悪役令嬢の長所はスタイルだけってあんまりですのよ!

神楽坂ゆい

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「レナータが、そんなイベントを開いたのか」

 

 学園の廊下で、ジルベールはクリストファーからの報告に目を見開いた。いつもなら他の生徒が遠巻きにする光景だが、今日はジルベールの驚きに興味を示す者も少なくない。

「はい。アメリア様と共に、美容講習のようなものを開催しているようです。参加者の評判は上々だそうで」

 

 クリストファーの声に、ジルベールの胸がざわつく。レナータが積極的に動き、学園の評判を変えようとしている。それなのに、彼はまだ何もしていない。

「……俺は王太子として、どう関わればいいのだろう。昔から、彼女とまともに話をした回数も多くはないのに」

 

 ジルベールは苦渋の表情を浮かべる。レナータが悪役令嬢だという噂を半ば信じかけていた過去の自分を思い返し、罪悪感すら抱いている。

「一度、直接話してみればいいのでは。……それとも、婚約者としての立場から何か支援するというのもありだと思います」

 

 クリストファーの助言に、ジルベールは視線を落とす。婚約者として彼女を守るのは当然だが、それが今のレナータにとって嬉しいことなのかどうかもわからない。

「もし、俺が急に口を出せば、レナータが嫌がるんじゃないか」

 

「そうでしょうか。むしろ、真摯に協力を申し出れば、彼女も喜ぶかもしれませんよ」

 

 クリストファーの言葉は理にかなっているが、ジルベールの心は揺れたままだ。自分の気持ちは単なる王太子としての責任なのか、それともレナータへの特別な感情なのか。

「俺は……。いや、とにかくまずは、直接見に行ってみるしかないか」

 

 思い切った決断をしたジルベールは、クリストファーと共に講習会が開かれている教室へ向かう。遠目から覗けば、レナータが笑顔で参加者たちと談笑している光景が見えた。

「……あんなに生き生きした表情、見たことがない」

 

 ジルベールは息を呑む。レナータの美しい姿、そして誠実に美容を伝える様子は、噂の“悪役令嬢”とはかけ離れている。

「どうされますか。殿下」

 

 クリストファーが小声で問いかけるが、ジルベールは答えられずに立ち尽くす。ただ胸の奥から湧き上がる何かを抑えきれないまま、レナータの姿を見つめ続けていた。
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