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四
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側近達も次々に情報を持ち帰ってきた。
そこには思っていた以上のスカーレット侯爵家の闇があった。
侯爵家に古くから仕えていて退職した使用人達を見つけ出して、何とか聞き出した話しでは
『セレリアは、産まれた瞬間から侯爵夫妻から疎まれていた。
現スカーレット侯爵当主は、当時侯爵家の使用人として働いていた男爵令嬢であったアリアと恋仲になり、両親の反対を無視して身体の関係を持ち身篭ってしまった為に婚姻を結んだ。その時に産まれたのがセレリアだったが、アリアの色を全く受け継がなかった為に、アリアはセレリアを拒絶した。アリアはストロベリーブロンドの髪に薄い空色の瞳だったが、セレリアはブルーブロンドの髪に黒に近い青色の瞳で、マイルズのシルバーブロンドの髪でもなく空色の瞳でもなかった。セレリアはマイルズの母親である前侯爵夫人の色を継いだのだ。最後まで婚姻を反対していたマイルズの母親の色を継いだセレリアを嫌い乳母に丸投げして、セレリアの存在を無視した。
そして翌年、アリアとそっくりそのままの色を持ったマリアンヌが産まれた為に、夫妻はマリアンヌだけを溺愛してきたのだった。
前侯爵夫妻はマリアンヌが産まれてすぐに事故で亡くなり、セレリアは乳母が育てていたが、マリアンヌとリンゼイとの婚約が成立した直後に解雇されたという。
侯爵家にはマリアンヌより三つ下の弟ロベルトがいて、侯爵家はロベルトが後継者となっている。
この国の令嬢は十三歳と十四歳の二年間貴族の令嬢が社交や礼儀作法を学ぶ女学園に通う事を義務づけられているが、セレリアはその学園にさえ通わせてもらっておらず、スカーレット侯爵家と繋がりのない貴族家ではセレリアの存在さえ忘れているものが殆どであった。
弟のロベルトですら、産まれてから関わりを持っていなかったセレリアの存在を意識したことはないようであった 』
更に衝撃だったのは
『セレリアはマリアンヌの自尊心を満たす為の存在であった。
溺愛され甘やかされて、どんな我儘でも叶えられて育ったマリアンヌは、存在を無視され姿を見ればヒステリックにアリアに罵倒されるセレリアに優越感たっぷりに感じていた。王太子の婚約者にもなった自分と、存在を疎まれ教育さえ受けさせてもらっていないセレリア、自尊心を満たすに十分の存在だった。まともなドレスさえ持っていないセレリアに煌びやかに着飾った自身を見せつけては、格が違うのだと優越感に浸った。侯爵夫妻もそれを肯定して更にマリアンヌを甘やかして溺愛した。
仕立て屋を呼んでドレスを仕立てる際には、態とセレリアを部屋に呼んで部屋の隅に立たせて見せつけたり、仲の良い令嬢達を集めたお茶会の席に、質素なドレスを着せたセレリアを同席させて貶めて笑いものにしているという』
余りにも歪みきっていた。
そして
『マリアンヌの愉悦を満たすだけに存在させられているセレリアは、マリアンヌが王家に嫁いだ後は、存在させる意味はなくなり、餓死か衰弱死させられるだろう』
という事だった。
そこまで報告書を読んだリンゼイは、ゾッとした。
自分との婚姻によって消される可能性のある令嬢がいるという事実に。
「·····この、報告書の最後にある事柄に関する可能性は」
「高いと思われます。侯爵家は、セレリア嬢を表に出さずにいます。教育も受けさせずに社交界へのデビューもさせていない。マリアンヌ嬢が殿下に嫁いだ後は、セレリア嬢の存在は侯爵家にとっては完全に要らないものになります。人知れず死亡させて、病死だと届け出ればそれでおしまいでしょう。我儘で癇癪持ちの厄介ものだと触れ回っている為に、暫く少しは噂になるかもしれませんが、侯爵家の実情を知る貴族家はなく、知っている少人の者達も王太子妃となったマリアンヌ嬢の為に口を閉ざすでしょう。事実は闇に葬り去られてお終いです」
側近がそう断言すると、リンゼイは頭を抱えた。
今まで、マリアンヌと婚約し婚姻をする事に、自分の意思はなくとも不満や疑問を持った事はなかった。国王となる自身は自由に選ぶことは認められずとも、国や国民の為に自身を捧げる事は当然の義務と責務だと覚悟していたからだ。
だが、ここにきてマリアンヌとの婚姻に疑問が生まれてしまった。
自身の自尊心と愉悦だけを優先するマリアンヌの実態を知ってしまった今は、黙って迎え入れられないのではないかと思ってしまったのだ。
決して純粋な清廉潔白さを求めているわけではい。多少未熟なところや足りないところはあったとしても、少なくとも清濁併せ呑めるような心根の持ち主ではあって欲しいと思っていたのだ。
マリアンヌにそれを求める事は、無理だろう。
そこには思っていた以上のスカーレット侯爵家の闇があった。
侯爵家に古くから仕えていて退職した使用人達を見つけ出して、何とか聞き出した話しでは
『セレリアは、産まれた瞬間から侯爵夫妻から疎まれていた。
現スカーレット侯爵当主は、当時侯爵家の使用人として働いていた男爵令嬢であったアリアと恋仲になり、両親の反対を無視して身体の関係を持ち身篭ってしまった為に婚姻を結んだ。その時に産まれたのがセレリアだったが、アリアの色を全く受け継がなかった為に、アリアはセレリアを拒絶した。アリアはストロベリーブロンドの髪に薄い空色の瞳だったが、セレリアはブルーブロンドの髪に黒に近い青色の瞳で、マイルズのシルバーブロンドの髪でもなく空色の瞳でもなかった。セレリアはマイルズの母親である前侯爵夫人の色を継いだのだ。最後まで婚姻を反対していたマイルズの母親の色を継いだセレリアを嫌い乳母に丸投げして、セレリアの存在を無視した。
そして翌年、アリアとそっくりそのままの色を持ったマリアンヌが産まれた為に、夫妻はマリアンヌだけを溺愛してきたのだった。
前侯爵夫妻はマリアンヌが産まれてすぐに事故で亡くなり、セレリアは乳母が育てていたが、マリアンヌとリンゼイとの婚約が成立した直後に解雇されたという。
侯爵家にはマリアンヌより三つ下の弟ロベルトがいて、侯爵家はロベルトが後継者となっている。
この国の令嬢は十三歳と十四歳の二年間貴族の令嬢が社交や礼儀作法を学ぶ女学園に通う事を義務づけられているが、セレリアはその学園にさえ通わせてもらっておらず、スカーレット侯爵家と繋がりのない貴族家ではセレリアの存在さえ忘れているものが殆どであった。
弟のロベルトですら、産まれてから関わりを持っていなかったセレリアの存在を意識したことはないようであった 』
更に衝撃だったのは
『セレリアはマリアンヌの自尊心を満たす為の存在であった。
溺愛され甘やかされて、どんな我儘でも叶えられて育ったマリアンヌは、存在を無視され姿を見ればヒステリックにアリアに罵倒されるセレリアに優越感たっぷりに感じていた。王太子の婚約者にもなった自分と、存在を疎まれ教育さえ受けさせてもらっていないセレリア、自尊心を満たすに十分の存在だった。まともなドレスさえ持っていないセレリアに煌びやかに着飾った自身を見せつけては、格が違うのだと優越感に浸った。侯爵夫妻もそれを肯定して更にマリアンヌを甘やかして溺愛した。
仕立て屋を呼んでドレスを仕立てる際には、態とセレリアを部屋に呼んで部屋の隅に立たせて見せつけたり、仲の良い令嬢達を集めたお茶会の席に、質素なドレスを着せたセレリアを同席させて貶めて笑いものにしているという』
余りにも歪みきっていた。
そして
『マリアンヌの愉悦を満たすだけに存在させられているセレリアは、マリアンヌが王家に嫁いだ後は、存在させる意味はなくなり、餓死か衰弱死させられるだろう』
という事だった。
そこまで報告書を読んだリンゼイは、ゾッとした。
自分との婚姻によって消される可能性のある令嬢がいるという事実に。
「·····この、報告書の最後にある事柄に関する可能性は」
「高いと思われます。侯爵家は、セレリア嬢を表に出さずにいます。教育も受けさせずに社交界へのデビューもさせていない。マリアンヌ嬢が殿下に嫁いだ後は、セレリア嬢の存在は侯爵家にとっては完全に要らないものになります。人知れず死亡させて、病死だと届け出ればそれでおしまいでしょう。我儘で癇癪持ちの厄介ものだと触れ回っている為に、暫く少しは噂になるかもしれませんが、侯爵家の実情を知る貴族家はなく、知っている少人の者達も王太子妃となったマリアンヌ嬢の為に口を閉ざすでしょう。事実は闇に葬り去られてお終いです」
側近がそう断言すると、リンゼイは頭を抱えた。
今まで、マリアンヌと婚約し婚姻をする事に、自分の意思はなくとも不満や疑問を持った事はなかった。国王となる自身は自由に選ぶことは認められずとも、国や国民の為に自身を捧げる事は当然の義務と責務だと覚悟していたからだ。
だが、ここにきてマリアンヌとの婚姻に疑問が生まれてしまった。
自身の自尊心と愉悦だけを優先するマリアンヌの実態を知ってしまった今は、黙って迎え入れられないのではないかと思ってしまったのだ。
決して純粋な清廉潔白さを求めているわけではい。多少未熟なところや足りないところはあったとしても、少なくとも清濁併せ呑めるような心根の持ち主ではあって欲しいと思っていたのだ。
マリアンヌにそれを求める事は、無理だろう。
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