2 / 17
序章
1
しおりを挟む
あれは同窓会当日、夜十時くらいの出来事。
「隆博。電話ー!」
一階から母の声が響く。
「はぁ~い。今行くーっ!」
誰だろ?今頃。
などと思いつつ、階段を降りる。
「もしもし、お電話代わりました」
「あ、結城君。片桐だけど。こんばんは」
えっ?一瞬、心の中に動揺が生まれる。
「こんばんは」
「ごめんね。突然、電話しちゃって」
「いや、そんなことないけど」
だって、本当はすごく嬉しいんだもんね。
ホント久しぶりなんだよ。彼女から電話がかかってくるの。
「ほら、卒業式に撮った写真あるでしょ。あれね。手紙添えて送るから。楽しみに待ってて」
「あ、うん」
「じゃ、今日はもう遅いから」
「うん」
本当は話したいこといっぱいあったのに。もっともっと声聞きたかったのに。
「おやすみ」
「おやすみ」
カチャ。
希望は儚く散った。
でも、何だったんだろ?突然電話してきたりして。
「誰から?」
自分の部屋に戻ると、中学三年の同窓会帰りに寄った菊池が言った。
「え?あ~、ずっと前に話した一つ上の真由ちゃん」
一応親友と思っているだけあって、ほとんどすべてを話している(つもり……)。
相手は俺のことどう思っているのか知らないけれど。
「何だって?」
「卒業式に一緒に撮った写真、手紙添えて送ってくれるって」
「それだけ?」
「それだけ」
ふ~ん、っといった面もちで、何か言いたそうだけれど。
俺だって、突然電話がきたりして、何が何だか。
彼女の名前は、片桐真由紀。高校の一つ先輩で、別に部活が同じわけでもないし、登下校の電車が一緒なわけでもない。昨年の秋、英語のスピーチコンテストでたまたま知り合っただけなのだ。
最も、人の出逢いなんてものは、十の四六乗分の一位だとも言われているくらいだし。
もちろん、自分の性格から言っても、最初からペラペラ話せたわけではない。むしろ、スピーチコンテストが終わってからの方が話すようになった。
原因は、ワープロ。友人の誘いでワープロ検定を受けることになった俺は、ワープロ部の顧問に許可を取り、放課後ワープロ室へ通うようになった。
授業では決して使うことのないワープロ室。扱い方など知るわけもなく、ただただワープロと睨み合っていた。
彼女がワープロ部員だということは知っていた。ただただワープロと睨み合っている俺に見ていられなくなったのか、それからというもの、放課後ワープロ室へ行くたびに面倒をみてくれるようになった。
偶然、帰る方向も途中まで同じだったため、一緒に帰ることも少なくなかった。
なぜか妙に気が合った。音楽のこと、趣味のこと。
そして……
そんな彼女を見ているうちにだんだんと気持ちが揺らいでいった。
「隆博。電話ー!」
一階から母の声が響く。
「はぁ~い。今行くーっ!」
誰だろ?今頃。
などと思いつつ、階段を降りる。
「もしもし、お電話代わりました」
「あ、結城君。片桐だけど。こんばんは」
えっ?一瞬、心の中に動揺が生まれる。
「こんばんは」
「ごめんね。突然、電話しちゃって」
「いや、そんなことないけど」
だって、本当はすごく嬉しいんだもんね。
ホント久しぶりなんだよ。彼女から電話がかかってくるの。
「ほら、卒業式に撮った写真あるでしょ。あれね。手紙添えて送るから。楽しみに待ってて」
「あ、うん」
「じゃ、今日はもう遅いから」
「うん」
本当は話したいこといっぱいあったのに。もっともっと声聞きたかったのに。
「おやすみ」
「おやすみ」
カチャ。
希望は儚く散った。
でも、何だったんだろ?突然電話してきたりして。
「誰から?」
自分の部屋に戻ると、中学三年の同窓会帰りに寄った菊池が言った。
「え?あ~、ずっと前に話した一つ上の真由ちゃん」
一応親友と思っているだけあって、ほとんどすべてを話している(つもり……)。
相手は俺のことどう思っているのか知らないけれど。
「何だって?」
「卒業式に一緒に撮った写真、手紙添えて送ってくれるって」
「それだけ?」
「それだけ」
ふ~ん、っといった面もちで、何か言いたそうだけれど。
俺だって、突然電話がきたりして、何が何だか。
彼女の名前は、片桐真由紀。高校の一つ先輩で、別に部活が同じわけでもないし、登下校の電車が一緒なわけでもない。昨年の秋、英語のスピーチコンテストでたまたま知り合っただけなのだ。
最も、人の出逢いなんてものは、十の四六乗分の一位だとも言われているくらいだし。
もちろん、自分の性格から言っても、最初からペラペラ話せたわけではない。むしろ、スピーチコンテストが終わってからの方が話すようになった。
原因は、ワープロ。友人の誘いでワープロ検定を受けることになった俺は、ワープロ部の顧問に許可を取り、放課後ワープロ室へ通うようになった。
授業では決して使うことのないワープロ室。扱い方など知るわけもなく、ただただワープロと睨み合っていた。
彼女がワープロ部員だということは知っていた。ただただワープロと睨み合っている俺に見ていられなくなったのか、それからというもの、放課後ワープロ室へ行くたびに面倒をみてくれるようになった。
偶然、帰る方向も途中まで同じだったため、一緒に帰ることも少なくなかった。
なぜか妙に気が合った。音楽のこと、趣味のこと。
そして……
そんな彼女を見ているうちにだんだんと気持ちが揺らいでいった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た
しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。
学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。
彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。
そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる