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Scene12 ホラーへご招待
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「ブランの様子はどうですか?」
「元気だよ。私より妹に懐いてね。アリアナにベッタリなんだよ。ノワールも元気かい?」
「はい!それはもう、元気すぎるくらいです。昨夜はベッドに潜り込んできて、可愛いいったらありませんよ」
「へぇ、君のベッドに潜り込むなんて、イケない子だね。ノワールは男の子かな?」
「え~、どうでしょうか」
昨日は見つけた子猫の話題で盛り上がるミーリエルとマーカス。
実は2匹ともオスかメスか分からなかった。まあ、さほど重要な問題でもないので、ミーリエルは気にしていない。
そんな2人が今いるのは、城の地下だった。4つ目の宝石を捜索中である。
城の中心でコンパスをかざすと、くるくると回り始めたのだ。それがすごい勢いで回るので困惑していたところ、マーカスがコンパスを立ててみることを提案した。するとコンパスの針は、下を向いて止まったのだ。素直に読み取れば、目的の物は床の下、すなわち地下にあるということになる。
そこで、ミーリエルはまずは城の地図を確認してみたが、それらしい場所は見つからない。しかし、マーカスは地図にない地下があると知っていた。
「マーカス様、ご存知でしたら、早速行きましょう!」
行く気満々のミーリエルに対し、マーカスは何を気にしているのか戸惑っているようにも見える。ミーリエルが不思議に思い聞くと、彼から逆に心配されてしまった。
「私は構わないが、リンドン嬢が大丈夫かなと思ってね。だって、地下には歴代国王の亡骸が眠っているからね」
(へっ?亡骸・・ってお墓があるってこと!?地下のお墓って、雰囲気満点。うわ~、気が乗らないなぁ。べっ、別にオバケとか信じてるわけじゃないよ。わけじゃないけど、何か嫌じゃない?)
そう心の中で叫ぶミーリエルにマーカスは、安心させるような笑顔を向けると、こう付け加えた。
「大丈夫だよ。ただの亡骸だ。不思議な噂があったとしても、それは誰かが作った作り話だよね。たぶんね」
「ゔっ、たぶんって・・」
慰めてるのか面白がってるのか分からないマーカスの言葉だったが、ここで宝探しを止めるわけにはいかない。やめればオバケより怖い未来が待っている。こうして嫌々ながらもミーリエルは、地下に潜ったのだ。
そして突き当りにやって来た2人の前にまたもや扉が現れる。今度は豪華な彫刻が掘られた豪華な扉で、この先に大事なものがあることを暗示しているようだ。
ミーリエルはゴクリと唾を飲み込むと、覚悟を決めてゆっくりと扉を押し開けた。
(あっ、あれ?意外に普通・・)
ミーリエルがそう安心したように、そこは何の変哲もない広い部屋だった。天井が高く広いだけのシンプルな空間が広がっている。もっと暗い空間でおどろおどろしい雰囲気を想像していたミーリエルは、拍子抜けした。
しかし部屋の中央にズラッと並んだ棺が、ここが墓だということを突きつける。
(やっぱり棺の中かな?でもさすがに中は覗けないよぉ。映画とかでは、棺の蓋がゆっくり開いて、中から手が・・・って、そう!あんな風に・・・)
そんなことを考えながら棺を見つめていると、本当に蓋がゆっくりとずれ始めた。そしてそこから白い腕が現れ、その手はミーリエルを指さした。
「ぎゃあああ!!」
思わず叫んだミーリエルは、咄嗟にマーカスにしがみつく。
(出たぁぁぁ!やっぱり出たぁ!まさかのホラー展開!!私が書いたのは、こんなのじゃな~い!)
ガタガタと震えるミーリエルをマーカスは、優しく抱きしめると耳元で囁く。
「大丈夫だよ。落ち着いて」
「なななっ、何が大丈夫ですか!?てててっ、手が!手が!」
パニックになっているミーリエルの頭を撫でつつ、マーカスは冷静に言う。
「ほら、落ち着いて。君を呼んでるよ」
マーカスの言うとおり棺から伸びた手は、ミーリエルを指したあと手招きしている。
「ひぃぃぃぃ!!無理!無理です!用があるなら、そっちから来なさいよぉ」
「いいの?こっちから行った方がいいと思うけど?でないと、向こうが歩いて来ると思うよ」
「あっ!!!来ないで!来ちゃダメ!マーカス様お願いします。行ってきてください」
「え~、だってご指名は、君だよ」
余裕の様子で、しかもミーリエルの慌てふためく様を楽しんでいるふしもあるマーカスに、ミーリエルは正直に打ち明ける。
「だって腰が抜けちゃって、立ってるのがやっと・・」
そう涙目になりつつ訴えるミーリエルを、苦笑したマーカスは徐ろに横抱きにする。そして躊躇なく棺に歩み寄った。抱えられたミーリエルは、マーカスの首にしっかり抱きついていた。恥ずかしさとかそんな恥じらいは、全部吹っ飛んでいた。
マーカスは、ミーリエルを抱えたまま棺の前に立つと、握られた棺の主の手が開かれる。そこには紫色の宝石が光っていた。
ミーリエルは目を閉じ、マーカスの首にしがみついており、宝石の存在に気づいていない。そんな彼女に、マーカスは苦笑すると、言った。
「リンドン嬢、見つけたよ。ほら、お礼を言おうか」
「はっ!?見つけたって、何代目かの王様ですよね?いることは分かってるんです!そんなことより、てっ、手の用件は何ですか?」
そんな怯えるミーリエルにマーカスは「いいから、ほら見てご覧よ」と促した。「大丈夫だよ。ほら」とまるで駄々をこねる子供をあやすように、マーカスはミーリエルの背中をポンポンとする。
それに文字通り背中を押されたミーリエルは、ギュッと瞑った瞳を開け、恐る恐る振り返り、紫の輝きを瞳に映した。すると、彼女の口から拍子抜けするほど自然と言葉が出ていた。
「あっ、ありがとう・・ございます」
4つ目の宝石を手に入れた瞬間だった。
「元気だよ。私より妹に懐いてね。アリアナにベッタリなんだよ。ノワールも元気かい?」
「はい!それはもう、元気すぎるくらいです。昨夜はベッドに潜り込んできて、可愛いいったらありませんよ」
「へぇ、君のベッドに潜り込むなんて、イケない子だね。ノワールは男の子かな?」
「え~、どうでしょうか」
昨日は見つけた子猫の話題で盛り上がるミーリエルとマーカス。
実は2匹ともオスかメスか分からなかった。まあ、さほど重要な問題でもないので、ミーリエルは気にしていない。
そんな2人が今いるのは、城の地下だった。4つ目の宝石を捜索中である。
城の中心でコンパスをかざすと、くるくると回り始めたのだ。それがすごい勢いで回るので困惑していたところ、マーカスがコンパスを立ててみることを提案した。するとコンパスの針は、下を向いて止まったのだ。素直に読み取れば、目的の物は床の下、すなわち地下にあるということになる。
そこで、ミーリエルはまずは城の地図を確認してみたが、それらしい場所は見つからない。しかし、マーカスは地図にない地下があると知っていた。
「マーカス様、ご存知でしたら、早速行きましょう!」
行く気満々のミーリエルに対し、マーカスは何を気にしているのか戸惑っているようにも見える。ミーリエルが不思議に思い聞くと、彼から逆に心配されてしまった。
「私は構わないが、リンドン嬢が大丈夫かなと思ってね。だって、地下には歴代国王の亡骸が眠っているからね」
(へっ?亡骸・・ってお墓があるってこと!?地下のお墓って、雰囲気満点。うわ~、気が乗らないなぁ。べっ、別にオバケとか信じてるわけじゃないよ。わけじゃないけど、何か嫌じゃない?)
そう心の中で叫ぶミーリエルにマーカスは、安心させるような笑顔を向けると、こう付け加えた。
「大丈夫だよ。ただの亡骸だ。不思議な噂があったとしても、それは誰かが作った作り話だよね。たぶんね」
「ゔっ、たぶんって・・」
慰めてるのか面白がってるのか分からないマーカスの言葉だったが、ここで宝探しを止めるわけにはいかない。やめればオバケより怖い未来が待っている。こうして嫌々ながらもミーリエルは、地下に潜ったのだ。
そして突き当りにやって来た2人の前にまたもや扉が現れる。今度は豪華な彫刻が掘られた豪華な扉で、この先に大事なものがあることを暗示しているようだ。
ミーリエルはゴクリと唾を飲み込むと、覚悟を決めてゆっくりと扉を押し開けた。
(あっ、あれ?意外に普通・・)
ミーリエルがそう安心したように、そこは何の変哲もない広い部屋だった。天井が高く広いだけのシンプルな空間が広がっている。もっと暗い空間でおどろおどろしい雰囲気を想像していたミーリエルは、拍子抜けした。
しかし部屋の中央にズラッと並んだ棺が、ここが墓だということを突きつける。
(やっぱり棺の中かな?でもさすがに中は覗けないよぉ。映画とかでは、棺の蓋がゆっくり開いて、中から手が・・・って、そう!あんな風に・・・)
そんなことを考えながら棺を見つめていると、本当に蓋がゆっくりとずれ始めた。そしてそこから白い腕が現れ、その手はミーリエルを指さした。
「ぎゃあああ!!」
思わず叫んだミーリエルは、咄嗟にマーカスにしがみつく。
(出たぁぁぁ!やっぱり出たぁ!まさかのホラー展開!!私が書いたのは、こんなのじゃな~い!)
ガタガタと震えるミーリエルをマーカスは、優しく抱きしめると耳元で囁く。
「大丈夫だよ。落ち着いて」
「なななっ、何が大丈夫ですか!?てててっ、手が!手が!」
パニックになっているミーリエルの頭を撫でつつ、マーカスは冷静に言う。
「ほら、落ち着いて。君を呼んでるよ」
マーカスの言うとおり棺から伸びた手は、ミーリエルを指したあと手招きしている。
「ひぃぃぃぃ!!無理!無理です!用があるなら、そっちから来なさいよぉ」
「いいの?こっちから行った方がいいと思うけど?でないと、向こうが歩いて来ると思うよ」
「あっ!!!来ないで!来ちゃダメ!マーカス様お願いします。行ってきてください」
「え~、だってご指名は、君だよ」
余裕の様子で、しかもミーリエルの慌てふためく様を楽しんでいるふしもあるマーカスに、ミーリエルは正直に打ち明ける。
「だって腰が抜けちゃって、立ってるのがやっと・・」
そう涙目になりつつ訴えるミーリエルを、苦笑したマーカスは徐ろに横抱きにする。そして躊躇なく棺に歩み寄った。抱えられたミーリエルは、マーカスの首にしっかり抱きついていた。恥ずかしさとかそんな恥じらいは、全部吹っ飛んでいた。
マーカスは、ミーリエルを抱えたまま棺の前に立つと、握られた棺の主の手が開かれる。そこには紫色の宝石が光っていた。
ミーリエルは目を閉じ、マーカスの首にしがみついており、宝石の存在に気づいていない。そんな彼女に、マーカスは苦笑すると、言った。
「リンドン嬢、見つけたよ。ほら、お礼を言おうか」
「はっ!?見つけたって、何代目かの王様ですよね?いることは分かってるんです!そんなことより、てっ、手の用件は何ですか?」
そんな怯えるミーリエルにマーカスは「いいから、ほら見てご覧よ」と促した。「大丈夫だよ。ほら」とまるで駄々をこねる子供をあやすように、マーカスはミーリエルの背中をポンポンとする。
それに文字通り背中を押されたミーリエルは、ギュッと瞑った瞳を開け、恐る恐る振り返り、紫の輝きを瞳に映した。すると、彼女の口から拍子抜けするほど自然と言葉が出ていた。
「あっ、ありがとう・・ございます」
4つ目の宝石を手に入れた瞬間だった。
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