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アフターストーリー
アフターストーリー第2話 元悪役はやっぱり手の中で踊る
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お望みのキスを贈ったマリオンは、幸せそうなエルメの表情を満足そうに見つめ、彼女の頭に顎を乗せた。
「あの惚れ薬の時、何故この書類を私の目の前につきつけなかったのか不思議だったが、やっと分かったな」
「・・・」
(完全に忘れてたんだよね。この紙の存在を・・我ながらバカだと思うけど、でも・・・)
「君が忘れていたおかげで、私は命拾いしたわけだ」
頭上から降ってくるホッとした声にエルメが「命拾いなんて・・それに惚れ薬なんて、飲まなかったじゃない」反論する。そしてすぐ「あっ、ねえブローチは?」とさっきの本来の目的を思い出した。その言葉にマリオンは「あっ?あー・・・」とテンション低めで返す。
「ブローチ取るの忘れたの?」
「思わぬ隠しものを見つけたからな」
「忘れないうちに取って」
エルメのお願いを「もう少しこのまま居させろ」とやんわり拒否するマリオン。それにエルメは「ダメ。ほら、私、忘れっぽいから」と言葉と一緒に頭の上の頬にそっと触れた。そしてエルメの上からぬくもりが離れ、エルメの身体が浮き上がりソファーへと下ろされる。彼女の瞳にマリオンが渋々立ち上がり机の下に屈む姿が映った。
ブローチを手に戻ってきたマリオンが、エルメの前に跪くと、エルメは上半身を前に出した。マリオンは当然のように拾ったブローチを彼女の胸につける。
「普通はあんなところに隠さんぞ」
「だって、誰かに見つかったらダメなやつでしょ?だから絶対に見つからない所に隠したの。我ながら、いい隠し場所だと思うけど・・・マリオンが本来の目的忘れちゃうちゃうぐらいだしね。フフッ」
無事にエルメの胸にブローチが戻ってくると、マリオンはソファーに座り、横の細い腰を引き寄せる。ピタリと寄り添ったマリオンは、その翡翠色の瞳を愛しい彼女へ向けると「あんまリ私をからかうと、分かってるのだろうな?」と問い掛けた。それに「はい」と短く返したエルメは、ニッコリ微笑み目を閉じる。当たり前のように目を閉じ、そのふっくらとした唇を差し出す彼女にマリオンは目を片手で覆い、天を見上げた。
「あー、くそっ・・私をどうしたいのだ・・」
そう声にならない声で言ったマリオンの口の端が上がっているのは気のせいではない。
・・・・・・
しかしエルメは待ち望む贈り物が一向に降ってこないことに、その閉じた瞼をチラチラと開ける。ほんの数秒、そんな沈黙が流れると、マリオンの吹き出す声が聞こえた。
「クックッ・・・ハッハッ・・」
マリオンの反応でからかわれたことに気付いたエルメが、頬を膨らませジト目を向ける。
「もう・・からかって!マリオンなんて知らない」
「まあ、そう怒るな。以前、君からキス魔と言われたことを思い出してな・・・今では君も立派なキス魔だな」
「だって、大好きだもの。私がマリオンのこと大好きだって知ってるでしょ」
ここでマリオンは、赤く染めたエルメの頬をそっと手で包む。
「エルメ、君は“好き”とは言うが、“愛してる”とは、言わないよな?」
マリオンの言葉にエルメは恥かしそうに俯くと、小さな声で言う。
「・・だって・・なんかエッチィから・・・」
その声はマリオンの耳に僅かに届く。
「同じ意味だろ?」
そう言葉を投げかけるマリオンは、目を細めている。
「違うよ。だって・・」
『ベッドの中でいっぱい言わせるんだもん』というセリフが、エルメの口からは続かない。しかし、マリオンはその続かないセリフを察したように「ほぉ、なるほどな」と楽しげに言った。その声色に嫌な予感を感じたエルメが話題を変える。
「でもマリオンって、私の言った言葉をよく覚えてるよね?」
「私が君のことを忘れると思うのか?」
「・・・」
押し黙るエルメは、作戦が失敗したことを悟ると、自然と頬の色は増した。
「まあいい・・・今夜、嫌というほど言わせてやるからな。覚悟しておけ」
最後のダメ押しに赤くなっていたエルメは、頭から噴火した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
次話、アリスの出番です。
「あの惚れ薬の時、何故この書類を私の目の前につきつけなかったのか不思議だったが、やっと分かったな」
「・・・」
(完全に忘れてたんだよね。この紙の存在を・・我ながらバカだと思うけど、でも・・・)
「君が忘れていたおかげで、私は命拾いしたわけだ」
頭上から降ってくるホッとした声にエルメが「命拾いなんて・・それに惚れ薬なんて、飲まなかったじゃない」反論する。そしてすぐ「あっ、ねえブローチは?」とさっきの本来の目的を思い出した。その言葉にマリオンは「あっ?あー・・・」とテンション低めで返す。
「ブローチ取るの忘れたの?」
「思わぬ隠しものを見つけたからな」
「忘れないうちに取って」
エルメのお願いを「もう少しこのまま居させろ」とやんわり拒否するマリオン。それにエルメは「ダメ。ほら、私、忘れっぽいから」と言葉と一緒に頭の上の頬にそっと触れた。そしてエルメの上からぬくもりが離れ、エルメの身体が浮き上がりソファーへと下ろされる。彼女の瞳にマリオンが渋々立ち上がり机の下に屈む姿が映った。
ブローチを手に戻ってきたマリオンが、エルメの前に跪くと、エルメは上半身を前に出した。マリオンは当然のように拾ったブローチを彼女の胸につける。
「普通はあんなところに隠さんぞ」
「だって、誰かに見つかったらダメなやつでしょ?だから絶対に見つからない所に隠したの。我ながら、いい隠し場所だと思うけど・・・マリオンが本来の目的忘れちゃうちゃうぐらいだしね。フフッ」
無事にエルメの胸にブローチが戻ってくると、マリオンはソファーに座り、横の細い腰を引き寄せる。ピタリと寄り添ったマリオンは、その翡翠色の瞳を愛しい彼女へ向けると「あんまリ私をからかうと、分かってるのだろうな?」と問い掛けた。それに「はい」と短く返したエルメは、ニッコリ微笑み目を閉じる。当たり前のように目を閉じ、そのふっくらとした唇を差し出す彼女にマリオンは目を片手で覆い、天を見上げた。
「あー、くそっ・・私をどうしたいのだ・・」
そう声にならない声で言ったマリオンの口の端が上がっているのは気のせいではない。
・・・・・・
しかしエルメは待ち望む贈り物が一向に降ってこないことに、その閉じた瞼をチラチラと開ける。ほんの数秒、そんな沈黙が流れると、マリオンの吹き出す声が聞こえた。
「クックッ・・・ハッハッ・・」
マリオンの反応でからかわれたことに気付いたエルメが、頬を膨らませジト目を向ける。
「もう・・からかって!マリオンなんて知らない」
「まあ、そう怒るな。以前、君からキス魔と言われたことを思い出してな・・・今では君も立派なキス魔だな」
「だって、大好きだもの。私がマリオンのこと大好きだって知ってるでしょ」
ここでマリオンは、赤く染めたエルメの頬をそっと手で包む。
「エルメ、君は“好き”とは言うが、“愛してる”とは、言わないよな?」
マリオンの言葉にエルメは恥かしそうに俯くと、小さな声で言う。
「・・だって・・なんかエッチィから・・・」
その声はマリオンの耳に僅かに届く。
「同じ意味だろ?」
そう言葉を投げかけるマリオンは、目を細めている。
「違うよ。だって・・」
『ベッドの中でいっぱい言わせるんだもん』というセリフが、エルメの口からは続かない。しかし、マリオンはその続かないセリフを察したように「ほぉ、なるほどな」と楽しげに言った。その声色に嫌な予感を感じたエルメが話題を変える。
「でもマリオンって、私の言った言葉をよく覚えてるよね?」
「私が君のことを忘れると思うのか?」
「・・・」
押し黙るエルメは、作戦が失敗したことを悟ると、自然と頬の色は増した。
「まあいい・・・今夜、嫌というほど言わせてやるからな。覚悟しておけ」
最後のダメ押しに赤くなっていたエルメは、頭から噴火した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
次話、アリスの出番です。
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