上 下
31 / 46

29

しおりを挟む
  リーザロッテの部屋を訪問しようとしているエルバルトに、リーザロッテはセレスティア達と庭園でお茶をしていると報告があった

  庭園に急ぐとリーザロッテが穏やかに微笑んでいるのが見えた
  エルバルトにも自然に笑みが浮かぶ


  「リーザロッテ様が、エルバルト様の婚約を受けてくださって、本当に良かったですわ」
  
  アイリスがそう話し掛けると

  「不安はございませんか?」

  リチャードからの酷い扱いや婚約破棄を受けて傷ついているであろうリーザロッテを気遣ったセレスティアが優しく微笑みながら問い掛けるのがエルバルトの耳に入って立ち止まった
  
  「·····不安でなかったと言えば嘘になります。わたくしは·····婚約破棄をされた身ですし·····わたくしなんかがエルバルト様と婚約してもよろしいのかと·····。でも、エルバルト様が、わたくしがいいのだと仰ってくださって·····とても嬉しかったのですわ。わたくしはきっと、学園の中庭で言葉を交わした時に·····あの方に惹かれていたのだと、思うのです」

  頬を染めながら言葉を紡いたリーザロッテのその答えを聞いたセレスティアとアイリスは嬉しそうに微笑み、エルバルトは木の陰で真っ赤になって顔を片手で覆った

  「良かったなぁ、エルバルト」

  「·····っ兄上」

  声を掛けられてびくりと振り返ると、ニヤリと笑みを向ける王太子がいた
  エルバルトと同じ様にセレスティアが庭園にいると聞いてきたのだろう

  「リーザロッテ嬢を、幸せにしてやれ」

  そう言うと王太子はセレスティア達のいる庭園に歩き出した
  その後を追ってエルバルトもリーザロッテのもとに行くと、顔を染めたリーザロッテに迎えられ、今すぐに抱き締めて口付けたい衝動に駆られる

  「暴走はするなよ」

  満面の笑みを浮かべた王太子に制された

  侍女の入れた紅茶を飲みながらスイーツを摘み、和やかに楽しいお茶の時間が過ぎていった

  リーザロッテを部屋に送ると、暴走して怖がらせないように紳士的に、細い指先に口付けを落とし、また夕食後にと微笑んでエルバルトは公務に戻る

  ライディン王国のマナーや慣習、礼儀作法などをリーザロッテは学び始めてくれている
  元々幼少期より淑女としてしっかりと教育を施されている為に、所作は驚く程に美しく優雅であり、努力家であるリーザロッテはすぐにこの国の作法も習得するだろう

  もうすぐシストラ王国で別れた侍女達も到着し、リンドル公爵領に出向いているリドウィンとルイ達も戻ってくる
  一月後に、エルバルト達が留学から帰還した祝いと称した夜会が予定されている
  その夜会で、エルバルトとリーザロッテの婚約を発表するつもりだ

  贈るドレスを考えなければと、ウキウキしながら廊下を歩くエルバルトが目撃されていた
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄されたので、今日、旅に出ます。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

アンバー・カレッジ奇譚

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:0

呪われた第四学寮

ホラー / 完結 24h.ポイント:1,533pt お気に入り:0

パスコリの庭

BL / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:27

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:589pt お気に入り:348

1人の男と魔女3人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:369pt お気に入り:1

愛及屋烏

BL / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:5

処理中です...