メイドから母になりました 番外編

夕月 星夜

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青い彼と贈り物 おまけ(ロジ様へ)

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「リリー、買い物は楽しかった?」

 夜、居間で繕いものをしていたら、部屋に戻ったとばかり思っていたレオナール様が隣に腰掛けてそう訊ねてくる。

 「楽しかった、よ?」
 「カーディナルと一緒だから?」

 噎せた。危うく針を指に突き刺しそうになりながら盛大に咳き込んでいれば、レオナール様が背中をさすってくれるけど、あの、なんで知ってるの?

 「な、なんで」
 「アムドが、リリーの男友達と一緒に買い物だって教えてくれた。ちょっとモヤモヤした」
 「……誤解されたくなかったからアムドさんに伝えてもらって、なおかつミリスとアムドさんと一緒に行動したよ?」
 「ん。知ってる」

あれ、待って、その説明だと男友達がカーディナルってバレたのおかしいよね? アムドさん報告してないよね?
 首を傾げていたら、何故かレオナール様はそっぽを向いた。

 「でも、気になって。見に行ったら、カーディナルだった」
 「見に来たの?」
 「だって、友達だって言われても、向こうはリリーを好きかもしれないって」
 「それはまあ、そうだけど……そうじゃなくて、レオナールと一緒にお買い物したかったなぁと」

 確かに相手の気持ちまでは把握出来るはずないんだけど、見に来るくらいなら声かけてくれても……って、なんで顔赤くなったの?

 「……今日は、休憩中だったから。今度、一緒に行こう」
 「……うん!」

やった、レオナール様とお買いもの出来るの嬉しい。だって、それってデートだもんね。
 思わず頬を緩ませた私にレオナール様も微笑んでくれて……あ、そういえば。

 「どうしてカーディナルって気づいたの? 目の色とか?」
 「魔力が見えたから」
 「ああ、なるほど」

そっか、変装してても『見える』レオナール様には通用しなかったんだね。あれ、じゃあそのリスクを負ってでもカーディナルは私に会いたかったってこと?
そんなに贈り物したかったんだ……そっかぁ。

 「本当に、好きなんだなぁ」
 「ん?」
 「あのね、カーディナルは私に贈り物を買う相談をしたくて会いに来たんだって」
 「ふぅん、贈り物か……何を買ったの?」
 「お揃いのペンダントヘッドだったわ。レオナールはジェムシリカって知ってる?」

お嬢様のところで散々宝石は見て知っていたつもりだったけど、あの石ははじめて見たんだよね。
 淡く輝く、少し緑の入った半透明な美しい青の色。透き通った湖の青というか、晴れ渡った春の優しい空色というか、なんとも可憐な色合いの宝石だった。

 「珍しい石だよ。妖精の石とも呼ばれる癒しの力を秘めた石だ。それを買ったの?」
 「ええ、お相手の方の瞳がその色だからって。で、自分の瞳と同じ色のラピスラズリも買って、お互いの色を身に着けるって」

お互いの色を身に着けるなんてロマンチックだよね。私もレオナール様の瞳をイメージした金色のリボンを身に着けたりしたけどさ、そういうさりげないアピールって素敵だと思うの。
 少し照れたように、僕は創造の魔法が得意じゃないからって言いながら嬉しそうに二つを手にしていた姿を思い出す。大切そうに見つめる瞳はとても優しく愛おしそうで、見てるこっちまで幸せになっちゃいそうだった。
 思わずふふっと笑みをこぼしたら、そんな私にレオナール様が首を傾げる。あ、そういえば。

 「カーディナルに会ったことを黙って報告もしなかったことは、ごめんなさい」
 「大丈夫。むしろ、正式な報告はしないで」
 「あれ? カーディナルって追われてるんですよね?」
 「んー……そう、なんだけど。まあ、色々あるんだ。だから、気にしないで。でも、誰かとは一緒にいてね」
 「あ、うん。わかった」

 連絡しないでいいんだ。レオナール様が苦笑しつつ言葉を濁すなら当然聞くつもりはないけど、いつか理由を教えてもらえたらいいな。

 「それで、リリーも何か買ったの?」
 「ううん、カーディナルに付き合っただけだから。でも、アムドさんとミリスも楽しんでいたみたいだし、私も色々見れて楽しかったから満足だよ」
 「そう……じゃあ、今度出かける時に何か買おうか?」

 何かって、アクセサリーとか宝石のこと?
そもそも仕事の邪魔だから身に着けないし、もう腕輪も指輪も、舞踏会用のひとしきりのアクセサリーも贈っていただいたから充分なんだけど……そう言ったらしょんぼりしちゃうよね?
うーん……あ、そうだ。

 「……じゃあ」
 「ん?」
 「気に入ったのがあれば、だけど。レオナールとお揃いの、髪を結ぶリボンなら欲しいな」

 普段レオナール様が髪を結ばないのを知ってはいるんだけど、髪を結んだレオナール様も格好良くて好きなんだもの。それにほら、それくらいのお揃いならさりげないでしょう?

 「じゃ、今度リボン探しに行こう」
 「うん、楽しみにしてる」

ほのぼのとした空気が漂う。こんな風に、カーディナルと風の精霊さんも優しい幸せな時間を過ごしていたらいいな。
 少し照れたように微笑むレオナール様に、私も穏やかな笑顔で答えながら、そんなことを思っていた。
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