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「……さて、黒幕が取り押さえられるのも時間の問題か。」
わたくしは王宮の窓辺に立ち、庭を見下ろす。すでに疑惑の貴族の名が浮上し、近衛兵の監視下に置かれていると聞いた。捏造された悪評の拡散や、孤児院への嫌がらせも止むだろう。
「あら、アデル様。こんなところで黄昏れてどうしたの?」
後ろからサラの声がして、わたくしはゆっくり振り向く。微笑む彼女に向かって、なんとなく視線を落とす。
「……すべてが解決に向かっているのに、どうも落ち着かなくて。長年、悪女として生きてきたのに、それがなくなった今、わたくしはどう振る舞えばいいのか迷っているの。」
「なるほど。周囲がアデル様を“普通の伯爵令嬢”として扱い始めていて、逆に戸惑う感じですね。」
サラは的確に指摘してくる。わたくしは苦笑を返す。悪女の仮面を外した瞬間、自分が何者なのか、どう生きていくのかを改めて考えなければならなくなった。孤児院支援は続けたいし、助けを必要とする人々の手助けもしたい。でも、伯爵令嬢としての責務もある。
「ロラン殿下や周囲の人々が変わっていくのは嬉しいわ。だけど、それ以上にわたくし自身が一番大きく変わらなければならないのかもしれない。」
「アデル様なら、きっと大丈夫ですよ。ずっと悪女を演じてきたのは、優しさを隠すためだったんでしょう? なら、これからはそれを隠さずに生きられるはず。」
サラの言葉に胸がじんわりと温かくなる。いつの間にか、わたくしはこんなに多くの人に支えられていたのだ。悪女をやめてしまえば、一人ぼっちになるのではと恐れていたのは思い過ごしだったらしい。
「殿下とのことも、まだわたくしには覚悟が足りないのかもしれない。彼を責める気持ちもあれば、やはり好きだと思う自分もいる。」
「焦らなくていいと思いますよ。アデル様はずっと頑張ってきたんだから、これからは少しずつ自分の気持ちを確認していけば。」
サラはにこやかにそう言うと、「わたしはそろそろメイド業に戻りますね」と下がっていく。わたくしは一人、窓から見える景色に再び目をやった。遠くの空は青く澄み渡り、心なしか町の喧噪も以前より穏やかに聞こえる。
「これからは、悪女じゃないアデル・レイノルズとして生きる。殿下との未来も、わたくし自身の手で選ぶ。……不思議ね、こんなに気持ちが楽になるなんて。」
独り言のように呟いて、わたくしは小さく笑う。まだ完結していない物語だけれど、これまでにない自由と希望を感じている。何より、自分を偽らずにいられることが、こんなにも安心できることだとは思わなかった。
「さあ、仕事を片付けましょう。孤児院への訪問も日程を調整しなくちゃ。」
わたくしは意を決して執務机へ戻る。新しいわたくしとして歩む第一歩を踏みしめるために、できることから着実にこなしていこう。そう心に決めた夕暮れ時の王宮だった。
わたくしは王宮の窓辺に立ち、庭を見下ろす。すでに疑惑の貴族の名が浮上し、近衛兵の監視下に置かれていると聞いた。捏造された悪評の拡散や、孤児院への嫌がらせも止むだろう。
「あら、アデル様。こんなところで黄昏れてどうしたの?」
後ろからサラの声がして、わたくしはゆっくり振り向く。微笑む彼女に向かって、なんとなく視線を落とす。
「……すべてが解決に向かっているのに、どうも落ち着かなくて。長年、悪女として生きてきたのに、それがなくなった今、わたくしはどう振る舞えばいいのか迷っているの。」
「なるほど。周囲がアデル様を“普通の伯爵令嬢”として扱い始めていて、逆に戸惑う感じですね。」
サラは的確に指摘してくる。わたくしは苦笑を返す。悪女の仮面を外した瞬間、自分が何者なのか、どう生きていくのかを改めて考えなければならなくなった。孤児院支援は続けたいし、助けを必要とする人々の手助けもしたい。でも、伯爵令嬢としての責務もある。
「ロラン殿下や周囲の人々が変わっていくのは嬉しいわ。だけど、それ以上にわたくし自身が一番大きく変わらなければならないのかもしれない。」
「アデル様なら、きっと大丈夫ですよ。ずっと悪女を演じてきたのは、優しさを隠すためだったんでしょう? なら、これからはそれを隠さずに生きられるはず。」
サラの言葉に胸がじんわりと温かくなる。いつの間にか、わたくしはこんなに多くの人に支えられていたのだ。悪女をやめてしまえば、一人ぼっちになるのではと恐れていたのは思い過ごしだったらしい。
「殿下とのことも、まだわたくしには覚悟が足りないのかもしれない。彼を責める気持ちもあれば、やはり好きだと思う自分もいる。」
「焦らなくていいと思いますよ。アデル様はずっと頑張ってきたんだから、これからは少しずつ自分の気持ちを確認していけば。」
サラはにこやかにそう言うと、「わたしはそろそろメイド業に戻りますね」と下がっていく。わたくしは一人、窓から見える景色に再び目をやった。遠くの空は青く澄み渡り、心なしか町の喧噪も以前より穏やかに聞こえる。
「これからは、悪女じゃないアデル・レイノルズとして生きる。殿下との未来も、わたくし自身の手で選ぶ。……不思議ね、こんなに気持ちが楽になるなんて。」
独り言のように呟いて、わたくしは小さく笑う。まだ完結していない物語だけれど、これまでにない自由と希望を感じている。何より、自分を偽らずにいられることが、こんなにも安心できることだとは思わなかった。
「さあ、仕事を片付けましょう。孤児院への訪問も日程を調整しなくちゃ。」
わたくしは意を決して執務机へ戻る。新しいわたくしとして歩む第一歩を踏みしめるために、できることから着実にこなしていこう。そう心に決めた夕暮れ時の王宮だった。
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