悪役令嬢の長所はスタイルだけってあんまりですのよ!

神楽坂ゆい

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「殿下、こちらの書類に目を通していただけますか。学園で行われるビューティーコンテストに関する招待状です」

 

 クリストファーが差し出した書類を手に、ジルベールは顔をしかめる。自分が王太子として出席するかどうか、正式に問われているというわけだ。

「俺が出席すれば、“王太子がわざわざ視察するほどのイベント”と評判になるだろう。下手をすれば、レナータがまた妙な勘繰りをされる」

 

 ジルベールはため息まじりに言葉を続ける。だが、コンテストを主催する側も、彼の参加を強く望んでいるのは明らかだ。

「むしろ、これはチャンスではありませんか。殿下が正当に審査員として参加し、レナータ様の真価を認めれば、噂など吹き飛ぶのでは」

 

 クリストファーの提案に、ジルベールは思わず言葉を失う。確かに、公平かつ正当な評価を示す場としてコンテストは最適かもしれない。ただ、それができるのかどうか。

「俺は婚約者でありながら、レナータを正しく評価できるのだろうか。主観が入りすぎないか」

 

「そこは、あなたの誠実さにかかっています。王太子だからといって私情を挟まず、公平に評価する。それができるのなら、むしろ誰よりも信頼の置ける審査員となるでしょう」

 

 クリストファーの言葉には説得力があった。ジルベールは少し考え込んだ末、視線を上げる。

「もし俺が公の場でレナータの努力を認めるなら、周囲も彼女を再評価するきっかけになるはずだ。……だが、逆もまた然りだな。もし彼女の出来が悪ければ、俺が厳しく評価しなければならない」

 

 愛情や情けだけで甘い点をつければ、レナータが真正面から求めている“正しい評価”とは違うものになってしまう。それはそれで、彼女を侮辱することにもなるのだろう。

「殿下、レナータ様が最も嫌うのは、同情や形だけの庇護です。彼女は美や実力を本物として認めてほしいと望んでいる。……ならば、殿下がしっかりと見極めてあげるべきかと思います」

 

 クリストファーの言葉に、ジルベールは目を閉じて決意を固める。自分にとっては難しい立ち位置だが、それこそが王太子として、そして一人の男性として示すべき態度なのかもしれない。

「わかった。俺はあいつを信じて、正当に判断してみせる。……それでこそ、あいつが本当に納得できるんだろう」

 

 そう呟くジルベールの表情には、戸惑いだけでなく、新たな気概がうかがえる。婚約者という関係を越えて、彼女の全てを見直したい――そんな思いが胸の中で膨らみ始めていた。
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