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  「やっぱり来たな」

  「予想通りでしたね」

  「今までの国であった事を聞いていれば、リーザロッテ嬢をそのままにしておくとは考えられなかったからな」

  「アレは余程、王子の元婚約者を不幸にしないと気が済まないようですね」

  「悪役令嬢、は破滅しないといけないの。と今までのアレが全員言っているらしいからな」
  
  「悪役令嬢ねぇ」

  王太子と話しているエルバルトが苦笑する

  「アレが善で、王子の婚約者は悪、っていう決まりらしいね」

  そう言った王太子が堪えきれずに吹き出すと二人は声を出して笑った

  「まあ、あの国のこれからが見ものだよ。あれだけの前例が各国で起こっているのにも関わらず全く対策を考えていなかったんだからね」

  王太子は基本的には穏やかな温厚な人物であるが、一方で愚かな者や利のないものに対しては容赦なく切り捨てる面がある
  今、リドウィンとルイが大臣を伴ってリンドル公爵領と辺境伯領に出向いて今後の話し合いを持っているが、エルバルトがリーザロッテを気に入って婚約者として迎えていなければ、とっくに放置して高みの見物をしていただろう

  アレの存在が各国に現れ始めた頃、他国の者達は不思議に思った
  アレは可愛らしい容姿をしているが、特に傾国と呼ばれる程のものでもない
  アレ程度の容姿であれば、余程貴族の令嬢の方が優れた容姿を持っている
  人格も質も、はっきり言えば悪いといえた
  だからライディン王国に相談が持ち込まれたのだ
  そしてライディン王国の魔術師達が各国に出向いてアレと対面する事によって、魅了、の存在が明らかになった
  それが明らかになれば各国で起こった現象に説明がついた
  ライディン王国の者達には魅了が効かない、が、他国の者達は魅了されてしまう
  それを防ぐ為に魅了を防ぐ魔石を作り出し各国に輸出した
  シストラ王国はそれをしなかった国であった
  だから、エルバルト達が留学と称して視察に行ったのだ
  結果は、ご存知の通りだ
  ライディン王国は、求められない限りは手を差し伸べない、内政干渉するつもりはないからだ

  だから、リンドル公爵領と辺境伯領に置いても、リドウィン達との話し合い次第、という事になるだろう

  リーザロッテの為には、エルバルトが思い描いている結果になる事を願っている

  エルバルトは王太子の執務室を後にすると、リーザロッテとゆっくりお茶をしようと、リーザロッテの部屋に向かった
  
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