悪役令嬢の長所はスタイルだけってあんまりですのよ!

神楽坂ゆい

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「殿下、婚約者の疑惑について、何かお考えはないのですか」

 

 学園近くの迎賓館に一時滞在しているジルベールに、友人のクリストファーが問いかけた。パーティの件から数日が過ぎたというのに、王太子であるジルベールが動いた様子はない。

「わかっている。あれはレナータがやったことではない……。だけど、証拠がない以上、焦って動けば逆に怪しまれる」

 

 ジルベールは苛立ちを押し殺すように、小さく唇を噛む。王太子という立場ゆえ、軽々しい発言はできないのだろう。

「しかし、放っておけばレナータ様への悪評は加速するばかりです。あなたが彼女の婚約者として支えるのが筋では」

 

 クリストファーの静かな指摘に、ジルベールは苦い顔をする。内心では彼も、レナータを信じたいと思っているのだ。

「……俺は王太子で、レナータは伯爵家の令嬢だ。周囲がどう受け取るかは考慮しなければならない」

 

 そう言いながら、ジルベールは思い出す。あのパーティの夜、ロイヤルブルーのドレスを纏ったレナータが、確かに美しく輝いていたことを。

「本当は、もっと素直に声をかけたい。けれど彼女も俺を避けているように見える時がある」

 

 その呟きを聞き、クリストファーは小さく眉をひそめる。王太子という肩書に縛られ、恋愛感情すら素直に表せないジルベールの姿がもどかしかった。

「殿下、率直に伺います。あなたはレナータ様をどう思っているのです」

 

 まっすぐな問いかけに、ジルベールは一瞬言葉を失う。だが、次の瞬間には小さな声で答えた。

「……あいつが悪い人間だとは思えない。むしろ、気づかないうちにずっと気になっていたのかもしれない」

 

 自分でも驚くほど率直な答えだった。クリストファーはそれを聞き、静かに頷く。

「ならば、なおさら無視してはいけないのでは。レナータ様は今、前にも増して苦境に立たされています」

 

 ジルベールは胸を押されるような感覚を覚える。何とかしてレナータを助けたい――その思いが強まるほど、王太子としての立場と責任が重くのしかかってくる。

「わかっている……。だが、どう動くべきか、まだ俺には見えないんだ」

 

 そう呟くジルベールの声には、焦りと苦悩が滲んでいた。レナータの名を口にするたび、彼の心は大きく揺れ動いている。クリストファーはその様子を見つめながら、言葉少なにその場を後にした。
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