~【まおうすくい】~

八咫烏

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第15話『捜索』

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ふたりがアマエラ大山脈に着き、最初に目にした光景は…やはり、山脈の光景だった。

「ねぇヴェル…その、ごめんなさい。」

「いや、気づかなかった我も悪かった…すまぬ。」

着いた瞬間、いや…アマエラ大山脈が目に入った時から、ふたりのテンションは最低で、なんとも言えない雰囲気が立ち込めていた。
なぜかというと…そう、アマエラ大山脈はほとんど木が生えていない、岩山だったからだ。

「これは…予想外だったわ。」

「うむ、大山脈だというだけで、勝手に木がたくさんあると思ってしまったの。」

「違うわヴェル、ここには竜の胃袋でできたカバンを探しに来たのよ。木なんて知らないわ!」

「そ、そうじゃな。木なんて我も知らぬ。ここへはカバンを取りにきただけじゃった。」

「じゃあさっそく、あなたの塒まで行きましょ。」

「うむ、ダンジョン内でモンスターに会うのも面倒じゃの。」

「あら…殺気をバンバン飛ばしたら寄ってこなかったわよ?賢い子たちで助かるわ。」

「ではその方法で行くかの。」

ふたりは、周りの空気までもが逃げださんばかりの殺気を放ちながら、ズンズンとダンジョンの中を進んで行く。
目指すは、ついこの間までヴェルが寝ていた、少し開けた洞窟の奥の方の先の方の端っこの方だ。

「そういえばっ…最初に入った時は、5時間も掛かったんだったわっ!」

「ユーカよ、我は疲れたぞ。小さくなるから、前みたいに運んではくれぬか。」

「放って行くわよ…。」

「そっ、そうじゃ!我は今、ヒト型になると死んでしまう病気なのじゃった!」

「そう、サヨウナラ。」

「ちょっ…待って、待って下さい!ごめんなさい。(全く、冗談の通じないやつめ…)」

「ヴェルぅ、魔法には、感情を読むものもあるのよぉ?」

「ひぃいーっ!ごごごごめんなさい!すいませんでしたっ!」

「まぁウソなんだけどね。謝るって事は、良からぬ事を考えていたってわけね。」

「もう我、何も喋らない…。」

「それにしても…長いわね。どうにかならないのかしら。」

「うむ、我はもう慣れてきた。ムシされる事に慣れてきたぞ!」

「何ひとりで喋ってるのよ、気味が悪いわよ。」

「そういえば…トライアドのばあさんはどうするのじゃ?」

「あぁそれね、ミルヴァーナ大森林へ行こうと思うわ。」

「ほぅ…今度こそ、木の生えてそうな名前の場所じゃな!」

「あら…どういう意味かしら?」

「いえ、何でもありません!ここにはカバンを取りにきただけで、古い大木を探しに来たわけではございませんっ!」

「よくできました。偉いわヴェル、干し肉あげちゃうんだから。」

「わ、わーい…うれしいなー。」

「あら?笑顔が引きつってるけど、何かあったの?」

「なんでも…ない、です。はい。」

「そう?まぁゆっくり行きましょう。」

ふたりはそれぞれ、赤い果実と干し肉をかじりながら、奥へ奥へと進んでいく。
さらに数時間歩き、ようやくヴェルがかつて眠っていた場所にたどり着いた。

「それで…そのカバンはどこにあるのかしら?」

「んー…地中?」

「地中?」

「だって…お主が埋めたではないか。」

「あぁ、あの時ね。とりあえず掘り起こしましょうか。」

「そうじゃな、チャチャっとやってしまおうぞ。」

こうして、地面を掘り続けること3時間余り。

「ふぅ…とりあえずは全部掘り起こしたわね。」

「なぁユーカよ、別に、全部を掘り起こす必要はなかったのではないか?それに、魔法を使えば…。」

「良いのよ、達成感ってものがあるでしょ?」

「なぁ、ならもう一度、我の顔を見て言ってはくれぬか?」

「うるさいわねっ!良いのよ、たまには体を動かしたいじゃない。」

「それじゃ探すとするかの。」

「私は疲れたわ。あとはお願いね、ヴェル。」

「なっ…なんじゃと!」

「あと、この紙にどういったモノがいくつあるか、まとめておいて頂戴。」

「えぇ…我そういうのニガテ。」

「あら?さっき干し肉食べたわよね?」

「うむぅ、理不尽じゃ…。」

「よろしくね。私はちょっと、この先を見てくるわ。」

「この先?はて…まだ続いておるのか?」

「えぇ、続いてると思うわ。それに…危険な香りもする。」

「それじゃ我も一緒に行こうではないか。」

「大丈夫よ。あなたはソッチを任せるわ。」

「ぐぬぬ…探検の方が楽しそうじゃ。」

「あーぁ。帰ったら、美味しいお肉を食べに行こうと思ったのに。」

「我、なんだか紙に文字を書きたいキブン!なんと、丁度良い!コッチは我に任せておけ。」

「助かるわ!それじゃ行ってくるわね。」

宝の特徴などを紙にまとめるヴェルを横目に、ユーカは洞窟の壁の一点に狙いをつけ、ガリガリと魔法で削っていく。

すると、細くて狭いが、かろうじて通れる一本の道が姿をあらわした。
そこへ、躊躇う事なく足を踏み入れ、どんどん奥へと進んでいく。
しばらくすると、少し広い空間が出てきて、そこで道は途切れる。

(ここは…明らかに人工のモノね。)

長方形で少し奥行きのある空間には、洞窟特有のデコボコとした壁が一切なく、キレイに平らにされていた。
その空間の奥へと進むと、小さな机と、その上に、古びた2冊の手帳があった。

(ヴェルの塒の奥にあるのだから、勇者のものかしら?それとも…ヴェルが眠るより先に、ここが存在した?)

辺りを見渡すと、左の方に小さな部屋を見つけたので、近寄ってみる。
そこには、寝台と、その上に横たわる、ナニモノかの白骨死体。

(これが勇者…なわけなさそうね。って事は、やはりヴェルが来るその前から、ここに居たって事になるのかしら。)

白骨化した死体に手を合わせてから、その場を後にすると、机の上に置いてあった2冊の手帳を手に取り、ペラペラとめくり始める。
あまり遅くなると、ヴェルが心配するだろうと思い、最初の数ページだけをめくると、手帳を閉じてカバンにしまい、来た道を戻った。

「遅かったの。コッチはバッチリじゃぞ!」

「あら、そんなに時間が経ってたかしら?」

「それより…早く街に戻って美味い肉を喰らわせてくりゃれ!」

「ーーそうね…。」

ユーカはあきれた顔でヴェルを見たあと、ヴェルのまとめた紙を受け取り、尋ねる。

「それで…カバンはあったのかしら?」

「うむ!この通りじゃ!」

「あら…なかなか良いカバンじゃない。それに、4つとも見つかったのね。」

「なんとかの…。次に埋める時は、もう少し丁寧にしてくれるとありがたいの。」

「そうね、私の考えが至らなかったわ。」

「では、早く街に戻ろうではないか!」

「なに言ってるのよ。これからすぐにミルヴァーナ大森林に向かうのよ?」

「えぇ…肉は?」

「干し肉があるじゃないの。」

「そ、そんなぁ…それってサギってやつじゃないのかや?」

「へぇ…そんな事言うのね。大森林から帰った後に、うんと美味しいお肉を食べさせてあげようと思ってたのになぁ。」

「あわわわ…我、大森林に行きたいキブンじゃったのを忘れておった!」

「はいはい…。じゃあ早く行くわよ。」

ヴェルの秘宝を、今度は丁寧に地面の奥深くへと埋めた後、洞窟を出て、ミルヴァーナ大森林を目指した。

ミルヴァーナ大森林とは、その名の通りビックリするほど広大な森林であり、その広さは、帝国領で一番の面積を誇っている。
レヴィンの街からは、アマエラ大山脈を挟んで反対側に位置しており、山脈の麓一帯が、大森林になっている。
反対に、レヴィン側の麓は、一帯が草原になっていて、木も生えてはいるが、どれも低木ばかりだ。
海からやってきた湿った空気が、大山脈にぶつかり、その麓で雨を降らせた結果、大森林になり、雨を降らせた後の、乾いた空気が山脈を超えて降りてきて、レヴィン側の麓は草原地帯になったのだと、どこぞの学者は言っていたそうな。

「これは…凄いわね。」

「うむ…大森林の名は、伊達ではないの。」

そんな大森林に着いたふたりは、その迫力を前に、言葉を失っていた。
ふたりの目の前に広がるのは、木。
辺り一面、木しかないのだった。

「すぐにでも、樹齢が1000年を超えている木を見つける事ができそうね。」

「それより…気づいたか、ユーカ?」

「そりゃもう…凄い数ね。」

「あぁ、一角イノシシじゃ!肉を喰らい放題じゃの!」

「え?」

「えっ…?」

「あぁ…野生の動物がたくさんいるわね!じゃなくてっ!」

「えぇ…違うのかや?」

「どう見てもっ!モンスターがっ!いっぱいいるじゃないっ!」

「そ、そっちであったか…。ももももちろん、我も気づいておったぞ!」

「はぁ…あなたの中の優先順位では、食欲が1位なのかしら?」

「違うぞっ!ユーカが一番じゃぞっ!」

「なっ…なによっ!ふんっ。」

それ以降、ユーカは黙り込み、黙々と森の中を歩き続ける。
ヴェルもその後を追い、時折、ユーカの気を引こうとふざけるが、そのことごとくを無視され、ついにはライフゲージがゼロになった。
ユーカが次に口を開いたのは、見るから古そうな大木を発見した時だった。

「ねぇヴェル、これくらいなら、良いんじゃないかしら?」

「そうじゃな。呼びかけに応えてくれたら良いのじゃが、応えてくれねば、他の木を探さねばならぬな。」

「それで…呼びかけというのは、なにをすれば良いのかしら?」

「それは我に任せておけ。」

「そう、じゃあ頼んだわね。」

「まぁ見ておれ。」

ヴェルは大木に手を伸ばし、そっと触れる。
そのまま、あたかもそこに人がいるかの様に、話しかける。

「ばあさん、久しぶりじゃな。我の事を覚えていたら、呼びかけに応じて欲しい…。」

すると、その木から声が聞こえてくる。

「あんた、大婆様を探しているのか?残念ながらこの木は若すぎて、私の様な低級のトライアドしか宿れんよ。」

「そうか、それは悪かった。この辺りでばあさんが宿れる木を知っているか?」

「大婆様に何か用なの?」

「あぁ、少し助言が欲しいのじゃ。」

「あんたは大婆様の何なのさ?」

「昔馴染みといったところかの?」

「そう…ここから少し遠いけど、小さな池がある。その近くにこんな木よりも3倍はデカいのがあるはずさ。」

「ありがとう、行ってみるよ。」

それっきり、木から声は聞こえなくなった。

「ヴェル…あなた、さっきの木と話している時は、ずいぶん雰囲気が変わるのね。」

「トライアドにケンカを売る様な真似は避けたいからの。」

「あら、そうなの?」

「世界中の木を滅ぼさねば、いつまでも襲ってくる様なヤツらじゃからな。」

「それは凄い気概ね。」

「うむ。それで、あの木に宿るトライアドが言うておったが、ここから少し行ったところに、ばあさんが宿れそうな木があるそうじゃ。」

「そう、じゃあ案内して頂戴。」

「え?」

「案内よ案内、どこだか分からないもの。」

「それは…我もわからぬぞ?」

「なんですって!?それじゃあ聞いた意味ないじゃない!」

「池の近くにあるそうじゃから、すぐに見つかるじゃろ?」

「もう良いわよっ!」

結局、その木を見つけるまでに2日も要し、ユーカは二度と、道案内だけはヴェルにさせないことを、密かに誓った。

「じゃあ今度こそ頼むわよ…。」

「うむぅ…ユーカよ、そばで一緒に聞いといてはくれぬかや?」

「はぁ…分かったわよ。あなただけじゃ頼りないからね。」

「すまぬ…。」

「良いわよ、別に。パートナーなんだから。」

「では、今度こそ。ばあさん、聞こえていたら返事をくれるとありがたいのじゃが…。」

「うん?その声は、あの時のガキかい?」

「ばあさん、我はもうガキではないぞ!しかし…覚えていてくれたか。」

「まぁね、あたしゃ長いことこの世界を見てきたけれど、あんたたちほど無茶やってたバカは見たことがないよ。」

「ばあさん…その話はよしてくりゃれ。それより、聞きたいことがあるのじゃ。」

「なんだい?こんな老いぼれに分かることなら、なんでも聞いておくれ。」

「こんにちは、トライアドのおばあさん。私はユーカ、ヴェルと行動を共にしているのだけど…。」

「なんだい、あのワルガキに友達ができたっていうのかい?」

「ととと、友達じゃないぞ!ただの相棒じゃ!」

「ちょっと…今は私が話してるの!」

「ふーん…あんたもなかなかワルそうな雰囲気だね。まぁ良い、何が聞きたいんだい?」

「オールドル大図書館。知ってるかしら?」

「ほぅ…もちろん知っておるよ。そこへ行きたいのかい?」

「えぇ、良かったら場所だけでも教えて貰えないかしら?」

「構わんよ。しかし、行けるかどうかはあんたたち次第だね。」

「私とヴェルなら余裕よ。」

「ふんっ…。場所は皇帝領。しかし、この大陸には無いよ。」

「それはどういう意味なの?」

「位置はここより北西、カムスカ地方にあるはずさ。あとは自分の力で見つけ出しな。」

「えっ…ちょ、ちょっと!なんでそんなにテキトーなのよ…。」

「諦めろユーカ、ばあさんは気に入った相手にはキビシイのじゃ。」

「なっ…ウソでしょ。納得いかないわよ…。」

「まぁまぁ、地域は絞り込めたから良いではないか。ばあさん、ありがとう。」

「ええ、せいぜい抗いなさい。世界はあんたたちに、一切として容赦はしないだろうからね。」

「その言葉、心に留めておく。では、達者でな。」

「どうもありがとう、おばあさん。また、躓いたら助言をもらいに来るわ。」

「いつでもいらっしゃい。あんたたちが抗い続ける限り、あたしゃあんたたちの味方だよ。」

その言葉を最後に、大木はすっかりと黙り込み、周囲には木々のざわめきだけが残った。

「こうしちゃ居られないわ。さっさと見つけて世界を救う手立てを探すわよ。」

「うむ、まずはカムスカ地方という場所じゃな。心当たりはあるのかや?」

「恐らくだけど、カムスカ半島とその周辺のことね。ここからだと…少し遠いわ。」

「では、早く出発しよう。」

ムムムムムーっ!
ーーーーーーーーポンっ!

「ウム、ノルガヨイゾ。」

「ねぇヴェル、少し気になることがあるのだけれど…。」

「デハ、トビナガラハナソウゾ。」

「そうね。」

ユーカが背に乗った事を確認すると、怒られないように、細心の注意を払い、翔びたった。








次回:第16話『カムスカ地方』
お楽しみにお待ちください。

8月31日 08時を投稿予定にしております。
感想や誤字脱字の指摘などなど
よろしければお願いし申し上げます。








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