浮舟のフィオナ―若き女王と終末の方舟―

河野彰

文字の大きさ
9 / 20
第二章

第三章:寵愛の序列 ―偽りの愛撫と真実の接吻―

しおりを挟む
 厚い絹の帳が下ろされた女王の閨は、百合の香香と甘やかな情死の気配に満ちていた。
 広大なベッドの中央に座すセリーヌは、薄物一枚ですらなく、ただ月光のような白い肌を露わにしている。その左右を、猛々しい執着を隠そうともしない二人の男が固めていた。

「陛下、私以外の男の指が触れること、これほど不快だとは思いませんでしたよ」
 ビクトルが、セリーヌの細い手首を取り、その指先に吸い付くように接吻を落とした。翡翠の瞳は、対面に座るスズカを明確な敵意で射抜いている。
「不快なのはこっちだ。貴公子の綺麗な指じゃ、女王様の本当の熱さには届かねえだろ?」
 スズカは嘲笑うと、セリーヌの腰を乱暴に引き寄せ、その豊かな太ももを逞しい掌で愛撫した。

 二人の若き「妻」たちの間で交わされる、独占欲という名の火花。
 ビクトルはセリーヌの耳元に唇を寄せ、とろけるような甘い声で「私だけを、正妃に」と囁き、スズカはその強靭な腕で彼女を組み伏せんばかりに抱きしめる。彼らは、いつの間にかこの傲慢で知的な女王に、魂ごと絡め取られていた。

 だが、二人が競い合えば合うほど、セリーヌの視線が向かう先は決まっていた。
「……ルーク」

 彼女が潤んだ琥珀色の瞳で名を呼ぶ。
 足元、あるいは枕元に控えるルークへと、セリーヌは二人を振り切るようにして腕を伸ばした。ビクトルが与える洗練された快楽も、スズカが刻む野性的な律動も、彼女にとっては政治的な「遊戯」に過ぎない。
 セリーヌはルークの、薄く這う傷跡がある頬を愛おしげに撫で、その隻腕の肩に顔を埋めた。

「ルーク、ここへ。……私に触れて。あなたがいなければ、私は凍えてしまうわ」
「……セリーヌ様、他のお二方が見ておいでですよ」

 ルークは静かに、しかし抗い難い力強さでセリーヌの背中を抱きしめた。欠損した左腕の先でさえ、彼女にとってはどんな宝石よりも価値のある愛の証だった。
 セリーヌは二人の「新人」たちを見せつけるように見やり、ルークの唇を貪欲に奪う。深く、心臓まで溶け合うようなそのキスに、ビクトルは屈辱に唇を噛み、スズカは獣のような唸りを上げた。

「……信じられん。我ら二人を侍らせながら、あのような不自由な男に、これほどまでの体温を向けるとは」
 ビクトルが吐き捨てる。だが、その言葉とは裏腹に、彼はセリーヌの背中に指を這わせ、彼女の関心を少しでもこちらに向けようと必死に愛撫を続けた。
「へっ……だったら、その執事から女王を奪い取ってやるだけだ。なぁ、女王様。……今夜はまだ、終わらせねえぜ」

 スズカがセリーヌの脚を割り、その奥深くに指を沈める。
 ルークに背後から抱かれ、その耳元で愛を囁かれながら、セリーヌは左右の男たちが与える刺激に身を震わせた。一人の最愛と、二人の強欲。
 スズカが一番乗りだと言わんばかりにセリーヌの足の間に割り入り自身の楔を深々と沈めた。セリーヌは腰をうねらせてその圧倒的な熱量に喘ぐ。ビクトルは枕元に立つといまだにルークと接吻を続けるセリーヌの唇を己の熱塊で塞いだ。喉奥まで女王を支配する。ルークはそんな二人を眺めながらもセリーヌの身体を優しく撫でさすり時折小ぶりな乳房の先端にある丸い突起を指先で捏ねた。
 長い律動の果てにスズカが果てると、今度はビクトルが上書き戦とばかりに女王を背後から貫く。貴族の上っ面を脱ぎ捨て獣のように女王を犯すその必死さにセリーヌがあえやかな喘ぎ声をあげる。セリーヌはルークの上にまたがり、その顔の上に秘部を押し当てる、突き出した興奮でスズカの剛直を頬張る。三者が攻め立てる中、セリーヌは嬌声を上げて次第に高まっていく。
 最後には男の役割を果たさぬルークの肉竿を口に収めて長い愛撫が始まった。ルークはそんな女王の背や肩を優しく撫でる。背後では上下に分かれたビクトルとスズカがともにセリーヌの中に潜りこんでいた。先に果てたのは誰だったか。ただ、二人の男の子種が熱い潮を噴き上げるセリーヌの子宮へと注がれたのは確かだった。
 
 歪な四角関係が織りなす閨の宴は、沈みゆく島の運命を忘れさせるほどに、濃密で、狂おしい熱を帯びていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~

ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。 彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。 ――死んだはずの彼女が、生きている? 同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。 「今さら、逃げ道があると思うなよ」 瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。 秘された皇子と、選び直した愛。 三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?    * * * 後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...