44 / 55
第44話『休息』
しおりを挟むヴェルの安全運転でフェリスの居城まで戻ってきたユーカたち5人は、未だに委細を知らない兵士たちに快く迎えられた。
帰ってくるや否や、フェリスは部隊の隊長格を全員呼び集めて、事の次第を説明した。
大人しく聞いていた者もいたが、唸り声をあげて聞いていた者もいた。しかし、激昂するような者は誰ひとりおらず、第3軍団に所属するすべての兵士たちに対して、称賛を送る声がほとんどであった。
「第3軍団は再び私の指揮下に入る。皆も温かく迎えてやって欲しい。」
『はっ!』
全員が納得したかの判断はつかないが、表立った反対は出なかったので、フェリスはそこで解散とし、隊長たちに、しっかりと部下の管理をするように伝えた。
事の次第を伝えたのは隊長格の兵士たちだけであり、一般的な兵士たちは真実を知らずに、復帰した第3軍団を攻撃してしまう恐れがあり、それを阻止するために取った措置であった。
会議が終わったフェリスは、ひと足先に執務室へと戻っていたユーカとヴェルを食事に誘いに行った。
しかし、執務室の中にはソファーに横たわるふたつの物体があるだけだった。
ユーカとヴェルを、彼女たちが使っている部屋に運んでも良かったが、フェリスはそっと執務室の扉を閉めて外へ出ると、自室に毛布を取りに向かった。
両手で毛布を抱えて運んでいたので、目の前があまり良く見えずヨタヨタと歩きながら執務室へと戻ると、両手がふさがって扉を開けられない事に気がついた。
しばらく扉の前で悪戦苦闘していると、ファナがひょっこりと現れた。
「任せて下さぁい。」
ファナは第1軍団所属の近衛兵なので、フェリスの居住区画や城の深部を警邏している。
そんな彼女の言葉に甘え、フェリスは扉を開けてもらう事にした。
「ありがとう。」
ファナに礼を言って部屋の中へ入ると、どさりと云う音とともにヴェルがソファーから落下した。
フェリスは一度まとめてユーカの上に毛布をかぶせ、ヴェルをソファーの上に引き上げた。
ヴェルの引き上げ作業に力を入れていたので、ユーカが毛布の重みで苦しんでいる事に気がつかず、ユーカがうめき声をあげたところでようやく気がつき、毛布の重みから彼女を助け出す。
ユーカを押しつぶしていた毛布をヴェルの上に移動させたところで、フェリスもふらりと体勢を崩し、ヴェルの上にもふりと倒れ込んだ。
そのままいつの間にかフェリスも寝てしまい、彼女が起きるのは、翌日の陽が高く昇った頃であった。
「んなぁ…。」
ヴェルの寝返りで目を覚ましたフェリスは、肩から毛布がかかっているのに気がついた。
寝ぼけ眼を擦りながら顔を上げると、幸せそうに眠るヴェルの顔が目に入り、だるそうに後ろを振り向くと、ソファーに座って足を組むユーカと目が合った。
フェリスは自分で毛布を羽織って寝た覚えは無かったので、ユーカが被せてくれたものだと判断した。
その証拠にその毛布は、フェリスがユーカにかけた毛布と同じものであり、微かにユーカの残り香がした。
「あぁ…ありがとう。」
フェリスが礼を言うと、ユーカもフェリスに礼を言った。
「こっちこそ。毛布…かけてくれたのね。ごめんなさい。」
ユーカはいつの間にか寝てしまっていた事を詫びる。
敵の本拠地から戻ってきたとしても、その直後に警戒もせずに眠りこけてしまった事を、彼女は悔やんでいた。
「それ…何を読んでいるんだい?」
ユーカの顔に浮かんだ陰りを感じ取ったフェリスは、話題を変えようと試みて、ユーカが手に持っていた紙束を指し示す。
「あぁ…コレね。」
ユーカは持っていた紙束をローテーブルの上に放る様にして滑らせフェリスに見せた。
フェリスはローテーブルの上を滑ってきた紙束に目を通すと、眠気でぼやけていた視界が次第にクリアになって行くのを感じる。
「コレは…。」
「まぁ、手がかりが途絶えてしまったから、私たちは一度帝国に戻るわ。」
ユーカは右頬を右手の人差し指でぽりぽりと掻きながら、困った様な表情をして力なく笑った。
「私は何か…。」
力になれない?、と言いかけて、フェリスは自分の立場を思い出し、口を噤んだ。
ユーカはふふっと笑い、静かに目を閉じた。
それは、フェリスが第3軍団への処遇を告げるために、隊長格の兵士たちを読んで会議をしていた頃の事である。
ユーカとヴェルは、城に異変がないかを調べるために、ふたりで城内を歩き回っていた。
「のぉ、ユーカよ。」
「なぁに?」
ふたりは疲労感から、口数が少なくなっていたが、とりとめのない話は続けていた。
しかし、そんな空気をガラリと変えて、ヴェルが真面目な声音でユーカを呼んだので、ユーカも不思議に思って顔をヴェルの方に向けた。
「我は、フェリスはこのまま城に居った方が良いと思うのじゃ。」
「ええ、そうね。」
「むぅ…そこをなんとか。」
ユーカがあっさりと同意したことに気がつかず、ヴェルは頼み込もうとする。
「私も賛成よ。」
「む?良いのかや?」
ユーカがもう一度、ヴェルの意見に賛同を示したところで、ようやくヴェルも理解が及んだ。
「私も最初はフェリスを連れて行こうと思ったけれど…この状況じゃ、ね。」
ユーカはくるりと首を回して城内を見渡した。
「あの黒装束、一体何者なんじゃ。」
ヴェルもユーカを真似る様に、ぐるりと場内を見渡した。
「まぁ、そう云う訳だから、あなたの思い通りに行くとは思わない事ね。」
ユーカは適当な方向を睨みつけて、誰かに向けて言葉を放った。
その様子を、ヴェルは不思議な顔をして見ていたが、何かを言う事はなかった。
「次はどうするのじゃ?」
「とりあえずはクレアのところに報告ね。」
ヴェルの問いにユーカは間、髪を入れずに答えたが、その答えはとどのつまり、先の事がまったく決まっていないという事であった。
その後、見廻りを終えてフェリスの執務室へと戻ったふたりは、しらず知らずのうちに眠りに就いていた。
ユーカは窓から溢れる陽の光で眼を覚ますと、自分の身体に覚えのない毛布がかけてあるのに気がついた。
むくりと上半身を起こし、脳を始動させて記憶を辿ると、どうやらいつの間にか寝てしまっていた様だと判明した。
そして、左に首を曲げると、ソファーの上に横たわっているヴェルと、ヴェルを枕にする様にして力尽きているフェリスが目に入った。
ヴェルは毛布をかけていたが、フェリスはかけていなかった事から、自分に毛布をかけてくれたのはフェリスだと判断したユーカは、自分が使っていた毛布をフェリスにかける。
フェリスを引き上げる事も考えたが、自分の細腕を見た後にガックリと肩を落とし諦めた。
その後、フェリスが起きた事でユーカは作業を一時中断させて、見ていた書類をフェリスに貸して見せた。
「コレは…。」
その紙束に目線を落とすと、ユーカの字でキレイにまとめられていた資料が書いてある事が判った。
「まぁ、手がかりが途絶えてしまったから、私たちは一度帝国に戻るわ。」
資料から顔を上げたフェリスと目が合い、ユーカはお手上げだと言わんばかりに両手を挙げて首を振った。
「私は何か…。」
フェリスはユーカとヴェルの力になりたかったが、現状の魔王領を見ると、とても他の事に費やす余力など無かった。
ユーカは嬉しそうに笑い、瞳を静かに閉じた。
そして、数秒後に眼を開けると、フェリスに言い聞かせる様に言った。
「あなたは王。この領土を見捨てる事は私が許さない。」
ユーカの声音にこもった強い意志に気圧され、フェリスは素直に頷く事しかできなかった。
「わ、分かった。」
「それで良いのよ。後は私たちに任せて頂戴。」
ユーカは口を固く結んで、フェリスに笑顔を向けた。
「必ず、後から追いつくから!」
フェリスはユーカの笑顔を見つめ返し、やんわりとユーカに断られた助力を必ず果たすと伝えた。
「そう…。」
それを聞いたユーカは、フェリスのプロフィールに頑固と付け加えつつ、その好意を断る事は出来ずにいた。
「ぐぬぅ…。」
「おきた。」
ここぞとばかりのタイミングでヴェルがむくりと目を覚ましキョロキョロと辺りを見渡す。
最初にフェリスの背中が目に入り、次いでユーカの弱々しい笑顔が飛び込んできた。
しかし、ヴェルの優先順位はそれらとはまったく別の欲求に支配されていた。
「は…。」
『は?』
ヴェルが声の調子を確認しつつ、最初のひと文字を発音する。
それをユーカとフェリスは声を揃えてリピートした。
「腹が減ったのじゃーっ!」
叫んでも問題ないと確認を取ったヴェルは、迷わずに自分の本能のままに叫んだ。」
「あぁ、そういえば君たちはあの後、何をしていたんだい?」
ヴェルの様子から、城に帰って来た後に食事を摂っていない事を推測したフェリスは、自分が会議を開いていた時間のふたりの行動に疑問を感じた。
「食事は摂らなかったのじゃ!」
「そういえば…あなたを待とうと思ってたら寝ちゃったのよね。」
ヴェルは堂々と声を高くして叫び、ユーカは思い出した様にお腹に右手を当てる。
しかし、ふたりの応えは答えになっていなかったので、フェリスはむすっと唇を尖らせて不満を呈した。
「あなたの会議中でしょ。私とヴェルは城の見回りをしてたわ。」
特に隠す事でもないので、ユーカは昨日の行動をフェリスに教えた。
「それよりも飯じゃ!」
ヴェルは既に、意識のほとんどを食欲に持っていかれており、暴食の化身となっていた。
「そうだったんだね…。そこまで頭が回らなかったよ…ありがとう。」
フェリスも納得がいった様で、ユーカとヴェルに謝意を伝えた。
「ヴェルがそろそろ限界だから、ご飯にでもしましょう。」
「あっ!あぁ、そうだね…。」
思い出したように歯切れの悪い返事をしたフェリスを、ユーカは不思議に思ってこてんと首を傾けた。
フェリスは、会議が終わった後にユーカとヴェルを連れて食堂へ向かうつもりをしていたので、昨日の料理を担当してくれた料理人に申し訳ない気持ちでいっぱいになっていたのであった。
食事の風景は、それはそれは酷いものとなった。
料理人は次々と料理を完成させて持って来てはくれるのだが、それを上回るペースで暴食の化身が喰らい尽くす。
料理人も負けじと、料理を作りに作ったが、ヴェルの次元を超えた胃袋には敵わず、ひとりまたひとりと包丁を置いていった。
数十人前の料理を平らげたヴェルは、満足そうな顔で居眠りを始めた。
ヒト型でいる時よりも、ドラゴンに戻っている時の方がエネルギーを消費するらしく、ニャールタカ城まで往復した分のカロリーを補給するのはとても大変な事であった。
それに加えて、ユーカを担いで闇のモヤから逃げ回った際も、羽根やツノ、しっぽなどを顕現させていた為、普段よりも消費カロリーは多かった様だ。
「こんなのは初めてだわ。」
ユーカも初めての事だったので、戦闘に運搬と、ヴェルを酷使しすぎた事を反省した。
「ヴェルも頑固と云うか何と云うか…。」
フェリスも半ば呆れながら、ヴェルに心の中で感謝を伝えた。
ヴェルが寝てしまった事で、食事はひと段落つき、料理人たちはホッとした表情を見せていた。
ユーカはいろんな料理を少しずつ啄んでいたが、ヴェルの様にたくさん食べると云う事はなかった。
それでも、普段は小食なユーカも箸が止まる事なく動いていたので、それなりにエネルギーの消費は多かった様だ。
「ねぇユーカ…なぜ君はあの時、私の魔法にその先があると分かったの?」
フェリスはお茶をひと口含んで喉を潤すと、食事の手を休めているユーカに尋ねた。
「魔法にその先があると思った訳じゃなくて、『邪法』の性質上、可能だと思った事を言っただけよ。」
ユーカはナプキンで口を拭うときちんと椅子に座り直してから言った。
「『邪法』の…性質?」
フェリスは、ユーカの答えが更に難解なものだったので、それについて尋ねずにはいられなかった。
「そう。『魔法』にも可能な事と不可能な事があるのは解る?」
意外と知られている様で知らない人も多い事実を、ユーカはフェリスに問うた。
「えっと、空を翔んだり、遠くに移動したり…でしょ?」
フェリスも自分では『魔法』を使わないので、うろ覚えではあったが、一応は知識として知っていた。
「それもそう。後は…傷を治す魔法。」
「あっ…!」
雷に打たれた様な表情をして、フェリスは固まった。
ユーカとのファーストコンタクトは、彼女がヴェルの傷を治す為の薬を探していた時だった事を思い出した。
「思い出した?あなたはあの時、傷を治す秘技を使える、そう言ったのよ。」
「確かに…でも、たったそれだけで?」
「だけ、ではないけれど…それが一番大きかったかしら。」
「そっか…。私より『邪法』の事を理解してしまうなんて、やっぱりユーカはすごいなぁ。」
「確証がある訳ではなかったけど、あの状況だもの。」
ユーカは今だから言えるとばかりにぶっちゃける。
「期待に応えられて良かったよ。」
フェリスは笑えない冗談に顔を青く染めながら、ユーカのぶっ飛んだ考え方に改めて恐怖を感じた。
「まぁ、結果オーライよね。」
ユーカはコンポートに盛られた果物をひとつつまみあげて口に入れて、咀嚼する。
途端に酸っぱそうな顔をして、グラスに注がれたジュースを飲んだ。
「結局、あの力はいったい何だったの?」
闇のモヤを消し去る際に使った力は、いまだに実感が湧かず、フェリスもいつどう云う時にどうやって使えば良いのか解らないでいた。
「事象に干渉する。まぁ、言葉に纒めると簡単に見えてしまうけど、その実は難しいわよね。」
「そう云えば、『事象に干渉する』って言ってたね。」
「事象、つまりは起こしたアクションに対する結果。それを変える事が可能なはずよ。限度はあると思うけれどね。」
先程食べた酸っぱい果物は避けて、違う種類の果実をひょいと口に放り込んだ。
「それじゃあまるで…。」
「そう。だから、力の使い方を間違えないで。」
フェリスが何を言おうとしたか、ユーカは簡単に予測する事ができたので、先回りして言葉を紡いだ。
恐ろしい力を持ってしまった者。恐ろしい力を持つキッカケを与えてしまった者。
罪が重いのはどちらの方だろうか。業が深いのはどちらの方だろうか。
その答えが出ない事を、ユーカは願い、フェリスも望んだ。
ユーカたち5人が城に戻ってきたから1週間が経ち、第3軍団の面々がフェリスの居城に到着した。
フェリスの出した命令を破るものは誰ひとりとしておらず、第3軍団の兵士たちは何も言われずに帰還した。
唯一、問題に挙げるとするならば、第3軍団の団長が白い死装束に身を包み、魔王城の中庭でけじめをつけようとした事くらいなものであった。
その行為は第1軍団の団長によって阻止され、第5軍団の団長によって諭された。
ヴェルは食事を終えた後、2日ほどドラゴンの姿に戻ったまま眠りについていたが、3日目の朝に起きる事を思い出したように動き出した。
ユーカとフェリスは心配したが、特に異常は見られなかったので、ユーカとフェリスはほっと肩の荷を下ろした。
ユーカはその一週間を使って、魔王城にあるあらゆる書類を虱潰しに読み漁ったが、収穫は芳しくなかった。
フェリスは『邪法』の新たな力を試しながら、南部地域と地震の居城を行ったり来たりと忙しそうにしていた。
事象への干渉により、『魔法』では不可能な事も出来る様になったフェリスは、力に溺れる事なく、魔王としての責務を果たしていた。
各々が忙しく動き回っている中、珍しくフェリスの執務室にユーカたち3人が集まっていると、そこへ第3軍団の団長がやって来た。
「失礼します…。」
第1軍団に殴られた傷が今でも治っていないので、第3軍団の団長はとても痛々しい姿をしていた。
「む?痛そうじゃの。フェリスも治してやれば良いモノを。」
ヴェルは団長の傷と同じ場所を抑えて、痛いふりをする。
「何か用かな?」
フェリスは敢えてそこには触れずに、訪問の用件を尋ねた。
フェリスも傷を治す気はさらさら無かったし、団長も治して貰おうとは思っていないからである。
「フェリス様にお渡しする様に、と。」
団長は懐から一通の便箋を取り出して執務室の重厚なテーブルの上に置いた。
フェリスは執務室の奥に設置されているチェアーに座っていて、ユーカとヴェルはローテーブルに向かい合う様にしてソファーに座っていた。
「誰から?」
フェリスは差出人の名前すら書いていない便箋を手に取り、怪訝な声で聞いた。
「姉君様です。」
団長からもたらされた答えは意外では無かったが、驚きではあったらしい。
「そうか…。」
それだけを答えると、フェリスは慎重な顔をして封を破った。
第3軍団の団長はこれ以上は邪魔になると判断し、そのまま踵を返して執務室を退出しようとする。
しかし、思い出した様に懐から一冊のボロボロになった本を取り出すと、ユーカの方に向かって歩いて来て、それを渡した。
「それは貴女に。」
それだけを言うと、今度こそ団長は執務室を後にした。
「なんじゃ?」
ヴェルは不思議そうにその本を見つめ、ユーカはボロボロの本を慎重に開いた。
「レポート?」
ヴェルの興味はローテーブルの上に置かれた籠に盛られたお菓子の方にある様で、プイッとボロボロの本から目を背向けると、ユーカとフェリスが読み物をしている間に、とでも考えたのだろうか、お菓子に手を伸ばし始めた。
ユーカとフェリスは終始無言で文章を読み進めて行ったが、フェリスは途中から、感情の変化を隠せずにいた。
フェリスは途中で手紙を読む事を切り上げると、難しそうな顔をしてボロボロの本を読んでいるユーカと、フェリスの方を心配そうに見ているヴェルに声をかけた。
「ごめん…ユーカ、ヴェル、ちょっと胸貸してくれない?」
フェリスは椅子から立ち上がると、のそりのそりと弱々しい足取りでソファーの方までやって来る。
ヴェルはユーカが受け取った本を覗き込んだ際に、ユーカと同じソファーへと移っていたので、ふたりは移動しなかった。
ユーカは何も言わずに頷き、ヴェルは「仕方ないのぅ。」と呟いて快く胸を貸した。
ドスンと云う衝撃とともに、ユーカとヴェルの胸に飛び込んで来たフェリスは、ふたりの胸の中で苦しそうに声を押し殺して泣いた。
すっかり泣いた後、フェリスは泣き疲れて眠り込んでしまい、反対側のソファーにヴェルが運んだ。
「別れとは悲しいものじゃな。」
「そうね…。」
ヴェルはフェリスの泣き腫らした顔を服の袖で拭いてあげて、乱れた髪を丁寧に梳った。
ユーカはその後もボロボロの本を読み進め、そうして夜は更けていく。
しかし、陽が昇らない朝は無い。
すべての朝には陽が昇り、世界を明るく照らすものだから。
次回:第45話『手記』
お楽しみにお待ちください。
5月27日 21時を更新予定にしております。
感想や誤字脱字の指摘などなど
よろしければお願いし申し上げます。
後ほど加筆予定をしています。
よろしくお願いします。
5月21日 20:20頃、加筆作業が完了致しました。
これからもよろしくお願い致します。
申し訳ありませんが、
更新を5月28日21時に変更させて頂きます。
よろしくお願い致します。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――
銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」
世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。
魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。
彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。
一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。
構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。
彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。
「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」
暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。
管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。
これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。
※アルファポリスで先行で公開されます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる