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  シストラ王国に戻ったエルバルトは、四人を談話室に集めた

  「エルバルト様お帰りなさいませ。王太子殿下はお変わりありませんでしたでしょうか」

  「ああ、何も変わりなかった。早く会いたがっていたよ」

  王太子と同じく開口一番のセレスティアの言葉にエルバルトは苦笑する
  毎日のように影から集まってきている報告書をそれぞれ手にしながら世間話のように気軽に会話を交わしているが、内容はこの国が辿るであろう事で決して軽微な内容ではないのだ
  窓際で外を眺めるエルバルトにリドウィンが声を掛ける

  「このまま、予定通りという事でよろしいのですね」

  「ああ、概ね予定通りだ。少し当初の予定とは違う所もあるが」

  「リーザロッテ嬢と、リドウィン公爵家ですね」

 エルバルトは ゆっくりと頷いた

  「兄上が計らってくれる。ライディン王国から魔術師と騎士、外務大臣が公爵領に派遣される予定だ」

  「リンドル公爵閣下は外交を担当されていますから、外務大臣とは顔繋ぎされているでしょうしね」

  「ああ、領地や領民に害が及ばないように取り計らう手筈の交渉をする事になるだろう。今は全員領地に戻っている辺境伯領にも行く予定にしている」

  リンドル公爵領は海に面しておりシストラ王国最大の港があり、貿易の要となっている、リンドル公爵が外交を担っているのもこの為だ
  王家がリチャード王太子にリーザロッテを望んだ理由も、リンドル公爵家の莫大な貿易利益を享受出来る事にあった
  資金力と後ろ盾の力はこの国では最大であるのだ
  アレの影響で学園の生徒達はリーザロッテを軽んじているが

  「まあ、アレのせいで皆色々と大事な事を忘れているようだがな 」

  「後二週間で終わりますね」

  「なあ、本当に絶対二週間後の夜会で事を起こすんだろうな?」

  ルイが口を挟んだ
  エルバルトが報告書を手に部屋の中央までくるとソファーに優雅に腰を下ろして

  「それは間違いない。聖女様は、派手な場所で派手に事を起こすのがお好みのようだからな」

  人目に付かないと目立てないだろう?と笑みを浮かべる
  
  「リーザロッテ様の長年の努力と苦労を無にさせてしまうのは心苦しいですわね」

  国は違えども、セレスティアも王太子の婚約者となってから受けてきた妃教育の大変さは分かるだけに、それを無にするような仕打ちに心を痛めていた
  それもその原因があのような品も教養もない令嬢のせいだと思うと腹立たしくて仕方がない

  「無にさせるつもりはないよ」

  エルバルトの呟きがぽつりと零れた
  
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