悪役令嬢の長所はスタイルだけってあんまりですのよ!

神楽坂ゆい

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「レナータ様が、アメリア様を洗脳しようとしているって……本当かしら?」

 

 学園の廊下の隅で、そんな不穏な囁きが聞こえてくる。レナータが笑みを交わしながら通りすぎると、声の主は慌てて背を向けた。

「あいかわらず根も葉もない噂が飛び交っているみたいね」

 

 レナータは苦笑してみせる。いくらアメリアが“いびられていない”と弁明しても、周囲は次から次へと新しい悪意のある解釈を作り出すのだ。

「もう少ししたら、そんな噂も自然と消えるのではないでしょうか。最近ではお嬢様のファンになる生徒も増えてきてますし」

 

 そう言うマリアナの表情は、自信に満ちている。実際、レナータの美への努力は見た目に大きな変化をもたらし、密かに憧れる生徒も現れ始めていた。

「私の美容法に興味を持ってくれた子がいるのは嬉しいわ。……でも、王太子殿下のまわりが少し騒がしいの」

 

 レナータがちらりと目を向ける先には、ジルベールと何人かの上級貴族令嬢が話し込んでいる光景が見えた。彼の婚約者はレナータにも関わらず、あたかも既に破局が決定しているかのような会話が交わされているという噂だ。

「殿下はどうにも歯切れが悪いですわね。まるで、お嬢様との婚約を曖昧に扱いたいかのようです」

 

 マリアナの言葉に、レナータは小さく肩をすくめる。嫌われているわけではないだろうが、かといって好かれている確証もない。中途半端な態度が続いているのがもどかしい。

「私が悪役令嬢のレッテルを貼られたままだと、殿下も動きにくいのかも」

 

 そう考えると、やはり今は自分のイメージを変えることが先決だ。アメリアとも協力しつつ、正々堂々と行動を起こしていかなければならない。

「一筋縄ではいかないでしょうけど、私にできることは少なくないはず。……学園内で、美容サロンみたいな活動をしてみるのも面白いかも?」

 

 レナータの突拍子もない発想に、マリアナは瞳を輝かせる。

「それはきっと、女子生徒の注目を集めますわ。私もぜひお手伝いいたします!」

 

 しかし周囲には、レナータの動きが面白くない者たちもいるはずだ。今まで通りの“悪役”でいてほしいと願う人間は、彼女の改革をどう受け止めるのか――。
 レナータは遠巻きに自分をうかがう視線を感じながら、それでも前へ進む決意を固めていた。
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