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  婚約が正式に認められてからのエルバルトは以前以上に精力的に公務をこなしていた
  元より兄王太子の補佐として有能さを誇っていたが、リーザロッテという婚約者を得て磨きが掛かったようである
  その間を縫って、各々の婚約者へのドレスの相談を、王室御用達の仕立て屋を連日王宮に招いて進められていた
  実はその時間だけは、こっそりリドウィンも転移して参加している
 
  今回開かれる夜会は、表向きにはエルバルト達の留学帰還祝いとなっているが、王家主催の正式な夜会で、国中の貴族を招待した盛大なものである
  そこで、エルバルトの婚約者であるリーザロッテをお披露目して、婚約と寵愛を広く周知させる事が狙いだ

  夜会までの一月の間、表面上は穏やかに水面下では目まぐるしく時間が過ぎていった

  王子妃と成るべく、ライディン王国の教育を受けるリーザロッテ
  控えめながらも努力を厭わない凛とした姿勢は好ましく、女官や侍女達からも歓迎され、美しいリーザロッテは更に美しく磨き上げられている
  セレスティアは王妃教育は終了しているが、リーザロッテの王子妃教育に協力して、アイリスは魔法の研究を進め没頭していた

  その間も何度もシストラ王国からのリーザロッテを引き渡すようにとの使者が訪れていたが、追い返され、リンドル公爵領と辺境伯領がシストラ王国から独立する事を表明し、ライディン王国がバックアップする事になった

  帰還したリドウィンとルイの報告では、当主達家族及び領民がアレの影響を受けていない公爵領と辺境伯領は速やかに独立を宣言し、お互いに手を結ぶ事にしたらしい
  辺境伯の元には、令嬢との婚約を破棄するという書状が、マーノの家から一方的に送り付けられており、抗議に王都に向かおうとしていたところにルイ達が到着し、リンドル公爵家の現状を説明した上で今王都に入るのは危険だと警告した
  もしも辺境伯家の誰かが王都に入り、アレに影響されれば、令嬢に危険が及ぶと聞いた辺境伯当主は、娘を守るために王都には行かず、婚約破棄に同意することにした
  そして、リンドル公爵家と同様に娘の命と領民の事を考え、リンドル公爵と話し合いを持ち独立を決意したとの事であった

  一月後の夜会に合わせて、リンドル公爵領からは公爵夫人と嫡男が、辺境伯領からは辺境伯夫人と令嬢がライディン王国に来る事になっていた
  当主は、領地の安全を磐石にする為に早速仕事に掛かっているという

  この報せを受けた国王と王太子エルバルト、宰相や各大臣は、シストラ王国からの独立を表明した二つの領への支援を宣言したのだ

  エルバルトはリーザロッテを悲しませる事のない結果に安堵した

  が、何やらルイがソワソワしている様に感じるのが気に掛かる
  
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