血染めの龍騎士と悪役名無し三男の少女漫画的転生物語

鮎焼き

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人生は一度きり

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俺が女性向け作品にハマったのは、きっかけは勉強だった。

目立つ事もなく普通のどこにでもいる子供だった。
人並みに女の子が好きなのに、いまだに童貞だ。

周りの人が付き合っているのを黙って見ている事しか出来ない。

女の子と付き合いたいのに告白すると必ず友達としか見られていない。

話しやすい方が恋愛がスムーズに行くと思ったのが間違いだった。

遊び人に見えても遊んだ事なんかないし、そういう女の子から見ても俺は眼中にない。

中学では眼鏡を掛けて、用事ですらクラスメイトの女の子に話しかける事が出来なかった。
勇気を振り絞ろうとしても、いざという時声が出ない。

高校デビューと同時にコンタクトを恐怖と戦いながら入れた。
何事も見た目から変えると別人になった気分になる。

長年愛用していた眼鏡とはおさらばだ。
これから俺は、陽キャの一軍に入ってやる!

心を入れ替えて、いろんな人と話して仲良くなる事が出来た。

ただ誤算だったのは、それ以上にならない事だ。

なにが問題だったのか考えて…経験不足にたどり着いた。
見た目ばかり気にしすぎて、頭から抜けていた。

容姿が普通なら、面白い奴の方に行くよな。

思いついたら早速話術の勉強をする事にした。

まずは身近な人物だよな、少しでも勉強になればいい。

どんな話題で盛り上がるか、インターネットよりリアルだ。

その期待は見事に打ち砕かれる事になった。

彼女がいる友人の話を聞いても、惚気話しかしない。
俺が聞きたい話ではなく、彼女のドジっ子エピソードばかりだ。

遠回しに「普段彼女と何してる?」と聞いた俺が悪かった。

何の参考にもならずに、どうしようかと悩んでいたある日の事。

結局インターネットを頼ろうかと調べていた。
リビングのソファーに座るのは俺と向かい側に2つ下の妹。

テレビが付いていて、お笑い番組をやっているのに誰1人として見ていない。

中学生の妹が読んでいた漫画をまじまじと見た。

それはキラキラしたような絵柄の恋愛漫画だった。
なるほど、恋愛漫画か…確かに参考になるかもしれない。
振る舞いや言葉遣いとか勉強すれば、俺も物語の主人公みたいに彼女が出来るかもしれない!

近付いて見ていたら、妹が睨みつけてきた。
仲は良くも悪くもない普通の兄妹だが、妹は思春期だからな。

「…なに、兄さん気持ち悪いんだけど」

「……ごめん、ごめんついでにそのゲーム貸してくれる?」

妹に蔑むような目を向けられようとも、俺の瞳はキラキラと輝いていた。

最初は貸してくれなくて、何度かお願いすると貸出料を請求された。
しっかりした子に育って、お兄ちゃん嬉しいな。

身だしなみにお金を使ったから、今月の財布はカスカスで漫画を買う金はない。
100円でいいなら、喜んで貸出料を払うよ。

あまりよく見ていなかったが、服装をよく見てみると現代設定ではなさそうだ。
中学生の頃はバトル漫画とか好んでいたから、馴染みはある。

ただ、妹が持つ恋愛漫画のバトルはどうか分からない。
俺が見ていた漫画は恋愛要素はあるが、メインはバトルと友情で恋愛要素は薄かった。

こんな可愛らしい絵柄で、殴り合いの戦いとか想像出来なくて未知なる漫画を読み込んだ。







ーーーーー

人と魔法使いが共存する、とある王国の話。

主人公の少女は悪名高い一族の娘として生まれた。
家が何をしているのか分からぬまま、家の仕事を手伝って顔と同じサイズの木箱を運んでいた。
その時、見回りをしていた騎士とぶつかって派手に転んだ。

レンガの地面に真っ白な粉を派手にぶちまけた。

慌てて拾おうとしたら、騎士の一人が「違法品を所持している、捕まえろ!」と声を張り上げた。
少女はその声に驚いて、捕まえようとする騎士から逃げ出した。

応援を呼ばれて、騎士達が路地裏を駆けて行くのを黙って見ていた。

腕を引かれて、暗がりの中に入っていった。
軽く口を塞がれて、耳から聞こえる吐息と心臓の鼓動だけが響いた。

「やっと会えた」

助けてくれたのは、美しい黒髪の騎士だった。






ーーーーー

なるほど、この漫画はバトル要素があるが恋愛がメインだった。

黒髪の男がいいのかと、自分の茶髪を軽く弄る。

この騎士と少女は幼馴染みだったから、助けたみたいだ。

俺には幼馴染みはいない、居てもこんな再会の仕方は出来ない。
あまり参考にならないのかも、と思いながらも漫画を読み進めるのを止めなかった。

最新刊の5巻まで一気に読み、出来るところは参考にしようと思った。

大学生になり、やっと成果が出来て彼女が出来たと思ったら友人に寝取られて終わった。
可愛いと思ったのに、結局目当ては友達の方だった。

俺ってもしかして、このまま恋愛が出来ないのかな。

誰かの代わりだとか、遊びで付き合う人ではなく俺を真剣に愛してくれる人。

そんな人がいたら、俺は会ってみたいな…こんな俺でも好きになってくれる人が…

漫画の一途に想い合う姿や、キャラクターの愛し愛される姿、どれも俺には無縁な人生だ。

大学卒業間近のある日、そう強く思う事になった。

いつものようにバイトの居酒屋に向かう時、突然視界がぐにゃりと曲がって見えた。

危ない薬なんて飲んでいないのに、と思いながら電柱に手を付いた。
夜遅い住宅街の真ん中だからか、小さく照らす外灯しか外にはなかった。

今は冬だから、冷えちゃっただけかと思って一歩前に出た。

足に力が入らず、そのまま地面に倒れて動けなくなった。
最近ちょっと怠い時があったけど、病院に行くほどじゃないと思っていた。

自分の手を見る事しか出来ずに、ジッと眺めていた。

白いなにかが手に触れて、溶けて消えてなくなった。

白いものが増えていき、雪が降ってるんだなとボーッと見つめる。

体温もだんだん奪っていき、俺の意識が薄れていく。

雪が外灯に反射して、キラキラと輝いて見えた。
目で追いかけて、そのまま手の中に消えていった。
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