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十六
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王都に来ていた時に、使用人と共に外出していた騎士爵の娘が困っていたところにモンデール男爵が手を差し伸べて助けたらしく、誰も見て見ぬふりをする中で躊躇いもなく助けた男爵に娘が惚れたらしい。
社交界で不評だといっても、実際本人に会って話せば悪い人物でないことはすぐにわかる。
娘から話を聞いた騎士爵も礼を述べる為に追いかけ、宿に宿泊していたモンデール男爵と話した事で人柄に惚れたようだった。
直ぐに騎士団の団長を通して婚約の申し入れを願っているという。
「その娘もセレリアと歳頃は似たようなものだが、一応侯爵家出身のセレリアよりも騎士爵の娘の方が気楽に受け入れ易いだろう」
それに、モンデール男爵はセレリアが嫁げばそれはそれは大切にしてくれるだろうが、やはり辺境の男爵領には、健康的で生活力に満ち溢れている娘の方が良いかもしれないとシリウスも考えたようだ。
「時間もなかったが、ベラベラと自分の事を話す奴ではないからそんな出来事があったとはなぁ。久しぶりに王都に出てきて人助けだけして帰っていくとは、彼らしいよ」
シリウスは可笑しそうに笑う。
学園に通っていた頃からモンデール男爵は人の良い男だった。寡黙な性格と厳つく見える容姿から令嬢達からは敬遠されてはいたが、シリウスや一部の子息達とは親しくしていたのだ。
王弟とあってシリウスの周囲には媚びを売る令嬢も多くいたことから、あまり女性の騒がしい事を好まないモンデール男爵は人前でシリウス達と連まなかった。
学園を卒業してからも、モンデール男爵は領地に戻りシリウス達と親しくしている事をいちいち口にする事もなく、シリウス達からも口にされる事を望まなかった。人脈をひけらかさない性格もシリウスは気にいっている。
そんな男爵に惚れた娘も見る目があると思った。
ちなみにセレリアにもモンデール男爵について聞いてみた事がある。
『とても、とても優しい素敵な方でした。こんな私に気を遣ってくださって、疲れないようにとクッションまでひいてくださったのです』
実はスカーレット侯爵家の屋敷から出す為にモンデール男爵に協力して貰っていたのだと告げると、私なんかの為にと、感謝して涙を零した。
セレリアがモンデール男爵に嫁いでも良いかと尋ねれば、あんな優しい方に私なんかが、モンデール男爵様にご迷惑にならないでしょうか、と。もしも嫁ぐ事が出来るのなら、とても光栄です。と話していた。
それを聞いてシリウスはセレリアとモンデール男爵の婚約の話を進めようと思っていた。
男爵領で大切にされてのんびりとのびのび過ごせるのはセレリアにとって良い事なのではないかと考えていたのだが、そのすぐ後に騎士爵の娘の事を聞いて無理に進めない事に決めた。
シリウスとしても、セレリアの体調や様子を見ながらゆっくりと進めたいと思っていたのだ。
リンゼイは無意識にホッと息を吐いた。
「お前はまだ、一応マリアンヌ嬢と婚約中なんだ。軽はずみな事を言ったりしたりするなよ」
シリウスは甥の様子に苦笑すると厳しく顔を引き締めて釘を刺した。
リンゼイはハッと顔を上げると
「わかっています。今日はもう城に帰ります。失礼しました」
大公夫妻とレイナルドに挨拶すると従者と共に帰っていった。
サロンに残った三人は慌てて帰っていったリンゼイの様子に笑った。
「今日は、って言って帰っていったな。また来るつもりなんだな」
「無意識なんでしょうけれどねぇ」
レイナルドと大公夫人が顔を合わせて笑い合うとシリウスはフゥっと溜め息を吐いた。
「あいつも王宮も、これから暫らくは大変だろうがな」
もし、婚約の打診の時にスカーレット侯爵夫妻が虚偽を申さなければ、いや、セレリアが産まれた時からきちんとしていれば、今頃こんな大きな問題がなかったかもしれなかったのに、とスカーレット侯爵家への怒りがさらに蘇る。
王家ももっとしっかり調査するべきだった、と今更もう遅いと、後悔するのだった
社交界で不評だといっても、実際本人に会って話せば悪い人物でないことはすぐにわかる。
娘から話を聞いた騎士爵も礼を述べる為に追いかけ、宿に宿泊していたモンデール男爵と話した事で人柄に惚れたようだった。
直ぐに騎士団の団長を通して婚約の申し入れを願っているという。
「その娘もセレリアと歳頃は似たようなものだが、一応侯爵家出身のセレリアよりも騎士爵の娘の方が気楽に受け入れ易いだろう」
それに、モンデール男爵はセレリアが嫁げばそれはそれは大切にしてくれるだろうが、やはり辺境の男爵領には、健康的で生活力に満ち溢れている娘の方が良いかもしれないとシリウスも考えたようだ。
「時間もなかったが、ベラベラと自分の事を話す奴ではないからそんな出来事があったとはなぁ。久しぶりに王都に出てきて人助けだけして帰っていくとは、彼らしいよ」
シリウスは可笑しそうに笑う。
学園に通っていた頃からモンデール男爵は人の良い男だった。寡黙な性格と厳つく見える容姿から令嬢達からは敬遠されてはいたが、シリウスや一部の子息達とは親しくしていたのだ。
王弟とあってシリウスの周囲には媚びを売る令嬢も多くいたことから、あまり女性の騒がしい事を好まないモンデール男爵は人前でシリウス達と連まなかった。
学園を卒業してからも、モンデール男爵は領地に戻りシリウス達と親しくしている事をいちいち口にする事もなく、シリウス達からも口にされる事を望まなかった。人脈をひけらかさない性格もシリウスは気にいっている。
そんな男爵に惚れた娘も見る目があると思った。
ちなみにセレリアにもモンデール男爵について聞いてみた事がある。
『とても、とても優しい素敵な方でした。こんな私に気を遣ってくださって、疲れないようにとクッションまでひいてくださったのです』
実はスカーレット侯爵家の屋敷から出す為にモンデール男爵に協力して貰っていたのだと告げると、私なんかの為にと、感謝して涙を零した。
セレリアがモンデール男爵に嫁いでも良いかと尋ねれば、あんな優しい方に私なんかが、モンデール男爵様にご迷惑にならないでしょうか、と。もしも嫁ぐ事が出来るのなら、とても光栄です。と話していた。
それを聞いてシリウスはセレリアとモンデール男爵の婚約の話を進めようと思っていた。
男爵領で大切にされてのんびりとのびのび過ごせるのはセレリアにとって良い事なのではないかと考えていたのだが、そのすぐ後に騎士爵の娘の事を聞いて無理に進めない事に決めた。
シリウスとしても、セレリアの体調や様子を見ながらゆっくりと進めたいと思っていたのだ。
リンゼイは無意識にホッと息を吐いた。
「お前はまだ、一応マリアンヌ嬢と婚約中なんだ。軽はずみな事を言ったりしたりするなよ」
シリウスは甥の様子に苦笑すると厳しく顔を引き締めて釘を刺した。
リンゼイはハッと顔を上げると
「わかっています。今日はもう城に帰ります。失礼しました」
大公夫妻とレイナルドに挨拶すると従者と共に帰っていった。
サロンに残った三人は慌てて帰っていったリンゼイの様子に笑った。
「今日は、って言って帰っていったな。また来るつもりなんだな」
「無意識なんでしょうけれどねぇ」
レイナルドと大公夫人が顔を合わせて笑い合うとシリウスはフゥっと溜め息を吐いた。
「あいつも王宮も、これから暫らくは大変だろうがな」
もし、婚約の打診の時にスカーレット侯爵夫妻が虚偽を申さなければ、いや、セレリアが産まれた時からきちんとしていれば、今頃こんな大きな問題がなかったかもしれなかったのに、とスカーレット侯爵家への怒りがさらに蘇る。
王家ももっとしっかり調査するべきだった、と今更もう遅いと、後悔するのだった
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