悪役令嬢の長所はスタイルだけってあんまりですのよ!

神楽坂ゆい

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「レナータ様、こちらのドレスはいかがでしょう?」

 

 マリアナが広げたのは、深みのあるロイヤルブルーのドレス。伯爵家に伝わる上質な絹地が用いられ、そのシルエットはレナータのスタイルを最大限に引き立てるデザインだ。

「綺麗だけど……少し派手かしら? でもこの前、地味すぎるのも私らしくないって言われたわね」

 

 レナータは鏡に映る自分の姿を見つめる。今度、公爵家主催のパーティに招かれている。そこには王太子ジルベールも、アメリアも出席する予定だ。もちろん社交界の重鎮たちも顔をそろえる。

「ここは思い切って、お嬢様の魅力をアピールするのも一つの手段だと思いますわ。噂の悪役令嬢が、実は絶世の美女だった……なんて展開になれば、皆驚くでしょう」

 

 マリアナの軽妙な言葉に、レナータは少しだけ吹き出しそうになる。

「悪役令嬢が絶世の美女……なんだか誇張しすぎな気もするけれど、インパクトはあるかもね」

 

 パーティでは、噂と現実の乖離を思い知らせるチャンスでもある。レナータはアクセサリーやヘアアレンジにも力を入れ、“これぞ私”という姿で挑むつもりだ。

「そういえば、アメリア様もこのパーティに出席なさるのでしょう? お二人が並ぶと、どちらが美しいか話題になりそうですわ」

 

 マリアナの冗談めいた口調に、レナータは少しだけ不安を覚える。アメリアは確かに華やかな美貌で有名だ。しかし、今のレナータは僅かながら自信が芽生えていた。

「張り合うつもりはないの。アメリア様とは、最近ようやく言葉を交わし始めたばかりだし……。でも、並んでいる姿を見て、みんなが‘いびり’の噂を疑問に思うなら、それだけで充分」

 

 レナータは微笑む。悪意に立ち向かうには、言い争いよりも行動で示すのが効果的だと思い始めていた。

「では、パーティ当日までに、お嬢様のエクササイズとスキンケアをさらに強化してまいりましょう! 王太子殿下にも、きっとお嬢様の変化がわかるはずです」

 

 マリアナの宣言に、レナータもやる気が湧いてくる。普段の学園生活だけでなく、社交の場でも堂々と振る舞えるように準備するのだ。

「そうね……少なくとも私は、破滅に向かう悪役令嬢なんかじゃない。自分の魅力を伸ばして、噂を払拭してみせるわ」

 

 胸に秘めた決意を新たに、レナータはドレスを抱えて鏡の前に立つ。
 パーティ当日、どんな反応が待っているのか――期待と一抹の緊張が入り混じりながら、伯爵令嬢のビューティー改革は加速していく。
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