血染めの龍騎士と悪役名無し三男の少女漫画的転生物語

鮎焼き

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お仕事

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風邪が治って、その日の夜に皆が寝静まった時間を見計らって荷物をカバン一つに詰め込んだ。、
ラルトにだけは言っておいた方が良かったのかと罪悪感で胸が張り裂けそうになったが、首を横に振った。

いや駄目だ、絶対にラルトは行かせてくれない。

今にもやってきて、引き止めてくるだろうあの時のように…

俺の意思は堅いが、ラルトを突き飛ばしてまで進みたくない。
酷い兄でごめんな、でも…ここにずっといたら俺は…

「にいたま?」

目を擦りながら頑張って起きているみたいだが、半分眠っている。
よく見たら、いつも着ているフリルがこれでもかと使われている寝間着だった。

たまに一緒に寝ているから油断していた、風邪の時は感染るからと部屋から出していた。

「あれ?にいたま…おでかけ?」

「今日は冷えるから、コートで寝ようかと」

「やだ!!」

ラルトはそう言って、俺の服を引っ張った。
右や左や上下にも引っ張るから腕が痛くなる。

なにかラルトに言う前に、ふかふかのじゅうたんの上に倒れた。
ラルトは俺から離れて、俺のコートを握りしめていた。

さすがにそれがないと寒さに耐えられずに、また風邪を引く。

ラルトはずっと繰り返すように「やだ、やだ!」と駄々をこねている。

ここは兄離れも考えてラルトには鬼にならないと…

その日はコートを持って部屋から出ていったラルトを追いかけて部屋を出た。
しかし、捕まえる前に目の前にセトが現れて慌ててトイレに行く言い訳を口にした。

ラルトは自分の部屋に入り、鍵を掛けてしまったからこれ以上追いかける事は出来なかった。
ドアの前で騒いだら、お仕置きされるのは分かっている。

でもまだチャンスは残されている、一度きりで諦める俺ではない。

それから、俺とラルトの攻防戦が始まった。

仕事に支障が出るからと、ラルトからコートを取り返したセトに連れられて地下に向かった。
コートは戻ったが、さすがに今は逃げ出せない。

歩き続けても、入り口を見た事は運ばれている時以外ない。
帰りも目隠しされていて、まるで誘拐されたかのように運ばれる。

そこまで徹底して逃さないようにしている、冬でなくても簡単に逃げる事が出来ない。

「今日のお仕事です」

そう言ってセトは、テーブルの上に並べられた真っ白な料理を見せた。
いつもと変わらない料理だと思ったが、いつもと違う色がそこにあった。

飲み物が料理の横に用意されていて、色が桃色だ。

未知なるものに戸惑っていたら、セトに背中を押されて座る。

なにが追加されても食えって事なんだよな。
とりあえず最初に料理を食べようと一口食べた。

相変わらずの激まずに胃から迫り上がってくる感じを何とか抑えた。
ここで吐いたら当然のようにお仕置きだ、食べないと…

いつも半分食べたところで体が痺れてくる。
その後は、いつものように森の中に捨てられる。

しかし、今日はいつもとは明らかに違った。

「イルト様、飲み込めないのならこちらを…」

「うっ…ぅ?」

「必ずお飲みください」

セトは俺に桃色の飲み物を押し付けてきた。

倒れて仕事が終わると思ったのに、そんなに苦しめたいのか?

必ずと言われたら、飲まないと何をされるか分からない。

一瞬だけ息を止めて、謎の液体を流し込んだ。
喉を通り抜ける恐怖に体を震わせていたが、その震えは一瞬で消えた。

「あ、あれ…体が痺れなくなった」

「当然だよ、にいたまのために僕がお願いしたんだから!」

聞き慣れた明るい声が聞こえて、入ってきたドアの方を見ると笑顔で立っているラルトがいた。
なんでここに、ラルトはこんなところ来ちゃ駄目だ。

説明を求めるようにセトの方を見るが、表情を一つも変えずに「仕事中です」と言われた。
ラルトが見てる前で続けろって言うのかよ。

不思議とさっきまでの痺れはなくなっていた。

この液体のおかげ?でも今までこんな優しさを見せなかった。

ラルトが誰かにお願いしたって事は、ラルトが用意したって事か?

考え事をしていたら、俺のすぐ近くにラルトはいて後ろから抱きしめてきた。

「早く終わらせて、ラルトと一緒に遊んでよにいたま」

締まりそうなほど苦しい行為に顔を歪ませながら一口白い料理を食べた。
桃色の液体を飲まないと、ラルトが無理矢理口の中に流し込んできた。

体が動かないほどは苦しくないはずなのに、1番今日が最も辛い仕事に変わった。

一口一口、口に運ぶ行為がこんなに苦痛だったなんて…

俺が森に捨てられる、辛いように見えてその時は安堵出来た。
その逃げ道を塞がれて、俺は料理を完食する。

食べ終わっても、俺の体は多少の痺れは残っても動けないほどではない。

「にいたま、ご馳走様えらいえらい」

「……」

「にいたまどうして泣いてるの?何処か痛い?……セト」

ラルトが今まで聞いた事がないほどの低い声を出しても、今の俺に気にする余裕はなかった。
涙が止まらない、俺は自分の結末から逃げられないんだと10歳にして絶望した。

漫画を読まなければ……何も知らない方が良かったのかもしれない。

嫌だ、悪役になんてなりたくない、幸せになりたかっただけなのに…

ラルトに腕を引かれて、地下から庭に出る。

今日も美しい晴天の青空が俺を見下ろしていた。

ふと、きゅーちゃんに言った言葉を思い出した。
あの約束だけは守らないと…じゃないと、再会した時に顔を合わせられないからな。
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