16 / 16
十六
しおりを挟む
王都に来ていた時に、使用人と共に外出していた騎士爵の娘が困っていたところにモンデール男爵が手を差し伸べて助けたらしく、誰も見て見ぬふりをする中で躊躇いもなく助けた男爵に娘が惚れたらしい。
社交界で不評だといっても、実際本人に会って話せば悪い人物でないことはすぐにわかる。
娘から話を聞いた騎士爵も礼を述べる為に追いかけ、宿に宿泊していたモンデール男爵と話した事で人柄に惚れたようだった。
直ぐに騎士団の団長を通して婚約の申し入れを願っているという。
「その娘もセレリアと歳頃は似たようなものだが、一応侯爵家出身のセレリアよりも騎士爵の娘の方が気楽に受け入れ易いだろう」
それに、モンデール男爵はセレリアが嫁げばそれはそれは大切にしてくれるだろうが、やはり辺境の男爵領には、健康的で生活力に満ち溢れている娘の方が良いかもしれないとシリウスも考えたようだ。
「時間もなかったが、ベラベラと自分の事を話す奴ではないからそんな出来事があったとはなぁ。久しぶりに王都に出てきて人助けだけして帰っていくとは、彼らしいよ」
シリウスは可笑しそうに笑う。
学園に通っていた頃からモンデール男爵は人の良い男だった。寡黙な性格と厳つく見える容姿から令嬢達からは敬遠されてはいたが、シリウスや一部の子息達とは親しくしていたのだ。
王弟とあってシリウスの周囲には媚びを売る令嬢も多くいたことから、あまり女性の騒がしい事を好まないモンデール男爵は人前でシリウス達と連まなかった。
学園を卒業してからも、モンデール男爵は領地に戻りシリウス達と親しくしている事をいちいち口にする事もなく、シリウス達からも口にされる事を望まなかった。人脈をひけらかさない性格もシリウスは気にいっている。
そんな男爵に惚れた娘も見る目があると思った。
ちなみにセレリアにもモンデール男爵について聞いてみた事がある。
『とても、とても優しい素敵な方でした。こんな私に気を遣ってくださって、疲れないようにとクッションまでひいてくださったのです』
実はスカーレット侯爵家の屋敷から出す為にモンデール男爵に協力して貰っていたのだと告げると、私なんかの為にと、感謝して涙を零した。
セレリアがモンデール男爵に嫁いでも良いかと尋ねれば、あんな優しい方に私なんかが、モンデール男爵様にご迷惑にならないでしょうか、と。もしも嫁ぐ事が出来るのなら、とても光栄です。と話していた。
それを聞いてシリウスはセレリアとモンデール男爵の婚約の話を進めようと思っていた。
男爵領で大切にされてのんびりとのびのび過ごせるのはセレリアにとって良い事なのではないかと考えていたのだが、そのすぐ後に騎士爵の娘の事を聞いて無理に進めない事に決めた。
シリウスとしても、セレリアの体調や様子を見ながらゆっくりと進めたいと思っていたのだ。
リンゼイは無意識にホッと息を吐いた。
「お前はまだ、一応マリアンヌ嬢と婚約中なんだ。軽はずみな事を言ったりしたりするなよ」
シリウスは甥の様子に苦笑すると厳しく顔を引き締めて釘を刺した。
リンゼイはハッと顔を上げると
「わかっています。今日はもう城に帰ります。失礼しました」
大公夫妻とレイナルドに挨拶すると従者と共に帰っていった。
サロンに残った三人は慌てて帰っていったリンゼイの様子に笑った。
「今日は、って言って帰っていったな。また来るつもりなんだな」
「無意識なんでしょうけれどねぇ」
レイナルドと大公夫人が顔を合わせて笑い合うとシリウスはフゥっと溜め息を吐いた。
「あいつも王宮も、これから暫らくは大変だろうがな」
もし、婚約の打診の時にスカーレット侯爵夫妻が虚偽を申さなければ、いや、セレリアが産まれた時からきちんとしていれば、今頃こんな大きな問題がなかったかもしれなかったのに、とスカーレット侯爵家への怒りがさらに蘇る。
王家ももっとしっかり調査するべきだった、と今更もう遅いと、後悔するのだった
社交界で不評だといっても、実際本人に会って話せば悪い人物でないことはすぐにわかる。
娘から話を聞いた騎士爵も礼を述べる為に追いかけ、宿に宿泊していたモンデール男爵と話した事で人柄に惚れたようだった。
直ぐに騎士団の団長を通して婚約の申し入れを願っているという。
「その娘もセレリアと歳頃は似たようなものだが、一応侯爵家出身のセレリアよりも騎士爵の娘の方が気楽に受け入れ易いだろう」
それに、モンデール男爵はセレリアが嫁げばそれはそれは大切にしてくれるだろうが、やはり辺境の男爵領には、健康的で生活力に満ち溢れている娘の方が良いかもしれないとシリウスも考えたようだ。
「時間もなかったが、ベラベラと自分の事を話す奴ではないからそんな出来事があったとはなぁ。久しぶりに王都に出てきて人助けだけして帰っていくとは、彼らしいよ」
シリウスは可笑しそうに笑う。
学園に通っていた頃からモンデール男爵は人の良い男だった。寡黙な性格と厳つく見える容姿から令嬢達からは敬遠されてはいたが、シリウスや一部の子息達とは親しくしていたのだ。
王弟とあってシリウスの周囲には媚びを売る令嬢も多くいたことから、あまり女性の騒がしい事を好まないモンデール男爵は人前でシリウス達と連まなかった。
学園を卒業してからも、モンデール男爵は領地に戻りシリウス達と親しくしている事をいちいち口にする事もなく、シリウス達からも口にされる事を望まなかった。人脈をひけらかさない性格もシリウスは気にいっている。
そんな男爵に惚れた娘も見る目があると思った。
ちなみにセレリアにもモンデール男爵について聞いてみた事がある。
『とても、とても優しい素敵な方でした。こんな私に気を遣ってくださって、疲れないようにとクッションまでひいてくださったのです』
実はスカーレット侯爵家の屋敷から出す為にモンデール男爵に協力して貰っていたのだと告げると、私なんかの為にと、感謝して涙を零した。
セレリアがモンデール男爵に嫁いでも良いかと尋ねれば、あんな優しい方に私なんかが、モンデール男爵様にご迷惑にならないでしょうか、と。もしも嫁ぐ事が出来るのなら、とても光栄です。と話していた。
それを聞いてシリウスはセレリアとモンデール男爵の婚約の話を進めようと思っていた。
男爵領で大切にされてのんびりとのびのび過ごせるのはセレリアにとって良い事なのではないかと考えていたのだが、そのすぐ後に騎士爵の娘の事を聞いて無理に進めない事に決めた。
シリウスとしても、セレリアの体調や様子を見ながらゆっくりと進めたいと思っていたのだ。
リンゼイは無意識にホッと息を吐いた。
「お前はまだ、一応マリアンヌ嬢と婚約中なんだ。軽はずみな事を言ったりしたりするなよ」
シリウスは甥の様子に苦笑すると厳しく顔を引き締めて釘を刺した。
リンゼイはハッと顔を上げると
「わかっています。今日はもう城に帰ります。失礼しました」
大公夫妻とレイナルドに挨拶すると従者と共に帰っていった。
サロンに残った三人は慌てて帰っていったリンゼイの様子に笑った。
「今日は、って言って帰っていったな。また来るつもりなんだな」
「無意識なんでしょうけれどねぇ」
レイナルドと大公夫人が顔を合わせて笑い合うとシリウスはフゥっと溜め息を吐いた。
「あいつも王宮も、これから暫らくは大変だろうがな」
もし、婚約の打診の時にスカーレット侯爵夫妻が虚偽を申さなければ、いや、セレリアが産まれた時からきちんとしていれば、今頃こんな大きな問題がなかったかもしれなかったのに、とスカーレット侯爵家への怒りがさらに蘇る。
王家ももっとしっかり調査するべきだった、と今更もう遅いと、後悔するのだった
153
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(14件)
あなたにおすすめの小説
エミリーと精霊
朝山みどり
恋愛
誰もが精霊と契約する国。エミリーの八歳の誕生日にやって来たのは、おもちゃのようなトカゲだった。
名門侯爵家の娘としてありえない恥。家族はエミリーをそう扱った。だからエミリーは居場所を得るために頑張った。役に立とうとした。
【完結】妹に婚約者まであげちゃったけれど、あげられないものもあるのです
ムキムキゴリラ
恋愛
主人公はアナスタシア。妹のキャシーにほしいとせがまれたら、何でも断らずにあげてきた結果、婚約者まであげちゃった。
「まあ、魔術の研究やりたかったから、別にいいんだけれどね」
それから、早三年。アナスタシアは魔術研究所で持ち前の才能を活かしながら働いていると、なんやかんやである騎士と交流を持つことに……。
誤字脱字等のお知らせをいただけると助かります。
感想もいただけると嬉しいです。
小説家になろうにも掲載しています。
【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます
ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」
「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」
シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。
全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。
しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。
アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
〈完結〉ここは私のお家です。出て行くのはそちらでしょう。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」マニュレット・マゴベイド男爵令嬢は、男爵家の婿である父から追い出される。
そもそも男爵の娘であった母の婿であった父は結婚後ほとんど寄りつかず、愛人のもとに行っており、マニュレットと同じ歳のアリシアという娘を儲けていた。
母の死後、屋根裏部屋に住まわされ、使用人の暮らしを余儀なくされていたマニュレット。
アリシアの社交界デビューのためのドレスの仕上げで起こった事故をきっかけに、責任を押しつけられ、ついに父親から家を追い出される。
だがそれが、この「館」を母親から受け継いだマニュレットの反逆のはじまりだった。
妹は病弱アピールで全てを奪い去っていく
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢マチルダには妹がいる。
妹のビヨネッタは幼い頃に病気で何度か生死の境を彷徨った事実がある。
そのために両親は過保護になりビヨネッタばかり可愛がった。
それは成長した今も変わらない。
今はもう健康なくせに病弱アピールで周囲を思い通り操るビヨネッタ。
その魔の手はマチルダに求婚したレオポルドにまで伸びていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
えええ〜とても素敵なお話なので、続き読みたいです。
しばらく更新されてないんですね。が〜ん😱
セレリアを幸せにしてあげてください。王太子もね。ぜひお願いします。
続きが見たい〜。見たいです。
短編でこれから…というところで更新止まったまま
続きは読めないの?