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第3章
第141話 リリス14歳 夢見の夜
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その夜、リリスは久しぶりに夢を見ていた。昨年、何度か夢に見た女の子がどこかの教室で語り合っている。どうやら以前と同じ本の話のようだ。
『ねえ、続編読んだ?』
『読んだ読んだ!もうナタリー最高!やっぱり生きてたじゃん!』
『本当に"おかえり!ナタリー!"って感じ』
『でもさぁ、まさか精霊味方にして戻ってくるとか欠片も思わなかったわー。斜め上を行き過ぎっ!』
『あー、確かに。精霊を手懐けるのはヒロインポジだよねぇ。まさか悪役令嬢のナタリーが精霊引き連れてアーサーの前に現れるとか反則』
『しっかしアーサーとヒロインの慌てっぷり笑ったわー。あれは完全にナタリーがこの世にいないと思い込んでたね。王子のくせに国外追放でやめときゃいいのに、調子こいて殺ろうとするから。みんなの前で暴露されて本当笑える。やられたらやり返す・・あれ、このセリフどっかで聞いたなー』
『あははっ!それドラマだって!それより、あんな女々しいヤツざまぁだよ。なぁにが王子だよ。王子なんてクソくらえ』
『アーサーフルボッコだなぁ。でもさー、結局ナタリーは国に戻らなかったね』
『あー、でもナタリーらしいじゃん。"冗談じゃないわ。こんな国、願い下げよ"って宣言した時はガッツポーズしちゃったもん』
『まあねー。ナタリー推しのあたし達には、大満足なラストだったよね。
あとはその後のナタリーはどこに行ったのかアーサーとヒロインはどうなったのか書いてあったら、良かった』
『ほら、そこは都合のいいように"ご想像におまかせします"じゃない?』
二人の女の子は互いに顔を見合わせ、声を上げて笑う。
『そうだなー、ナタリーなら・・・』
ここで目を覚ましたリリスは、天井をぼんやり見ている。
(また夢・・・あの子たちにまた会ってしまったわ。しばらく見なかったから、もう夢は終わったと思ってたのに・・話からすると、前の夢の続きよね・・・)
リリスは夢の中の会話を思い出す。
(フフッ。何かアーサー王子が酷い言われようだったけど、現実の殿下とは別物よね。あぁ、でも夢でも同じ名前の王子が酷い言われようだったと知ったら、落ち込みそうね。それより・・)
「・・精霊・・まさかね・・・」
リリスが思わず呟くと、枕元で寝ていたネージュが目を覚ました。その気配にリリスがネージュを見ると、ブルーの瞳をリリスに向け欠伸をしたあと毛づくろいを始めた。
「ごめん。起こしちゃったね」
そう口にして体を起こすと、ネージュのさわり心地の良い毛を撫でる。
(突然、聖獣に出会って今ではこうして一緒に寝てるんだから、精霊に出会っても不思議じゃないよね・・・
精霊か。えーっと、確か水の精霊ウンディーネと大地の精霊ノーム、それから風の精霊が・・シ・・シール・・・違う・・シルフだ!あとは炎の精霊が・・サ・・サ・・・あー、思い出せない)
「聖獣に精霊まで仲良くなっちゃったら、私怖いものなしかもね」
リリスは夜の闇が支配する部屋でネージュに話しかける。当のネージュは立ち上がると、向きを変えて丸くなり瞼を閉じる。どうやらまた眠るようだ。構わずにリリスは言葉を続けた。
「あっ、でも夢では国外追放された子が精霊を連れて復讐しに戻ったって言ってたよね。そもそも私追放なんてされてないし、さすがに関係ないか。
でもちょっと残念かも。精霊と出会えるなら、会ってみたいよね。ネージュも会ってみたいでしょう?もし出会って仲良くなってメイルも戻ってきたら、きっと楽しいよ・・・ふあー」
思わず欠伸をしたリリスは、眠い目を擦った。
「明日はメイルに会いに行くし、もっと寝ておかないとね・・・ネージュ、おやすみ」
寝付いたネージュには届かないセリフを言うと、リリスは再びベッドに横になった。
(どうせ見るなら、どうか楽しい夢が見られますように・・あっ、楽しい夢といえば、スタイラス様にあげたあの夢見のキャンディどうしたんだろう・・)
リリスは急に去年ことを思い出した。"楽しい夢が見られる"と言われてアルミーダから貰った夢見のキャンディのことを。三つのうち一つはお礼にとスタイラスにあげたのだが、彼は試さずに持っていた。
(彼は食べてなくて、資料室で先生に見せたのは覚えてる。それからスタイラス様食べたかなぁ・・うむむむ・・・ダメよ。気になったら、眠れなくなっちゃう。今度、彼に確認すれば、いいだけよ。いま考えたって、答えは出ないんだから)
リリスはそう自分に言い聞かせ、目を固く閉じ、眠りについた。彼女から寝息が聞こえてくるまで、まだしばらくかかる夜だった。
『ねえ、続編読んだ?』
『読んだ読んだ!もうナタリー最高!やっぱり生きてたじゃん!』
『本当に"おかえり!ナタリー!"って感じ』
『でもさぁ、まさか精霊味方にして戻ってくるとか欠片も思わなかったわー。斜め上を行き過ぎっ!』
『あー、確かに。精霊を手懐けるのはヒロインポジだよねぇ。まさか悪役令嬢のナタリーが精霊引き連れてアーサーの前に現れるとか反則』
『しっかしアーサーとヒロインの慌てっぷり笑ったわー。あれは完全にナタリーがこの世にいないと思い込んでたね。王子のくせに国外追放でやめときゃいいのに、調子こいて殺ろうとするから。みんなの前で暴露されて本当笑える。やられたらやり返す・・あれ、このセリフどっかで聞いたなー』
『あははっ!それドラマだって!それより、あんな女々しいヤツざまぁだよ。なぁにが王子だよ。王子なんてクソくらえ』
『アーサーフルボッコだなぁ。でもさー、結局ナタリーは国に戻らなかったね』
『あー、でもナタリーらしいじゃん。"冗談じゃないわ。こんな国、願い下げよ"って宣言した時はガッツポーズしちゃったもん』
『まあねー。ナタリー推しのあたし達には、大満足なラストだったよね。
あとはその後のナタリーはどこに行ったのかアーサーとヒロインはどうなったのか書いてあったら、良かった』
『ほら、そこは都合のいいように"ご想像におまかせします"じゃない?』
二人の女の子は互いに顔を見合わせ、声を上げて笑う。
『そうだなー、ナタリーなら・・・』
ここで目を覚ましたリリスは、天井をぼんやり見ている。
(また夢・・・あの子たちにまた会ってしまったわ。しばらく見なかったから、もう夢は終わったと思ってたのに・・話からすると、前の夢の続きよね・・・)
リリスは夢の中の会話を思い出す。
(フフッ。何かアーサー王子が酷い言われようだったけど、現実の殿下とは別物よね。あぁ、でも夢でも同じ名前の王子が酷い言われようだったと知ったら、落ち込みそうね。それより・・)
「・・精霊・・まさかね・・・」
リリスが思わず呟くと、枕元で寝ていたネージュが目を覚ました。その気配にリリスがネージュを見ると、ブルーの瞳をリリスに向け欠伸をしたあと毛づくろいを始めた。
「ごめん。起こしちゃったね」
そう口にして体を起こすと、ネージュのさわり心地の良い毛を撫でる。
(突然、聖獣に出会って今ではこうして一緒に寝てるんだから、精霊に出会っても不思議じゃないよね・・・
精霊か。えーっと、確か水の精霊ウンディーネと大地の精霊ノーム、それから風の精霊が・・シ・・シール・・・違う・・シルフだ!あとは炎の精霊が・・サ・・サ・・・あー、思い出せない)
「聖獣に精霊まで仲良くなっちゃったら、私怖いものなしかもね」
リリスは夜の闇が支配する部屋でネージュに話しかける。当のネージュは立ち上がると、向きを変えて丸くなり瞼を閉じる。どうやらまた眠るようだ。構わずにリリスは言葉を続けた。
「あっ、でも夢では国外追放された子が精霊を連れて復讐しに戻ったって言ってたよね。そもそも私追放なんてされてないし、さすがに関係ないか。
でもちょっと残念かも。精霊と出会えるなら、会ってみたいよね。ネージュも会ってみたいでしょう?もし出会って仲良くなってメイルも戻ってきたら、きっと楽しいよ・・・ふあー」
思わず欠伸をしたリリスは、眠い目を擦った。
「明日はメイルに会いに行くし、もっと寝ておかないとね・・・ネージュ、おやすみ」
寝付いたネージュには届かないセリフを言うと、リリスは再びベッドに横になった。
(どうせ見るなら、どうか楽しい夢が見られますように・・あっ、楽しい夢といえば、スタイラス様にあげたあの夢見のキャンディどうしたんだろう・・)
リリスは急に去年ことを思い出した。"楽しい夢が見られる"と言われてアルミーダから貰った夢見のキャンディのことを。三つのうち一つはお礼にとスタイラスにあげたのだが、彼は試さずに持っていた。
(彼は食べてなくて、資料室で先生に見せたのは覚えてる。それからスタイラス様食べたかなぁ・・うむむむ・・・ダメよ。気になったら、眠れなくなっちゃう。今度、彼に確認すれば、いいだけよ。いま考えたって、答えは出ないんだから)
リリスはそう自分に言い聞かせ、目を固く閉じ、眠りについた。彼女から寝息が聞こえてくるまで、まだしばらくかかる夜だった。
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