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三
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リンゼイは今まで通りに、妃教育で登城しているマリアンヌが執務室に訪れれば相手をしていたが、数日経った頃から諜報員達から寄せられる侯爵家の情報は耳を疑うような内容に頭を抱えてしまった。
スカーレット侯爵家は当主のマイルズと夫人のアリア、長女のセレリア、次女のマリアンヌ、長男で跡継ぎのロベルトの五人家族である。
侯爵家の屋敷の様子では、長女のセレリアは殆ど自室にいるらしい。食事もセシリアを抜いた四人で諜報員が探っていた間、一度もセシリアが食事の場に同席した事はなかったという。
「それは、長女が食事に同席するのを拒否しているという事なのか?一人自室に食事を運ばせていると?」
リンゼイの問い掛けに諜報員は困ったように口ごもって
「いえ·····長女のセレリア嬢に食事が運ばれた事は、私が探っていた間一度もありませんでした。執事やメイド長が深夜に余ったらしきパンなどを部屋に届けていらっしゃいましたが」
どういう事なのかと、リンゼイは戸惑った。
確かに、小柄な方で華奢なマリアンヌよりも更に小柄で華奢だとは思ったが。
ザイオンとエリーシャの話しでは、侯爵夫妻は長女は我儘で癇癪持ちだとの事らしいが、我儘で癇癪持ちの令嬢が食事も運ばれずに文句を言ったり癇癪を起こしたりしないものなのか?
「部屋から殆ど出ないというのは?ゴロゴロと怠けているからなのか?」
「いえ·····それも怠けて部屋から出ないという訳でもないようで·····一度自室の隣りにある図書室に行こうと部屋を出られたセレリア嬢を見た夫人が大変お怒りになりまして、それ以来セレリア嬢は自室に籠ったままでございます。御手洗と洗面所は各部屋にありまして困る事はないようですが、掃除などはご自分でされているようです」
貴族の令嬢が自分で掃除をしている?しかもトイレの掃除までも?リンゼイは混乱しながら
「それでセレリア嬢は癇癪を起こしたりしないのか?」
「セレリア嬢が癇癪を起こしたところは一度も見ておりません。夫人がセレリア嬢に癇癪を起こしているのは何度か見ましたが」
セレリアが癇癪持ちというのは嘘なのか?寧ろ夫人の方が癇癪を起こすと?
まだほんの少ししか調査が進んでいないが、侯爵夫妻が話していた内容はかなり怪しいのではないかと疑いが深まった。
続き調査を進めるように諜報員に指示を出した。
その翌日、マリアンヌの妃教育の終了後に講師達を呼び出した。
「マリアンヌの教育が進んでいないとの話しは母上から聞いている。忖度なく正直に答えてもらいたい。マリアンヌの評価はどのようなものだ」
マナー語学座学ダンスなどの講師として王宮に勤める飛び抜けて優秀な者達である。
その者達からの忌憚のない評価で、マリアンヌが言われている程優秀ではない事が露呈した。
その辺りはリンゼイも薄々感じていたのだが、今まではマリアンヌの「王太子の婚約者」という立場への配慮から、はっきりとは明言されてこなかったのだ。
各分野の講師からの評価を纏めると、マナーは貴族の令嬢であれば出来て当然程度のもの、ダンスも基礎がやっと出来上がった程度で、語学座学に至っては妃教育が始まった頃から全く進んでいなかった。
少しでも厳しい事を言えば泣き出して授業にならず、侯爵家から付いてきている侍女がお茶や菓子を出して休憩したり、部屋を出ていってしまう為に授業が進んでいないのだという。
「申し訳ないのですが、マリアンヌ様よりも優秀な令嬢は探さなくてもいくらでもいらっしゃるかと思います」
と講師達は口を揃えた。
リンゼイも覚悟はしていたが、講師達の口から語られた内容は想像以上だったという他なかった。
スカーレット侯爵家は当主のマイルズと夫人のアリア、長女のセレリア、次女のマリアンヌ、長男で跡継ぎのロベルトの五人家族である。
侯爵家の屋敷の様子では、長女のセレリアは殆ど自室にいるらしい。食事もセシリアを抜いた四人で諜報員が探っていた間、一度もセシリアが食事の場に同席した事はなかったという。
「それは、長女が食事に同席するのを拒否しているという事なのか?一人自室に食事を運ばせていると?」
リンゼイの問い掛けに諜報員は困ったように口ごもって
「いえ·····長女のセレリア嬢に食事が運ばれた事は、私が探っていた間一度もありませんでした。執事やメイド長が深夜に余ったらしきパンなどを部屋に届けていらっしゃいましたが」
どういう事なのかと、リンゼイは戸惑った。
確かに、小柄な方で華奢なマリアンヌよりも更に小柄で華奢だとは思ったが。
ザイオンとエリーシャの話しでは、侯爵夫妻は長女は我儘で癇癪持ちだとの事らしいが、我儘で癇癪持ちの令嬢が食事も運ばれずに文句を言ったり癇癪を起こしたりしないものなのか?
「部屋から殆ど出ないというのは?ゴロゴロと怠けているからなのか?」
「いえ·····それも怠けて部屋から出ないという訳でもないようで·····一度自室の隣りにある図書室に行こうと部屋を出られたセレリア嬢を見た夫人が大変お怒りになりまして、それ以来セレリア嬢は自室に籠ったままでございます。御手洗と洗面所は各部屋にありまして困る事はないようですが、掃除などはご自分でされているようです」
貴族の令嬢が自分で掃除をしている?しかもトイレの掃除までも?リンゼイは混乱しながら
「それでセレリア嬢は癇癪を起こしたりしないのか?」
「セレリア嬢が癇癪を起こしたところは一度も見ておりません。夫人がセレリア嬢に癇癪を起こしているのは何度か見ましたが」
セレリアが癇癪持ちというのは嘘なのか?寧ろ夫人の方が癇癪を起こすと?
まだほんの少ししか調査が進んでいないが、侯爵夫妻が話していた内容はかなり怪しいのではないかと疑いが深まった。
続き調査を進めるように諜報員に指示を出した。
その翌日、マリアンヌの妃教育の終了後に講師達を呼び出した。
「マリアンヌの教育が進んでいないとの話しは母上から聞いている。忖度なく正直に答えてもらいたい。マリアンヌの評価はどのようなものだ」
マナー語学座学ダンスなどの講師として王宮に勤める飛び抜けて優秀な者達である。
その者達からの忌憚のない評価で、マリアンヌが言われている程優秀ではない事が露呈した。
その辺りはリンゼイも薄々感じていたのだが、今まではマリアンヌの「王太子の婚約者」という立場への配慮から、はっきりとは明言されてこなかったのだ。
各分野の講師からの評価を纏めると、マナーは貴族の令嬢であれば出来て当然程度のもの、ダンスも基礎がやっと出来上がった程度で、語学座学に至っては妃教育が始まった頃から全く進んでいなかった。
少しでも厳しい事を言えば泣き出して授業にならず、侯爵家から付いてきている侍女がお茶や菓子を出して休憩したり、部屋を出ていってしまう為に授業が進んでいないのだという。
「申し訳ないのですが、マリアンヌ様よりも優秀な令嬢は探さなくてもいくらでもいらっしゃるかと思います」
と講師達は口を揃えた。
リンゼイも覚悟はしていたが、講師達の口から語られた内容は想像以上だったという他なかった。
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