学校に通っていたんだろう。
いよいよ厄介だ。過ごしてきた環境がこうも違うとは。
「俺も馴染んでいかなきゃですね」
……馴染む気はあるのか。少しの安心とともにシャーペンを握りなおしたときだ。
「あーっ」という叫び声が教室に響いた。
「ちょっと、りっちゃんが答え書いとうねんけど」
「なんやて、アイ、ほんまか」
「裏切り者―、うちと圭輔とりっちゃんはアホ三人組やったやんか」
……まあ、確かにこのクラスはうるさすぎかもしれない。都留から殴られるアイと圭輔を眺めながら、苦笑を漏らす。
次の休み時間。話題の中心はもう佐山ではなくなっていた。
圭輔とアイの興味は、学級委員長に勉強を教えてもらったという、りっちゃんこと律希に移ったらしい。
「お前の人気、ほんまに一瞬やったな」
「飽きられるの早いですね」
必死に弁解するりっちゃんに視線を向けながら、佐山は気にして無さそうに笑う。
「圭輔とアイはああいうの好きやからなあ」
いつの間に来たのか、隣にはポニーテールの女子、那子が立っていた。
「ああいうのって? 色恋沙汰?」
佐山の言葉に、那子は細い目を少しだけ見開いた。
「すごいねえ、もう気付いたん? そう、りっちゃんってば、学級委員長の沙穂にお熱なん。あの二人、微笑ましいんよ。両方小さくて小学生みたいやもん」
彼女が笑うと、その長いまつ毛が強調される。
まあ、すごいも何も見たらわかるだろう。真っ赤になって焦るりっちゃんを眺めながら思う。
「ああ、りっちゃんって彼、顔も童顔だよね。最初、本当に小学生かと思った」
言ってる内容は那子と同じなのに、すごく失礼に聞こえるのは何故なのか。
……後になって思う。このとき彼の目に滲んだ鋭さを気付けていたら。教室の空気は変わらないでいてくれていたのかもしれない、と。
「……ねむ」
いつにも増して落ち着きの無い教室の中。あくびを噛み殺す。
「なあ、森也しんや。あの茶色っぽいの、染めてると思う?」
「いや、地毛やろ」
斜め前の席から、ひそませ切れていない声が届けられる。それを適当にあしらって、教壇の前に立つ人物に目をやった。
「はじめまして」
うちのクラスに転校生らしい。
一番後ろの席で肘をつきながら、俺はため息を漏らす。
環境の変化は好きじゃなかった。
彼の吊り上がった細い眼を睨む。東京から来たらしい。
転校生だというのに、それらしい緊張も見せず堂々としている。
その態度が不自然に見えてしまうから、不安を誤魔化すように窓の外へ目線を移した。
相変わらずの田園風景。緩い風が、蓮華畑の花を撫でた。
「これからよろしくお願いします」
――わたしたちの噂学校 掲示板サイト
「噂の人殺しカメレオンが、転校した件@鷹谷」
「コメント」
「ああ、Kを自殺させた奴?」
「そうそう」
「死んでないだろ?」
「未遂よ。とっくに復帰してる」
「3階から飛び降りたんだよね? めっちゃ騒がれてた」
「で、どこ行ったの? 転校先は?」
「亀之湖中学校ってところらしい。兵庫の田舎」
「次の被害が出るな、気の毒すぎるわ」
…………
――この記事にコメントする
**
休み時間。後ろの席にはクラスメイトが集まった。
俺と転校生を入れても総勢7名。田舎の過疎化は深刻だ。
「前の学校私立やったん? 金持ちや」
「そんなんじゃないよ」
質問攻めに遭う新参者を、とりあえず気の毒に思う。
「ちょっとー。さっきから圭輔、佐山くんに話しかけすぎ。うちも喋りたいのに」
「はあ? じゃあアイも喋ったらええやん。なんやねん」
こういう争いの種を。
「お前ら、どっちも一方的やねん。なあ、佐山。そっちも聞きたいこととかあるやろ? 転校してきたばっかりやねんから」
静かに拾って、平穏を保つのは俺の役割だった。
「そうですね。質問、いいですか?」
ーー「ですね」?
ーー「ですか」?
控えめに頷く転校生を前に、俺の笑顔は固まった。周りのみんなも、不思議そうに彼を見る。
「……なんで俺にだけ敬語?」
佐山は、きょとんと俺の顔を眺め、「ああ」と納得したらしい声を出した。
「なんか目上っぽい感じがして」
「……そう?」
「老けてるんちゃう」
「は?」
ニヤニヤする圭輔を睨む。
木南町立 亀之湖中学校。
ここは生徒数が50人にも満たない、ごくごく小さな学校だ。
教師は3人しかいないので、彼らは何科目も掛け持ちすることになっている。
俺たちは、そんな学校の3年F組に在籍していた。
通常サイズのクラス教室に、机がわずか7台。縦に2列、横に3列、と1席。昨日まで長方形を成していたそれは、歪に変形された。
「聞きたいことと言えば、やっぱりこの奇妙なクラス名ですかね」
「ああ、Fね」
当然の疑問だと俺は頷く。
しかし転校生からの質問に誰も答えようとしないので、隣に立っていた圭輔の顔をうかがった。
「説明してやれよ?」
「えっ。俺?」
びくりと仰け反る、赤茶色の短髪男。長身の彼を見上げながら、俺は眉根を寄せた。
「誰でもええけど。嫌なん?」
「ちゃうけどさ、Fは、ほら。ファンタジックのFや」
「はあ? だっさ。そんなださかった?」
「森也が説明しろ言うたんやんか」
「言うたけど。そんなんやった? 俺もっと違う単語やった気すんねんけど」
首を傾げる俺に向かって、圭輔は「気のせいや、ださくて悪かったな」と文句を連ねる。
うちの学年は人数が極端に少ないため、1クラスしかない。だから、クラス名など本来存在しないのだ。
Fは、小学生の時に圭輔たちが勝手に決めた非公式の呼び名である。
「三年ファンタジック組かあー。へえー」
露骨だな。棒読みの佐山に呆れながら、俺はこいつの顔って最近はやりの爬虫類顔だなあ、と関係のないことをぼんやりと考えていた。
数学の授業中。
ノートにシャーペンを走らせながら、俺は後ろに座る転校生を気にしていた。
今は物珍しいから人気者扱いだが、ほとぼりが冷めたとき彼はどんなポジションに収まるのだろうか。
「梶、お前は途中式書けって何回言わせるねん」
「おお、都留。いつの間に背後に」
頭上から降って来た声に驚いて顔を上げると、そこには数学担当かつクラス担任の姿があった。
「お前、聞いたぞ。また遅刻したらしいな。毎日毎日」
「朝弱いねんもん……」
「言い訳になるかあ」
彼が振り上げた巨大な三角定規を慌てて掴む。
「待った待った。ほら、あそこのアホが問題解けんくて困っとうで。行ったらな」
「誰がアホや」
俺の言葉が自分に向けられていると即座に理解したらしい。振り向いた圭輔から抗議の声が上がる。
「こら喧嘩すんな。渋谷しぶたに、どこがわからんねん」
「全部わからんくて話にならん」
自覚しているとは。意外と謙虚な奴だ。
「先生と仲が良いんですね」
いきなり背中に投げかけられた声に驚きながら、振り返る。そこには、つまらなさそうに俺を見る佐山がいた。
与えられた課題はすべて終えたらしい。シャーペンから手を離している。
「ふーん、勉強できるんや……」
「あ、意外です?」
「いや別に。……で、なんか言った?」
「変わったクラスですね。授業中に私語があるとは」
「え」
ぎょっとして佐山を凝視する。こいつ、今までどんな学校に通っていたんだろう。
いよいよ厄介だ。過ごしてきた環境がこうも違うとは。
「俺も馴染んでいかなきゃですね」
……馴染む気はあるのか。少しの安心とともにシャーペンを握りなおしたときだ。
「あーっ」という叫び声が教室に響いた。
「ちょっと、りっちゃんが答え書いとうねんけど」
「なんやて、アイ、ほんまか」
「裏切り者―、うちと圭輔とりっちゃんはアホ三人組やったやんか」
……まあ、確かにこのクラスはうるさすぎかもしれない。都留から殴られるアイと圭輔を眺めながら、苦笑を漏らす。
次の休み時間。話題の中心はもう佐山ではなくなっていた。
圭輔とアイの興味は、学級委員長に勉強を教えてもらったという、りっちゃんこと律希に移ったらしい。
「お前の人気、ほんまに一瞬やったな」
「飽きられるの早いですね」
必死に弁解するりっちゃんに視線を向けながら、佐山は気にして無さそうに笑う。
「圭輔とアイはああいうの好きやからなあ」
いつの間に来たのか、隣にはポニーテールの女子、那子が立っていた。
「ああいうのって? 色恋沙汰?」
佐山の言葉に、那子は細い目を少しだけ見開いた。
「すごいねえ、もう気付いたん? そう、りっちゃんってば、学級委員長の沙穂にお熱なん。あの二人、微笑ましいんよ。両方小さくて小学生みたいやもん」
彼女が笑うと、その長いまつ毛が強調される。
まあ、すごいも何も見たらわかるだろう。真っ赤になって焦るりっちゃんを眺めながら思う。
「ああ、りっちゃんって彼、顔も童顔だよね。最初、本当に小学生かと思った」
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