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薄暗い室内で、月明かりにぼんやりと照らされたアイザックの寝顔を見つめていた。
「何でこんな事になってるのかなぁ」
意識が飛ぶまで私を責めていたアイザックは満足そうに穏やかな顔で眠っている。
寮に入って以来、二日と空けずに私の部屋に押し掛けてきてはこうして私のベッドに朝までいるのだ。
別にアイザックの事を嫌っているわけではないし、今のように愛情?欲情?のようなものを向けられているのも嫌ではない。この国の緩さも含めて乱れている、とは思っているが。
乙女ゲームの世界で結末を知っていた私にとっては、不思議であると思っているだけである。
あの日、この世界を乙女ゲームの世界と認識した時から、侯爵令嬢としては恥ずかしくないマナーや教養は身に付けるべく努力してきたが、ああなる私の未来には必要ないと思った国の知識や常識などを疎かにしていたせいで、そういう知識に疎かった為に、図書室に通い詰めて国の法律やらなにかについて記されている本を読み漁った。
恐ろしい事実を沢山知ってしまった。
この国では性に関する事が本当に緩いのだ。
貴族の子息は、精通が訪れると閨教育が施される。実践付きで。
国の公認でその為の娼館が存在している。
その娼館の娼婦達は高給で待遇も、平民で王宮の侍女にはなれないが、それと同様の厳しい教育を受けて認められた者達にしか務められないらしい。そしてマナーは勿論の事性技も一流。
国の公認·····恐ろしい·····
当然その他にも娼館はいくつも存在していて、高級な店から格安な店まで色々あるみたいだ。
ちなみに、ゲームで悪役令嬢が売り飛ばされた娼館は、特殊な癖などや劣悪な客しか来ないような、娼館の中では最下層の店だったようだ。
最下層の店に売り飛ばすとは、ゲームの中の王子様酷い·····
と言っても、私的にはやっぱり拷問よりはマシだと思うけどね。
まあ他にも色々読み漁ってみれば、この国の貞操観念の緩さが分かる。王太子や王太子妃、かつては国王や王妃達もこの寮に入っていて、学園時代は自由にお楽しみだったみたいだし。
他にも学園の噂などを聞いて知った情報もあった。
毎週のようにどこかのお屋敷で仮面舞踏会などの夜会が開かれていて、子息などはデビュー前でも暗黙の了解で参加しているらしい。
当然一夜限りのお楽しみとしてあちらこちらで色んな相手と致しているのだとか。
デビュー後は令嬢達の参加も多くあるみたいだし。
婚約者のいない子息子女は学園でも自由にしている。
吃驚する事だらけだけど、一番吃驚しているのは、ゲーム内の悪役令嬢の一途さかもしれない。学園に通ううちからみんな自由に致しているのに、悪役令嬢はあの時まで処女だったんだもんね。
にしても、こんなに自由にできていても、王子様は悪役令嬢には一切手を出す気もないくらいに嫌っていたんだなぁ。
などと思えば、隣で眠るアイザックが不思議に思ってしまうのだ。
モゾりとアイザックの腕を抜けると上体を起こして、ジッと視線を向ける。
その私の視線を感じたのか、アイザックが身動ぎすると薄目を開いた。
「·····ジュリエッタ、眠れないのか」
寝起きの声で吐息混じりに発せられる声が色っぽい。
「いえ、喉が乾いて目が覚めてしまいましたの」
ベッドの脇に用意されている果実水をグラスに注いで飲もうとすると、グラスを取り上げられた。
気だるげに上体を起こしたアイザックがグラスを傾けて口に果実水を含むと、唇が重ねられて、果実水を口に注がれた。
驚いて目を見開きながらも、コクリとそれを飲み込むと、そのまままた抱き込まれてベッドに横になる。
想像していた生活とは少し、いやかなり違うけどまあいいか、と思いながら再び朝まで眠る事にした。
デビュタントは、アイザックから送られた濃い青紫色のドレスで参加した。
デビューの令嬢が、ダーク色のドレスを纏うのは珍しいのだが、私の瞳の色だからとアイザックに押し切られた。
「鮮やかな深紅やブルーのドレスもジュリエッタには似合うが、このお前の瞳の色が、俺は好きなんだ」
そんな事を恥ずかしげもなく真剣に言われてしまえば、こちらの方が照れてしまう。
鮮やかな色とりどりのドレスの令嬢の中でダーク色を纏う私は、随分と人目を引いたが、隣にはシルバーの盛装に私のドレスと同色のアスコットタイをしたアイザックがいる為に、さらに人目を引き話題になってしまった。
ちなみに、ヒロインはゲームの中でデビュタントの時に着ていた淡いピンク色のふわふわしたドレスとは違って、クリーム色の可愛らしいけれども落ち着いたデザインのドレスを纏っていてとても似合っていた。
「何でこんな事になってるのかなぁ」
意識が飛ぶまで私を責めていたアイザックは満足そうに穏やかな顔で眠っている。
寮に入って以来、二日と空けずに私の部屋に押し掛けてきてはこうして私のベッドに朝までいるのだ。
別にアイザックの事を嫌っているわけではないし、今のように愛情?欲情?のようなものを向けられているのも嫌ではない。この国の緩さも含めて乱れている、とは思っているが。
乙女ゲームの世界で結末を知っていた私にとっては、不思議であると思っているだけである。
あの日、この世界を乙女ゲームの世界と認識した時から、侯爵令嬢としては恥ずかしくないマナーや教養は身に付けるべく努力してきたが、ああなる私の未来には必要ないと思った国の知識や常識などを疎かにしていたせいで、そういう知識に疎かった為に、図書室に通い詰めて国の法律やらなにかについて記されている本を読み漁った。
恐ろしい事実を沢山知ってしまった。
この国では性に関する事が本当に緩いのだ。
貴族の子息は、精通が訪れると閨教育が施される。実践付きで。
国の公認でその為の娼館が存在している。
その娼館の娼婦達は高給で待遇も、平民で王宮の侍女にはなれないが、それと同様の厳しい教育を受けて認められた者達にしか務められないらしい。そしてマナーは勿論の事性技も一流。
国の公認·····恐ろしい·····
当然その他にも娼館はいくつも存在していて、高級な店から格安な店まで色々あるみたいだ。
ちなみに、ゲームで悪役令嬢が売り飛ばされた娼館は、特殊な癖などや劣悪な客しか来ないような、娼館の中では最下層の店だったようだ。
最下層の店に売り飛ばすとは、ゲームの中の王子様酷い·····
と言っても、私的にはやっぱり拷問よりはマシだと思うけどね。
まあ他にも色々読み漁ってみれば、この国の貞操観念の緩さが分かる。王太子や王太子妃、かつては国王や王妃達もこの寮に入っていて、学園時代は自由にお楽しみだったみたいだし。
他にも学園の噂などを聞いて知った情報もあった。
毎週のようにどこかのお屋敷で仮面舞踏会などの夜会が開かれていて、子息などはデビュー前でも暗黙の了解で参加しているらしい。
当然一夜限りのお楽しみとしてあちらこちらで色んな相手と致しているのだとか。
デビュー後は令嬢達の参加も多くあるみたいだし。
婚約者のいない子息子女は学園でも自由にしている。
吃驚する事だらけだけど、一番吃驚しているのは、ゲーム内の悪役令嬢の一途さかもしれない。学園に通ううちからみんな自由に致しているのに、悪役令嬢はあの時まで処女だったんだもんね。
にしても、こんなに自由にできていても、王子様は悪役令嬢には一切手を出す気もないくらいに嫌っていたんだなぁ。
などと思えば、隣で眠るアイザックが不思議に思ってしまうのだ。
モゾりとアイザックの腕を抜けると上体を起こして、ジッと視線を向ける。
その私の視線を感じたのか、アイザックが身動ぎすると薄目を開いた。
「·····ジュリエッタ、眠れないのか」
寝起きの声で吐息混じりに発せられる声が色っぽい。
「いえ、喉が乾いて目が覚めてしまいましたの」
ベッドの脇に用意されている果実水をグラスに注いで飲もうとすると、グラスを取り上げられた。
気だるげに上体を起こしたアイザックがグラスを傾けて口に果実水を含むと、唇が重ねられて、果実水を口に注がれた。
驚いて目を見開きながらも、コクリとそれを飲み込むと、そのまままた抱き込まれてベッドに横になる。
想像していた生活とは少し、いやかなり違うけどまあいいか、と思いながら再び朝まで眠る事にした。
デビュタントは、アイザックから送られた濃い青紫色のドレスで参加した。
デビューの令嬢が、ダーク色のドレスを纏うのは珍しいのだが、私の瞳の色だからとアイザックに押し切られた。
「鮮やかな深紅やブルーのドレスもジュリエッタには似合うが、このお前の瞳の色が、俺は好きなんだ」
そんな事を恥ずかしげもなく真剣に言われてしまえば、こちらの方が照れてしまう。
鮮やかな色とりどりのドレスの令嬢の中でダーク色を纏う私は、随分と人目を引いたが、隣にはシルバーの盛装に私のドレスと同色のアスコットタイをしたアイザックがいる為に、さらに人目を引き話題になってしまった。
ちなみに、ヒロインはゲームの中でデビュタントの時に着ていた淡いピンク色のふわふわしたドレスとは違って、クリーム色の可愛らしいけれども落ち着いたデザインのドレスを纏っていてとても似合っていた。
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