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プロローグ
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冬至を過ぎた日差しでもこんなに暑いことがあるのだろうか。
地球の温暖化が叫ばれている現代で、オゾン層が破壊されつつあるという記事をよく見るがあながち嘘ではないのかもしれない。
風は相変わらず冬を感じさせるくらい冷たい風がこんな田舎町でも、ビルの隙間を抜けていく。
こんな仕事につくんじゃなかった。
と何度もくやみながらも、文句ひとつ言えず仕事をこなしていくのは、生真面目だと言われる生粋の日本人さゆえだろうか。
そうは言っても、最近はこの街にもなれて、日本を懐かしむことすらなくなってきている感覚が少しずつ自分の中の現代人的認識を感じさせられる。
それでもどこか日本人という感覚が国を出てからも抜けきれていない矛盾に苛まれながら日々を淘汰している。
中国の大都会、台湾といえども田舎は存在する。
田舎の港町は大して日本と代り映えしないが、やはり中華人民共和国という旧社会主義制度の制約の中で暮らしていることには変わりない。
日本ほど自由もなく、かつてイギリスの植民地化されていた頃ほど、縛りが存在する訳でもない。
台湾の中心街からかなり離れた田舎町の風景は、独特な雰囲気を醸し出している。
町並みに洋風の館と台湾の原住民が作ったような小屋が立ち並び、質素な生活の中に、異質な世界観が蔓延っている。
見るからに一般人とも原住民とも違う雰囲気の人間たちが街を闊歩している。
あからさまなくらいに着ている服から若者がするようなタトゥーをしていて、恰幅の良い日に焼けた強面の人間たち。
顔立ちからチャイニーズだけではなく、東南アジア系、白人系人間が田舎の街を歩き回る。
そんな街を見渡しながら、俺は一つの家にはいった。
普通の漁師民家に見える家の奥に入ると、強面の男が座っている。
強面の面でこちらを睨みつける。
そして、男はニヤッと笑った。
「久しぶりだな」
片言で喋る中国語の台湾訛りはまったくない。
容貌からも黒く焼いた肌の中東系の顔立ちがわかる。
見るからにマフィアというような顔立ちではあるが・・・
まあ、ちなみにこの男とは顔なじみだ。
「そんなことはないさ。ついこの間も来じゃないか」
「あぁ、フランチェスコが大負けして騒いでた日か。とはいっていも、1週間以上前の話じゃないか」
男は満面の笑みで、笑いかける。
だが、その目はいつも笑っていない。
そしてひとしきり話が終わり、ドルでチップを渡すと、男に地下の入り口に案内される。
その薄暗い地下の階段を歩いていくと、また扉が現れた。
木製のドアから漏れ出すのは、この港街とは似つかわしくないバイオリンの音色だった。
そして、ドアを開けると異世界かと思うような空間が広がっていた。
ルーレットをするもの。
ビリヤードをするもの。
スロット回しているもの。
ビンゴを楽しむもの。
その巨大な空間の目の前にあるバーカウンターは人だかりができていた。
そのバーのカウンターに近づき酒を頼んだ。
バーテンダーにビアを頼むとすぐに出てきた。
日本にいた頃は飲めなかった酒も今ではいくらでも飲めるようになっていた。
軽くビールに口をつけると隣の男が何か叫んでいる。そして、俺の顔を睨んだ。
その眼光は常人ではないことを確信させる。
サングラスに眺める俺の瞳と目が合うと、
男はニヤリと笑った。
「久しぶりじゃないか。なかなか顔を見せないからトンズラしたんじゃないかと思ったぜ」
白人の男は強面の似合わない顔で素敵な冗談をかました。
「久しぶりだな、フランチェスコ。今日の調子はどうなんだい」
この男が看守の男が言っていたフランチェスコ・ロマネスクだ。
名前は聖人そうな名前をしているが、まるっきり正反対の男だ。
「いつもどうり、上々さぁ」
そう言って笑う表情もまた、瞳の奥では笑っていなかった。
フランチェスコとバーのマスターを交えて会話をし、ビールを一杯飲み終え俺は席をたった。
「相変わらずもう帰るのか?そのいけ好かないイケメンヅラが真っ赤になるところを見たかったんだがな」
フランチェスコはまたもやくだらない冗談を笑わない瞳で呟いた。
「またなフランチェスコ。今日は負けないように幸運を祈ってるよ」
俺はそう言うとバーの席を立ち、来たときと同じ木製の薄汚れた扉へと歩いていった。
「ありがたいこと言うじゃねえか。だけど今日は酒代以外もうスッカラカンだ。それじゃあまたな、チン・リョオ」
ひとしきり話し終わると俺、
チン・リョオこと青柳 徹はその重い扉を開け、自分の部屋へ戻った。
ちなみに俺の職業は、ここ奴隷売買で有名な香港マフィア龙尾、ロンウェイのアジトにスパイとして潜入している、
FBIの捜査官だ。
地球の温暖化が叫ばれている現代で、オゾン層が破壊されつつあるという記事をよく見るがあながち嘘ではないのかもしれない。
風は相変わらず冬を感じさせるくらい冷たい風がこんな田舎町でも、ビルの隙間を抜けていく。
こんな仕事につくんじゃなかった。
と何度もくやみながらも、文句ひとつ言えず仕事をこなしていくのは、生真面目だと言われる生粋の日本人さゆえだろうか。
そうは言っても、最近はこの街にもなれて、日本を懐かしむことすらなくなってきている感覚が少しずつ自分の中の現代人的認識を感じさせられる。
それでもどこか日本人という感覚が国を出てからも抜けきれていない矛盾に苛まれながら日々を淘汰している。
中国の大都会、台湾といえども田舎は存在する。
田舎の港町は大して日本と代り映えしないが、やはり中華人民共和国という旧社会主義制度の制約の中で暮らしていることには変わりない。
日本ほど自由もなく、かつてイギリスの植民地化されていた頃ほど、縛りが存在する訳でもない。
台湾の中心街からかなり離れた田舎町の風景は、独特な雰囲気を醸し出している。
町並みに洋風の館と台湾の原住民が作ったような小屋が立ち並び、質素な生活の中に、異質な世界観が蔓延っている。
見るからに一般人とも原住民とも違う雰囲気の人間たちが街を闊歩している。
あからさまなくらいに着ている服から若者がするようなタトゥーをしていて、恰幅の良い日に焼けた強面の人間たち。
顔立ちからチャイニーズだけではなく、東南アジア系、白人系人間が田舎の街を歩き回る。
そんな街を見渡しながら、俺は一つの家にはいった。
普通の漁師民家に見える家の奥に入ると、強面の男が座っている。
強面の面でこちらを睨みつける。
そして、男はニヤッと笑った。
「久しぶりだな」
片言で喋る中国語の台湾訛りはまったくない。
容貌からも黒く焼いた肌の中東系の顔立ちがわかる。
見るからにマフィアというような顔立ちではあるが・・・
まあ、ちなみにこの男とは顔なじみだ。
「そんなことはないさ。ついこの間も来じゃないか」
「あぁ、フランチェスコが大負けして騒いでた日か。とはいっていも、1週間以上前の話じゃないか」
男は満面の笑みで、笑いかける。
だが、その目はいつも笑っていない。
そしてひとしきり話が終わり、ドルでチップを渡すと、男に地下の入り口に案内される。
その薄暗い地下の階段を歩いていくと、また扉が現れた。
木製のドアから漏れ出すのは、この港街とは似つかわしくないバイオリンの音色だった。
そして、ドアを開けると異世界かと思うような空間が広がっていた。
ルーレットをするもの。
ビリヤードをするもの。
スロット回しているもの。
ビンゴを楽しむもの。
その巨大な空間の目の前にあるバーカウンターは人だかりができていた。
そのバーのカウンターに近づき酒を頼んだ。
バーテンダーにビアを頼むとすぐに出てきた。
日本にいた頃は飲めなかった酒も今ではいくらでも飲めるようになっていた。
軽くビールに口をつけると隣の男が何か叫んでいる。そして、俺の顔を睨んだ。
その眼光は常人ではないことを確信させる。
サングラスに眺める俺の瞳と目が合うと、
男はニヤリと笑った。
「久しぶりじゃないか。なかなか顔を見せないからトンズラしたんじゃないかと思ったぜ」
白人の男は強面の似合わない顔で素敵な冗談をかました。
「久しぶりだな、フランチェスコ。今日の調子はどうなんだい」
この男が看守の男が言っていたフランチェスコ・ロマネスクだ。
名前は聖人そうな名前をしているが、まるっきり正反対の男だ。
「いつもどうり、上々さぁ」
そう言って笑う表情もまた、瞳の奥では笑っていなかった。
フランチェスコとバーのマスターを交えて会話をし、ビールを一杯飲み終え俺は席をたった。
「相変わらずもう帰るのか?そのいけ好かないイケメンヅラが真っ赤になるところを見たかったんだがな」
フランチェスコはまたもやくだらない冗談を笑わない瞳で呟いた。
「またなフランチェスコ。今日は負けないように幸運を祈ってるよ」
俺はそう言うとバーの席を立ち、来たときと同じ木製の薄汚れた扉へと歩いていった。
「ありがたいこと言うじゃねえか。だけど今日は酒代以外もうスッカラカンだ。それじゃあまたな、チン・リョオ」
ひとしきり話し終わると俺、
チン・リョオこと青柳 徹はその重い扉を開け、自分の部屋へ戻った。
ちなみに俺の職業は、ここ奴隷売買で有名な香港マフィア龙尾、ロンウェイのアジトにスパイとして潜入している、
FBIの捜査官だ。
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