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Scene0 プロローグ

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自分の書いた小説というのは、読んでいて心地いい。だってお気に入りのキャラに、イケメンで文句なしの恋のお相手が現れ、自分の望む通りの結末が用意されているのだから・・・

だけど、それはあくまでも作者側の視点。それが作者でも読者でもなく、非日常的世界の住人とでも言うべき・・演者側だったらどうだろう。

少なくとも私ならこう言うな。

『こんな小説クソ喰らえ。自分以外、善人ばっかりなら、こんな苦労しなかったのに・・・』


◇◇◇◇◇


狭山尚さやまなおは正真正銘の女性だ。“尚”なんて男か女か分からない名前で、おまけにベリーショートの髪に中性的な顔立ちで、初見で男性に間違われることも多かった。女性らしい髪型と裝いに憧れもあったが、似合わないのでとうに諦めていた。

その彼女が自分の趣味で書いていた小説に転生したと気付いた時、その胸にわずかに期待を抱いた。女性らしさを諦めた彼女に芽生えた淡い期待。

もしかして私は、『アリアナ・エルガド』に転生できたんじゃないかと・・

しかし人生そんなに甘くない。鏡を見て気付いた。自分が転生したのは、アリアナの協力者『ミーリエル・リンドン』であると・・
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