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幕間話
リーゼの肩凝り
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私――リーゼロッテは自分で言うのもなんですが、才色兼備です。
幼い頃より、政治学、錬金学、魔法学等を優秀な指導者の下に学び、修士の称号を頂戴しております。
さらには実践訓練も行い、魔法の詠唱、剣術ともにそのあたりの人間に負けるつもりはありません。勿論、ユーリシアのような戦いの専門家には足元にも及びませんが。
そんな私にとって、弱点とも言えるものがふたつあります。
工房
「……じぃぃぃぃぃぃ」
「リーゼ、何を見ているんだ?」
「……なんでもありません」
戸惑うユーリさんをよそに、私はその理不尽に膨れ上がり湯面に浮かぶふたつの山を見つめます。
私は手を組んで、お湯をその山に向かって飛ばしました。
「うわっ! だから何するんだよ」
「何をするのかはこちらの台詞ですわっ!」
「なんで逆切れしているんだよっ!」
怒るユーリさん――彼女の胸の谷間にお湯が溜まっていたのです。
それに引き換え、私の胸は――お湯をかけても、さながら立板に水をかけるがごとくさらさらと流れていきます。
まったく、どうしてこの世界はこうも理不尽なのでしょう。
「風呂に入るときはいつも怒ってるよな、リーゼは。もしかして、風呂嫌いなのか?」
「いいえ、お風呂は大好きです」
そう、私のもう一つの弱点にこの風呂は大きくかかわります。
実は、私は重度の肩凝り持ちなのです。
というのも、王室の中にいた頃も、この工房に身を置く現在も、私の仕事は執務になります。日々机に向かって、書類の整理ばかり。当然、そんなことばかりしていると肩が凝るのです。
そのため、血行を促し、肩凝りに利くお風呂は私にとってはクルト様との触れあいの次に好きなことなのです。
「あぁ、リーゼも肩凝りなのか」
「私も……ということはユーリさんもですか」
……きっと私とは違う理由なのでしょうね。
私はユーリさんが持つふたつの山を見てため息をつきました。
「あぁ、そうだったんだけどね、クルトに相談したら簡単に治ったよ」
「クルト様に……ですか?」
クルト様に肩凝りを治して? それってクルト様に肩を揉んでもらったということですか?
「ああ、戦闘で腰を変な方向に曲げてしまって痛めてね――その時についでに肩もね」
まさか腰まで――そんな、それでは、
『クルト、ちょっと私の腰を揉んでくれないか?』
『いいですよ、ユーリシアさん。ここでいいですか?』
『いや、もう少し下を頼む』
『もう少し下って、この辺ですか?』
『もっと下だ』
『もっとって、あの――ユーリシアさん』
『安心しろ、クルト。ここには私たちしかいないんだ。もっと揉んでくれ』
なんてことを、なんてことをしたというのですか、この人は。
「は、破廉恥すぎます、ユーリさん」
「なんでだよっ!」
「自分の胸に手を当てて聞いてください! 自分の胸に手を当てて聞いてください!」
私はそう言い捨てて脱衣場に行くと、そこにはいまからお風呂に入ろうとするシーナさんがいらっしゃいました。
「あ、リーゼ、いま上がったの?」
シーナさんが笑顔で声を掛けてきました。
私が王女だと打ち明けてから一カ月。シーナさんもユーリさん同様友達のように接してくれます。
私はその友達――シーナさんの胸を見て、彼女の肩を叩きました。
「シーナさん、いつまでも今のあなたでいてくださいね」
「はい?」
私はそう言うと、着替えて脱衣場を出ました。
「なんか失礼なことを言われた気がする」
シーナさんのそんな声が聞こえてきましたが。
「それで、どうして私はここにいるのでしょう?」
「え? えっと、どうしてでしょう?」
薬品庫で薬の整理をしているクルト様にも私の質問の答えはわからなかったようです。
って、そうではありません。
えっと、そうです。お風呂に入る時間が短かったせいで、肩凝りが治らず、クルト様に肩を揉んでもらったら嬉しいなと思って、クルト様の匂いを辿っていたら、偶然、クルト様を見つけたわけです。
「もしかして、どこか怪我をしたのですか?」
「あ、いえ、怪我は――ただちょっとかた……腰が凝ってしまって」
「そうなんですか――ちょっと見せてもらってもいいですか?」
「はい、クルト様には一度全て見られていますからね」
「あ……あの時は失礼しました」
クルト様がそう言って謝罪してきました。
別に構いませんのに。
「では、診療室に行きましょうか」
クルト様にそう言われ、薬品庫の隣の診療室に行きました――当然、入口の施錠は忘れません。
そして、ベッドにうつ伏せになります。
「それでは、クルト様、お願いします」
「はい、リーゼさん。では失礼しますね」
私の服の間にクルト様の手が入ってきます。
これから、あの魅惑のマッサージの時間が、時間が――
「冷たっ!」
え?
「あ、冷たかったですか? でももう貼り終わったのでいいですよ」
「あ、あの、これは?」
「僕の湿布です。予備も渡しておきますね」
「し……湿布?」
「はい。ユーリシアさんにもよく効くって評判なんですよ」
あ……あぁ、そうですか。
そうですね。
ちなみに、クルト様からいただいた湿布の効き目は本当に凄く、湿布を貼って数分で肩こりがなくなっていました。
今度、クルト様に胸が大きくなる薬はないか聞いてみたいのですが、やはりはずかしくて聞けそうにありません。
幼い頃より、政治学、錬金学、魔法学等を優秀な指導者の下に学び、修士の称号を頂戴しております。
さらには実践訓練も行い、魔法の詠唱、剣術ともにそのあたりの人間に負けるつもりはありません。勿論、ユーリシアのような戦いの専門家には足元にも及びませんが。
そんな私にとって、弱点とも言えるものがふたつあります。
工房
「……じぃぃぃぃぃぃ」
「リーゼ、何を見ているんだ?」
「……なんでもありません」
戸惑うユーリさんをよそに、私はその理不尽に膨れ上がり湯面に浮かぶふたつの山を見つめます。
私は手を組んで、お湯をその山に向かって飛ばしました。
「うわっ! だから何するんだよ」
「何をするのかはこちらの台詞ですわっ!」
「なんで逆切れしているんだよっ!」
怒るユーリさん――彼女の胸の谷間にお湯が溜まっていたのです。
それに引き換え、私の胸は――お湯をかけても、さながら立板に水をかけるがごとくさらさらと流れていきます。
まったく、どうしてこの世界はこうも理不尽なのでしょう。
「風呂に入るときはいつも怒ってるよな、リーゼは。もしかして、風呂嫌いなのか?」
「いいえ、お風呂は大好きです」
そう、私のもう一つの弱点にこの風呂は大きくかかわります。
実は、私は重度の肩凝り持ちなのです。
というのも、王室の中にいた頃も、この工房に身を置く現在も、私の仕事は執務になります。日々机に向かって、書類の整理ばかり。当然、そんなことばかりしていると肩が凝るのです。
そのため、血行を促し、肩凝りに利くお風呂は私にとってはクルト様との触れあいの次に好きなことなのです。
「あぁ、リーゼも肩凝りなのか」
「私も……ということはユーリさんもですか」
……きっと私とは違う理由なのでしょうね。
私はユーリさんが持つふたつの山を見てため息をつきました。
「あぁ、そうだったんだけどね、クルトに相談したら簡単に治ったよ」
「クルト様に……ですか?」
クルト様に肩凝りを治して? それってクルト様に肩を揉んでもらったということですか?
「ああ、戦闘で腰を変な方向に曲げてしまって痛めてね――その時についでに肩もね」
まさか腰まで――そんな、それでは、
『クルト、ちょっと私の腰を揉んでくれないか?』
『いいですよ、ユーリシアさん。ここでいいですか?』
『いや、もう少し下を頼む』
『もう少し下って、この辺ですか?』
『もっと下だ』
『もっとって、あの――ユーリシアさん』
『安心しろ、クルト。ここには私たちしかいないんだ。もっと揉んでくれ』
なんてことを、なんてことをしたというのですか、この人は。
「は、破廉恥すぎます、ユーリさん」
「なんでだよっ!」
「自分の胸に手を当てて聞いてください! 自分の胸に手を当てて聞いてください!」
私はそう言い捨てて脱衣場に行くと、そこにはいまからお風呂に入ろうとするシーナさんがいらっしゃいました。
「あ、リーゼ、いま上がったの?」
シーナさんが笑顔で声を掛けてきました。
私が王女だと打ち明けてから一カ月。シーナさんもユーリさん同様友達のように接してくれます。
私はその友達――シーナさんの胸を見て、彼女の肩を叩きました。
「シーナさん、いつまでも今のあなたでいてくださいね」
「はい?」
私はそう言うと、着替えて脱衣場を出ました。
「なんか失礼なことを言われた気がする」
シーナさんのそんな声が聞こえてきましたが。
「それで、どうして私はここにいるのでしょう?」
「え? えっと、どうしてでしょう?」
薬品庫で薬の整理をしているクルト様にも私の質問の答えはわからなかったようです。
って、そうではありません。
えっと、そうです。お風呂に入る時間が短かったせいで、肩凝りが治らず、クルト様に肩を揉んでもらったら嬉しいなと思って、クルト様の匂いを辿っていたら、偶然、クルト様を見つけたわけです。
「もしかして、どこか怪我をしたのですか?」
「あ、いえ、怪我は――ただちょっとかた……腰が凝ってしまって」
「そうなんですか――ちょっと見せてもらってもいいですか?」
「はい、クルト様には一度全て見られていますからね」
「あ……あの時は失礼しました」
クルト様がそう言って謝罪してきました。
別に構いませんのに。
「では、診療室に行きましょうか」
クルト様にそう言われ、薬品庫の隣の診療室に行きました――当然、入口の施錠は忘れません。
そして、ベッドにうつ伏せになります。
「それでは、クルト様、お願いします」
「はい、リーゼさん。では失礼しますね」
私の服の間にクルト様の手が入ってきます。
これから、あの魅惑のマッサージの時間が、時間が――
「冷たっ!」
え?
「あ、冷たかったですか? でももう貼り終わったのでいいですよ」
「あ、あの、これは?」
「僕の湿布です。予備も渡しておきますね」
「し……湿布?」
「はい。ユーリシアさんにもよく効くって評判なんですよ」
あ……あぁ、そうですか。
そうですね。
ちなみに、クルト様からいただいた湿布の効き目は本当に凄く、湿布を貼って数分で肩こりがなくなっていました。
今度、クルト様に胸が大きくなる薬はないか聞いてみたいのですが、やはりはずかしくて聞けそうにありません。
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