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完全形態の悪魔①

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シンゾーたちが暇を持て余していたその頃、黒い悪魔ウシュム・ガルは少しずつ魔力を蓄えていた。

産み落とされた黒い悪魔はまるで、世界の一部であることを拒むように湖の湖畔の中で、凛とそびえていた。

その表情は静かに復活の余韻を喜ぶぶような笑顔に見えた。

だが、その笑顔の裏は、凶暴さのみが存在した。


微かに脈を打ちウネる触手のような脚が少しずつ、少しづつ、シンゾーたちが気づかないほどに動き出していた。

漆黒の羽の一本、一本が生物たちの歪んだ表情であることは気付くことなく、漆黒の悪魔は凍てつく微笑を浮かべていた。

胴体部分は少し前までのゴツゴツとした瓦礫身体とはうってかわり、魔物と化した生物の皮膚で構築されていた。

巨大なその悪魔の姿は、湖の対岸の人間たちもすでに気付いているようだった。

街がざわめき始める。

ウシュム・ガルから放たれた魔力の閃光で真っ二つに破壊された屋敷の近くの人間たちはこの魔物がどれほどの脅威であり、この世界にとって悪夢であるのか気付いていたに違いない。

そう、その壮大に破壊された屋敷の主たる『勾玉の巫女』とシンゾーたち以外は・・・・・・。

未だに蒼白いキューブと紅き卵の傍観を続けるシンゾーたちは、そのウシュム・ガルの驚異に立ち向かわなければならないということに。

そして、そんなことはお構いなしに暇を持て余すシンゾーたちは、今は二人の古の魔術師の復活を呆然と眺めるしか方法ないということに、未だに気付いていないのかもしれない・・・。
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