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4巻
4-2
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埠頭に打ち寄せる波を見ながら、僕は潮風の香りを感じていた。
ここはタイコーン辺境伯領最北端の岬の町、マクリス。
岬の先には、古代ラピタル文明の時代に築かれたと言われる全長二キロメートルにも及ぶ石橋がかかっている。その先にあるのが、諸島都市連盟コスキートで唯一大陸から徒歩で行ける島、バックラス島だ。
そして、諸島都市連盟コスキートのどこかにユーリシアさんがいる。
「それにしても本当に運がよかったですね。たまたま工房の留学先が諸島都市連盟コスキートだなんて。でも、留学が行われるなんて全く知りませんでした」
ユーリさんがいなくなったことを知り、どうやってコスキートに行こうか悩んでいた僕とリーゼさんは、突然タイコーン辺境伯様に呼び出された。
そこで僕は工房主代理として、リーゼさんはヴァルハの太守代理として、留学命令を言い渡されたのだ。
コスキートには、この国にはない造船技術や、島ごとの独自の文化がある。今回の留学は、それらの調査を兼ねたものだそうだ。
すでに受け入れ先と話は済ませているらしく、各島で僕達を出迎える準備をしてくれているとのこと。
本来、工房主とその関係者は基本的に国外に出ることを許されていない。技術の国外流出は、国家にとって大損害に繋がる恐れがあるからだ。
しかし留学という名目があれば、例外的に国外に出ることが許されるのだ。
僕はその時、あまりの巡り合わせのよさに神様に感謝した。
「ただ、タイコーン辺境伯様、大丈夫でしょうか? かなり疲れていたように見えましたけど」
少し肥満体型だったタイコーン辺境伯様だけれども、昨日は以前に比べて十キロくらい体重が減っているように見えた。
ダイエットを始めたのだろうか?
無理なダイエットは体に毒だと思うんだけど。
「さすがに一日で全ての準備をさせるのは無理がありましたかしら? 執政官の姿も見えませんから、寝込んでいるのかもしれませんね」
リーゼさん、すごい小声だけどどうしたのかな?
「え? リーゼさん、何か言いました?」
「いえ、なんでもありませんわ。まぁ、今回は命の危機というわけでもなく、急いで行く必要もありませんし、二人で観光を楽しみながら彼女の情報を集めましょう」
「そういうわけにはいきませんよ。僕達は仕事でここにきているんですから――ってあれ? こういうやりとり、前にもありませんでしたっけ?」
あったよね?
タイコーン辺境伯領の領主町のお祭りで、リーゼさんに言われたような気がする。
あ……そうか、そういうことか。
リーゼさん、工房に来たばかりの頃はラクガキンキに狙われて、家を出ることができなかったんだった。
だから、外で遊ぶことができず、その反動でお祭りや観光をしたいと思うようになったのだろう。
たしかにユーリさんを探すことが一番大事だし、仕事もしないといけない。でも、リーゼさんがこれまで遊べなかった時間を取り戻すのも、大切なことだ。
「リーゼさんっ!」
「は、はい!?」
「楽しみながら調査もしましょう。お祭りの時みたいに」
「はい!」
うん、たぶんこれでいいんだよね?
そうと決まれば、まずはコスキートに行こう。
そう思ったんだけど――
「凄い列だね」
大きな橋の真ん中にある建物が、国境の関所になっている。
そこは今、国境を越えようとする多くの人が列を作っていた。
「クルト様、どうします? 貴族専用の通路に行けば、早く関所を越えられますけど」
「んー、ごめんなさい、やめておきます」
「そうですね、クルト様ならそう仰ると思いました」
さっき、貴族様を乗せていると思しき馬車が、僕達が並んでいる列の横を走り抜けて検問のところに行った。
すると、検問所にいた警備兵が全員その馬車にかかりっきりになり、僕達が並んでいる列の処理が止まってしまったのだ。
どうやら、貴族様が門を通る時は特別な手続きがあるらしい。
僕達も割り込めば、この列の人達に余計な時間がかかってしまう。
「坊ちゃん、嬢ちゃん、貴族様なのかい?」
どうやら、僕達の話を聞いていたらしい、後ろに並んでいた頭にターバンを巻いた行商人らしき恰好のお姉さんが尋ねてきた。
「いえ、私ではなく、こちらのクルト様が――」
「貴族といっても名誉士爵ですけど」
僕の言葉に、お姉さんは目を見開く。
「そりゃ凄いな。あたしはチッチ。パオス島で開催される武道大会に行くために列に並んでいるのさ」
「お姉さんは剣士なんですか?」
「いや――」
お姉さんが僕の頭をポンポンと右手で二回叩いた、その直後だった。
一瞬の違和感があり、ふとポケットを確認すると、銅貨を入れている袋がなくなっていた。
あれ? いつの間に落としたんだろ?
「おっと、気付かれちまったか。いや、掏られたことには気付いていなかったみたいだな。ほら、これが坊ちゃんの小銭袋だ」
お姉さんはそう言って袋を返してくれた。
落としたんじゃなくて、あの一瞬で盗られていたんだ――全然気付かなかった。
「なんで気付いたんだい?」
「荷物の重さはグラム単位で把握してるので、ポケットの中身が軽くなれば気付きますよ」
「おおっと、こりゃスリの天敵発見だな」
お姉さんはそう言って愉快そうに笑った。
「スリですか?」
「嬢ちゃん、そんな目で見ないでくれよ。もう足は洗った。今は器用なレンジャーとして活躍してるよ」
そう言って彼女は、ナイフを抜いて僕達に見せてくれた。
……あれ? このナイフ、もしかして。
そう思った僕が何か言う前に、チッチさんが口を開いた。
「どうだい? 北の武道大会の見学に行くんだろ? あたしを護衛として雇わないか? 雇ってくれたら盗賊だけじゃなく、昔のあたしみたいなスリからも守ってやれるぜ?」
武道大会? そんなのあるんだ。
「必要ありま――」
「待ってください、リーゼさん」
リーゼさんは断ろうとしたけれど、これってチャンスじゃないかな?
「えっと、お姉さんはコスキートに詳しいんですか?」
「ああ、詳しいよ。レンジャーだから情報を集めるのも得意だ」
「実は、コスキートで人を探しているんです。そのために力を貸してくれないでしょうか?」
「人探しか。よし、武道大会までの間あたしが力を貸してやるよ」
「よろしくお願いします、チッチさん。僕はクルトと申します」
「そうか、クルトか。代金はこれで結構だ」
チッチさんは握手している手とは反対の手に、小銭袋を握ってそう言った。
僕の懐から、また袋がなくなっていた。
「クルト様、雇う人を間違えたんじゃありませんか?」
「はは……僕もそう思いました……」
長い間列に並び、僕達は国境の検問所に辿り着いた。
タイコーン辺境伯様から預かった通行許可書を見せると、特に審査もなく素通りに近い感じで、諸島都市連盟コスキートとの国境を越えることができた。
といっても、ホムーロス王国側の橋と変わらないので、まだ国境を越えたという気にはならないかな?
「クルト、リーゼ、はやく行こうぜ!」
チッチさんが手を振って僕達を呼ぶ。
とても明るくてお調子者という感じのお姉さんに、僕は少し不安になる。
「クルト様、あの女性を護衛にして本当によろしかったのですか? タイコーン辺境伯の伝手で、この国の護衛とガイドを先の町で雇う手はずは整っているのですが」
リーゼさんの言葉に、僕は首を横に振った。
「――同じだったんです」
「同じ? 何がですか?」
「チッチさんが持っていたナイフ、ユーリシアさんが持っていたナイフと同じなんです」
「それって、彼女がユーリさんのナイフを掏ったということですか!?」
リーゼさんは目を丸くしてしまった。
「い、いえ、そうじゃありません。まったく同じというわけではなくて、多分、同じ鋳型で作られた短剣だと思うんです」
「同じ……ですが、大量生産品のナイフなら別に珍しいことはないのでは?」
「それはそうなんですけどね……」
リーゼさんが言っていることは正しい。
それでも、この情報が重要なんだ。
僕はリーゼさんに説明することにした。
――リーゼさんが使っている短刀・胡蝶のように、鉄のインゴットを打って作る短剣と違い、鋳型を使う場合、型の中に溶かした金属を流し込んで作る。僕程度でも、鋳造なら一分に百本のペースで短剣を作れるだろう。
「クルト様、短剣を一本作るためにかかる時間は……いえ、なんでもないです」
なんでもないのなら話を続けていいかな?
そんな便利な鋳造の剣だけど、大きな欠点がある。切れ味が凄く落ちてしまうのだ。
具体的に言うと、同じ鉄製の剣でも、普通に作った剣なら岩を空気みたいに斬れるのに、鋳造の剣で岩を切ろうと思ったらちょっとひっかかりを感じる。
「クルト様、鋳造の剣で岩を叩いたら砕けることはあっても斬ることはできま……いえ、なんでもないです」
なんでもないのなら話を続けていいかな?
そんなわけで、普通なら鋳造のナイフは切れ味が落ちるんだけど、ユーリさんの短剣はそうじゃない。
刃こぼれしないための、切れ味を増すための魔法印が刻まれているのだ。
「魔法印ですか? そのようなものがあったとは思えませんけど」
「はい、ナイフには何も描かれていません。魔法印は鞘の内側に描かれているんです。あの鞘は簡単に作れるものじゃありません」
「クルト様でも作れないんですか!?」
意外そうな顔でリーゼさんが尋ねた。リーゼさんのその言い方、まるで僕ならばどんな魔道具でも簡単に作ってのけるみたいだ。
僕程度の人間、作れないものだらけなのに。
「――似たようなものは作れるかもしれませんけど、あれと同じものは無理だと思います。僕の家の裏のおじさんはああいうのを作るのが好きだったんで、多分作れると思いますけれど……ゴーレム作りが趣味で、物質に印を刻むのが得意でしたから。一日中空を飛んでいる島とか作っていましたし」
リーゼさんは何を言ったらいいかわからないといった様子で、口をパクパクさせている。しばらくそうしていたが、すぐに復活した。
「つまりクルト様は、ユーリさんと同じ鞘と短剣を持っている彼女に、ユーリさんを探すための手がかりがある――そう思っているのですか?」
「はい――あとは直感ですけど」
僕はそう言って、いい加減にしびれを切らしてこちらにやってくるチッチさんを見た。
チッチさんは僕の首根っこを掴むと、あっさりと持ち上げて歩きだした。
「早く行かないと、この先の美味しい店が夕方には閉まっちゃうんだよ」
「待ってください、あなた、クルト様を乱暴に扱わないでください」
僕を抱えたまま走るチッチさんと、追いかけてくるリーゼさんを見て思った。
チッチさんがいい人だったら、ユーリさんを探すこの旅はきっと楽しいものになる――そんな予感がしたんだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
無事にクルト様と一緒に諸島都市連盟コスキートに入ることができました。
今回私は、本名のリーゼロッテではなく、リーゼという愛称をそのまま名前に使った身分証明書での入国です。
もっとも、今回使った身分証は王族がお忍びで他国に入るためのものでして、周囲の人間に私のことを気付かれないようにする代わりに、私――リーゼロッテ第三王女がこの連合国に入ったことは、この国の一部の上層部に知られることになるでしょう。
まぁ、それは致し方ない話です。
問題は、護衛役のファントムが二名しかこの国に入れなかったことですね。
万が一のことがあった場合、この人数で私とクルト様を同時に守れるかどうかは不安です。もしもの時は私よりもクルト様を優先して守ってもらいたいのですが、きっとミミコさんから下っている命令は違うものなのでしょう。
ファントムは私の命令には基本逆らいませんが、しかし彼女達の本当の主はミミコさん。優先すべきは彼女の命令なのです。
そのため、私の命とクルト様の命、どちらを優先するかも決まっています。いざとなればクルト様を見捨てて、私を守ろうとする。
はぁ、クルト様を失うことは国家にとっての損失どころか、世界にとっての大損失ですのに。
それに、チッチという得体の知れない女性――彼女もまた謎です。
クルト様の言うことが事実だとすれば、ユーリさんと同じ魔道具の鞘を持っているわけですけれども……果たして、信用していいのか。
「ここだ! ここが美味しい店だよ!」
チッチがそう言って私達を案内したのは、小さな店でした。
「お休みのようですけど――」
扉には、準備中の札が掛けられています。中では人の気配はするようですが、もう営業は終わったのでしょう。
まぁ、私としては助かりました。どんなに美味しい料理店でもクルト様の料理には敵いません。
できることなら、今日は宿を取って厨房を借り、クルト様に料理を作っていただきたいです。
もちろん、私もクルト様の横でお手伝いをして――あぁ、それってまるで新婚夫婦みたいではありませんか。
今夜は厨房がついている宿をタイコーン辺境伯が予約してくださっていますので、そちらに向かいましょう。
「昼の営業時間は終わったみたいだね。でもほら、そこは坊ちゃんがいるからさ。ホムーロス王国の士爵様が訪ねてきて、追い払うような料理人はいないさ」
「え? で、でもそんな店の人に無理を言うなんてできませんよ」
良識のあるクルト様は、貴族であることを笠に着て、他人に無理強いをするようなことはできないでしょう。
しかし同時に押しに弱いため、非常に困った顔をしていました。
仕方ありません。ここは私がいきましょう。
幸い、路銀は十分持っています。金貨を数枚握らせれば、食事くらい提供してくれるでしょう。
「私が交渉してきます。無理だったら諦めてくださいね」
私は店の扉を二回ノックしました。
反応がないので開けてみると、美味しそうな香りが漂ってきます。クルト様の料理ほどではありませんが、ここまでのいい香りは、宮廷の厨房を覗いた時でもしませんでした。
と、厨房の奥から、シェフ姿の男が現れました。
「悪いが準備中だよ。飯を食いたければ夜にもう一度来な」
ぶっきらぼうにそう言ってシェフは厨房に帰ろうとします。
「お待ちください、実は私達は旅の者でして、この後すぐに北の町に向かわないといけません。失礼でなければ、こちらで料理を数皿提供していただけないでしょうか」
私はそう言って金貨を数枚差し出したのですが、予想外にもシェフは首を横に振りました。
「悪いが、うちの店は貴族様でも平民でも、金持ちでも貧乏人でも平等に扱うって決めているんでな。外に待たせている士爵様にもそう伝えろ」
……あら、聞こえていましたのね。まぁ、チッチのあの大きな声では仕方ありません。
これは絶対に考えを変えないタイプですね。
交渉相手としては非常に厄介です。
こういう時は、相手のプライドを刺激するのが一番でしょう。
もちろん、それは諸刃の剣ですが、しかしそこを上手に処理してこそ交渉人です。
「そこまで仰るということは、よほど美味しい料理を作る店なのですか?」
「…………どういう意味だ?」
「いえ、頑固なシェフの店、そう言えば聞こえはいいのですけれど、そういうシェフの雰囲気に客が騙されているだけということはないか、と思っただけです。本当にこの店は最高に美味しい料理が食べられるのでしょうか?」
「……最高の料理……ははは、そんなもん、今の俺なんかに作れるわけないだろ」
「……え?」
これには食いつくだろうという挑発でしたが、予想外の答えが返ってきました。
シェフはどこか懐かしそうに微笑み、私に背を向けたままスープを煮込みます。
ここで激昂してくれたら交渉しやすかったのですけれども。
「本当に最高の料理を作れる料理人を、俺は知っている。人智を超えた料理人だ。俺はその人に近付きたくて、料理を続けているんだ。だから営業と営業の間は料理を研究する時間と決めている。そういうわけで、悪いが帰ってくれ」
「ま、待ってください。その人智を超えた料理人というのは、まさか――」
その人物に、心当たりがあります。
名前を尋ねようとしたその時、私の背後の扉が開きました。
「あの、リーゼさん、無理そうでしたらいいですよ」
顔を出したのはクルト様です。
その直後――
「し……し…………師匠おぉぉぉぉぉぉおっ!?」
シェフが驚き、その場に尻もちをつきました。
あぁ、やはりそうですか。クルト様の料理を食べたんですね、この人。
「あ、お久しぶりですゲールハークさん。ここ、ゲールハークさんの店だったんですね」
クルト様は懐かしい知人に会ったような気楽さで声をかけました。
「師匠が俺の店に……もう俺は死んでもいい」
はぁ、この人もクルト様に運命を変えられたうちの一人だったんですね。
「どうなってるんだ?」
泣き崩れるシェフ――ゲールハークさんを見て、後から入ってきたチッチは首を傾げました。
少し正気を取り戻したゲールハークさんは、立ち上がって私達を案内してくれます。
その間に、クルト様から彼について聞きました。
クルト様が言うには、ゲールハークさんは、クルト様が私やユーリさんと出会う以前、「炎の竜牙」が拠点としていた宿でシェフをしていたようです。
その時にクルト様の故郷の料理に興味を持ち、レシピを学んだそうで、それ以来クルト様のことを師匠と呼ぶようになったとのことです。
その話を聞いていたゲールハークさんは苦笑しても、否定はしませんでした。
おそらく、彼も知っているのでしょう――クルト様に自身の秘密を知らせてはいけないと。クルト様の気絶体質のことまで知っているかどうかはわかりませんが。
ってあれ?
「ゲールハークという名前、どこかで聞いたことがあると思っていたのですが、もしかしてミショルンガイドブックで七つ星を取ったホテル・ココノワールの総料理長のゲールハークさんですか?」
「ああ、そんなこともあったな」
やはり――やはりそうだったのですか。
ホテル・ココノワールのレストランといえば、かつて国で一番とも言われていたレストランです。しかし去年、総料理長が突然引退を宣言。その結果、美食の格付けの権威であるミショルンガイドブックでの今年の評価が、星を二つも落として五つ星レストランになったと言われています。
そのくらい、彼の料理の腕は素晴らしいんだとか。
私も一度、彼の料理を食べたことがあります。幼かったので味の詳細は覚えていませんが、とても美味しかったことだけは覚えています。
まさか、その彼の引退にクルト様が関わっていたとは。そしてあろうことか、そのゲールハークさんがクルト様のことを師匠と仰いでいるとは。
ここはタイコーン辺境伯領最北端の岬の町、マクリス。
岬の先には、古代ラピタル文明の時代に築かれたと言われる全長二キロメートルにも及ぶ石橋がかかっている。その先にあるのが、諸島都市連盟コスキートで唯一大陸から徒歩で行ける島、バックラス島だ。
そして、諸島都市連盟コスキートのどこかにユーリシアさんがいる。
「それにしても本当に運がよかったですね。たまたま工房の留学先が諸島都市連盟コスキートだなんて。でも、留学が行われるなんて全く知りませんでした」
ユーリさんがいなくなったことを知り、どうやってコスキートに行こうか悩んでいた僕とリーゼさんは、突然タイコーン辺境伯様に呼び出された。
そこで僕は工房主代理として、リーゼさんはヴァルハの太守代理として、留学命令を言い渡されたのだ。
コスキートには、この国にはない造船技術や、島ごとの独自の文化がある。今回の留学は、それらの調査を兼ねたものだそうだ。
すでに受け入れ先と話は済ませているらしく、各島で僕達を出迎える準備をしてくれているとのこと。
本来、工房主とその関係者は基本的に国外に出ることを許されていない。技術の国外流出は、国家にとって大損害に繋がる恐れがあるからだ。
しかし留学という名目があれば、例外的に国外に出ることが許されるのだ。
僕はその時、あまりの巡り合わせのよさに神様に感謝した。
「ただ、タイコーン辺境伯様、大丈夫でしょうか? かなり疲れていたように見えましたけど」
少し肥満体型だったタイコーン辺境伯様だけれども、昨日は以前に比べて十キロくらい体重が減っているように見えた。
ダイエットを始めたのだろうか?
無理なダイエットは体に毒だと思うんだけど。
「さすがに一日で全ての準備をさせるのは無理がありましたかしら? 執政官の姿も見えませんから、寝込んでいるのかもしれませんね」
リーゼさん、すごい小声だけどどうしたのかな?
「え? リーゼさん、何か言いました?」
「いえ、なんでもありませんわ。まぁ、今回は命の危機というわけでもなく、急いで行く必要もありませんし、二人で観光を楽しみながら彼女の情報を集めましょう」
「そういうわけにはいきませんよ。僕達は仕事でここにきているんですから――ってあれ? こういうやりとり、前にもありませんでしたっけ?」
あったよね?
タイコーン辺境伯領の領主町のお祭りで、リーゼさんに言われたような気がする。
あ……そうか、そういうことか。
リーゼさん、工房に来たばかりの頃はラクガキンキに狙われて、家を出ることができなかったんだった。
だから、外で遊ぶことができず、その反動でお祭りや観光をしたいと思うようになったのだろう。
たしかにユーリさんを探すことが一番大事だし、仕事もしないといけない。でも、リーゼさんがこれまで遊べなかった時間を取り戻すのも、大切なことだ。
「リーゼさんっ!」
「は、はい!?」
「楽しみながら調査もしましょう。お祭りの時みたいに」
「はい!」
うん、たぶんこれでいいんだよね?
そうと決まれば、まずはコスキートに行こう。
そう思ったんだけど――
「凄い列だね」
大きな橋の真ん中にある建物が、国境の関所になっている。
そこは今、国境を越えようとする多くの人が列を作っていた。
「クルト様、どうします? 貴族専用の通路に行けば、早く関所を越えられますけど」
「んー、ごめんなさい、やめておきます」
「そうですね、クルト様ならそう仰ると思いました」
さっき、貴族様を乗せていると思しき馬車が、僕達が並んでいる列の横を走り抜けて検問のところに行った。
すると、検問所にいた警備兵が全員その馬車にかかりっきりになり、僕達が並んでいる列の処理が止まってしまったのだ。
どうやら、貴族様が門を通る時は特別な手続きがあるらしい。
僕達も割り込めば、この列の人達に余計な時間がかかってしまう。
「坊ちゃん、嬢ちゃん、貴族様なのかい?」
どうやら、僕達の話を聞いていたらしい、後ろに並んでいた頭にターバンを巻いた行商人らしき恰好のお姉さんが尋ねてきた。
「いえ、私ではなく、こちらのクルト様が――」
「貴族といっても名誉士爵ですけど」
僕の言葉に、お姉さんは目を見開く。
「そりゃ凄いな。あたしはチッチ。パオス島で開催される武道大会に行くために列に並んでいるのさ」
「お姉さんは剣士なんですか?」
「いや――」
お姉さんが僕の頭をポンポンと右手で二回叩いた、その直後だった。
一瞬の違和感があり、ふとポケットを確認すると、銅貨を入れている袋がなくなっていた。
あれ? いつの間に落としたんだろ?
「おっと、気付かれちまったか。いや、掏られたことには気付いていなかったみたいだな。ほら、これが坊ちゃんの小銭袋だ」
お姉さんはそう言って袋を返してくれた。
落としたんじゃなくて、あの一瞬で盗られていたんだ――全然気付かなかった。
「なんで気付いたんだい?」
「荷物の重さはグラム単位で把握してるので、ポケットの中身が軽くなれば気付きますよ」
「おおっと、こりゃスリの天敵発見だな」
お姉さんはそう言って愉快そうに笑った。
「スリですか?」
「嬢ちゃん、そんな目で見ないでくれよ。もう足は洗った。今は器用なレンジャーとして活躍してるよ」
そう言って彼女は、ナイフを抜いて僕達に見せてくれた。
……あれ? このナイフ、もしかして。
そう思った僕が何か言う前に、チッチさんが口を開いた。
「どうだい? 北の武道大会の見学に行くんだろ? あたしを護衛として雇わないか? 雇ってくれたら盗賊だけじゃなく、昔のあたしみたいなスリからも守ってやれるぜ?」
武道大会? そんなのあるんだ。
「必要ありま――」
「待ってください、リーゼさん」
リーゼさんは断ろうとしたけれど、これってチャンスじゃないかな?
「えっと、お姉さんはコスキートに詳しいんですか?」
「ああ、詳しいよ。レンジャーだから情報を集めるのも得意だ」
「実は、コスキートで人を探しているんです。そのために力を貸してくれないでしょうか?」
「人探しか。よし、武道大会までの間あたしが力を貸してやるよ」
「よろしくお願いします、チッチさん。僕はクルトと申します」
「そうか、クルトか。代金はこれで結構だ」
チッチさんは握手している手とは反対の手に、小銭袋を握ってそう言った。
僕の懐から、また袋がなくなっていた。
「クルト様、雇う人を間違えたんじゃありませんか?」
「はは……僕もそう思いました……」
長い間列に並び、僕達は国境の検問所に辿り着いた。
タイコーン辺境伯様から預かった通行許可書を見せると、特に審査もなく素通りに近い感じで、諸島都市連盟コスキートとの国境を越えることができた。
といっても、ホムーロス王国側の橋と変わらないので、まだ国境を越えたという気にはならないかな?
「クルト、リーゼ、はやく行こうぜ!」
チッチさんが手を振って僕達を呼ぶ。
とても明るくてお調子者という感じのお姉さんに、僕は少し不安になる。
「クルト様、あの女性を護衛にして本当によろしかったのですか? タイコーン辺境伯の伝手で、この国の護衛とガイドを先の町で雇う手はずは整っているのですが」
リーゼさんの言葉に、僕は首を横に振った。
「――同じだったんです」
「同じ? 何がですか?」
「チッチさんが持っていたナイフ、ユーリシアさんが持っていたナイフと同じなんです」
「それって、彼女がユーリさんのナイフを掏ったということですか!?」
リーゼさんは目を丸くしてしまった。
「い、いえ、そうじゃありません。まったく同じというわけではなくて、多分、同じ鋳型で作られた短剣だと思うんです」
「同じ……ですが、大量生産品のナイフなら別に珍しいことはないのでは?」
「それはそうなんですけどね……」
リーゼさんが言っていることは正しい。
それでも、この情報が重要なんだ。
僕はリーゼさんに説明することにした。
――リーゼさんが使っている短刀・胡蝶のように、鉄のインゴットを打って作る短剣と違い、鋳型を使う場合、型の中に溶かした金属を流し込んで作る。僕程度でも、鋳造なら一分に百本のペースで短剣を作れるだろう。
「クルト様、短剣を一本作るためにかかる時間は……いえ、なんでもないです」
なんでもないのなら話を続けていいかな?
そんな便利な鋳造の剣だけど、大きな欠点がある。切れ味が凄く落ちてしまうのだ。
具体的に言うと、同じ鉄製の剣でも、普通に作った剣なら岩を空気みたいに斬れるのに、鋳造の剣で岩を切ろうと思ったらちょっとひっかかりを感じる。
「クルト様、鋳造の剣で岩を叩いたら砕けることはあっても斬ることはできま……いえ、なんでもないです」
なんでもないのなら話を続けていいかな?
そんなわけで、普通なら鋳造のナイフは切れ味が落ちるんだけど、ユーリさんの短剣はそうじゃない。
刃こぼれしないための、切れ味を増すための魔法印が刻まれているのだ。
「魔法印ですか? そのようなものがあったとは思えませんけど」
「はい、ナイフには何も描かれていません。魔法印は鞘の内側に描かれているんです。あの鞘は簡単に作れるものじゃありません」
「クルト様でも作れないんですか!?」
意外そうな顔でリーゼさんが尋ねた。リーゼさんのその言い方、まるで僕ならばどんな魔道具でも簡単に作ってのけるみたいだ。
僕程度の人間、作れないものだらけなのに。
「――似たようなものは作れるかもしれませんけど、あれと同じものは無理だと思います。僕の家の裏のおじさんはああいうのを作るのが好きだったんで、多分作れると思いますけれど……ゴーレム作りが趣味で、物質に印を刻むのが得意でしたから。一日中空を飛んでいる島とか作っていましたし」
リーゼさんは何を言ったらいいかわからないといった様子で、口をパクパクさせている。しばらくそうしていたが、すぐに復活した。
「つまりクルト様は、ユーリさんと同じ鞘と短剣を持っている彼女に、ユーリさんを探すための手がかりがある――そう思っているのですか?」
「はい――あとは直感ですけど」
僕はそう言って、いい加減にしびれを切らしてこちらにやってくるチッチさんを見た。
チッチさんは僕の首根っこを掴むと、あっさりと持ち上げて歩きだした。
「早く行かないと、この先の美味しい店が夕方には閉まっちゃうんだよ」
「待ってください、あなた、クルト様を乱暴に扱わないでください」
僕を抱えたまま走るチッチさんと、追いかけてくるリーゼさんを見て思った。
チッチさんがいい人だったら、ユーリさんを探すこの旅はきっと楽しいものになる――そんな予感がしたんだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
無事にクルト様と一緒に諸島都市連盟コスキートに入ることができました。
今回私は、本名のリーゼロッテではなく、リーゼという愛称をそのまま名前に使った身分証明書での入国です。
もっとも、今回使った身分証は王族がお忍びで他国に入るためのものでして、周囲の人間に私のことを気付かれないようにする代わりに、私――リーゼロッテ第三王女がこの連合国に入ったことは、この国の一部の上層部に知られることになるでしょう。
まぁ、それは致し方ない話です。
問題は、護衛役のファントムが二名しかこの国に入れなかったことですね。
万が一のことがあった場合、この人数で私とクルト様を同時に守れるかどうかは不安です。もしもの時は私よりもクルト様を優先して守ってもらいたいのですが、きっとミミコさんから下っている命令は違うものなのでしょう。
ファントムは私の命令には基本逆らいませんが、しかし彼女達の本当の主はミミコさん。優先すべきは彼女の命令なのです。
そのため、私の命とクルト様の命、どちらを優先するかも決まっています。いざとなればクルト様を見捨てて、私を守ろうとする。
はぁ、クルト様を失うことは国家にとっての損失どころか、世界にとっての大損失ですのに。
それに、チッチという得体の知れない女性――彼女もまた謎です。
クルト様の言うことが事実だとすれば、ユーリさんと同じ魔道具の鞘を持っているわけですけれども……果たして、信用していいのか。
「ここだ! ここが美味しい店だよ!」
チッチがそう言って私達を案内したのは、小さな店でした。
「お休みのようですけど――」
扉には、準備中の札が掛けられています。中では人の気配はするようですが、もう営業は終わったのでしょう。
まぁ、私としては助かりました。どんなに美味しい料理店でもクルト様の料理には敵いません。
できることなら、今日は宿を取って厨房を借り、クルト様に料理を作っていただきたいです。
もちろん、私もクルト様の横でお手伝いをして――あぁ、それってまるで新婚夫婦みたいではありませんか。
今夜は厨房がついている宿をタイコーン辺境伯が予約してくださっていますので、そちらに向かいましょう。
「昼の営業時間は終わったみたいだね。でもほら、そこは坊ちゃんがいるからさ。ホムーロス王国の士爵様が訪ねてきて、追い払うような料理人はいないさ」
「え? で、でもそんな店の人に無理を言うなんてできませんよ」
良識のあるクルト様は、貴族であることを笠に着て、他人に無理強いをするようなことはできないでしょう。
しかし同時に押しに弱いため、非常に困った顔をしていました。
仕方ありません。ここは私がいきましょう。
幸い、路銀は十分持っています。金貨を数枚握らせれば、食事くらい提供してくれるでしょう。
「私が交渉してきます。無理だったら諦めてくださいね」
私は店の扉を二回ノックしました。
反応がないので開けてみると、美味しそうな香りが漂ってきます。クルト様の料理ほどではありませんが、ここまでのいい香りは、宮廷の厨房を覗いた時でもしませんでした。
と、厨房の奥から、シェフ姿の男が現れました。
「悪いが準備中だよ。飯を食いたければ夜にもう一度来な」
ぶっきらぼうにそう言ってシェフは厨房に帰ろうとします。
「お待ちください、実は私達は旅の者でして、この後すぐに北の町に向かわないといけません。失礼でなければ、こちらで料理を数皿提供していただけないでしょうか」
私はそう言って金貨を数枚差し出したのですが、予想外にもシェフは首を横に振りました。
「悪いが、うちの店は貴族様でも平民でも、金持ちでも貧乏人でも平等に扱うって決めているんでな。外に待たせている士爵様にもそう伝えろ」
……あら、聞こえていましたのね。まぁ、チッチのあの大きな声では仕方ありません。
これは絶対に考えを変えないタイプですね。
交渉相手としては非常に厄介です。
こういう時は、相手のプライドを刺激するのが一番でしょう。
もちろん、それは諸刃の剣ですが、しかしそこを上手に処理してこそ交渉人です。
「そこまで仰るということは、よほど美味しい料理を作る店なのですか?」
「…………どういう意味だ?」
「いえ、頑固なシェフの店、そう言えば聞こえはいいのですけれど、そういうシェフの雰囲気に客が騙されているだけということはないか、と思っただけです。本当にこの店は最高に美味しい料理が食べられるのでしょうか?」
「……最高の料理……ははは、そんなもん、今の俺なんかに作れるわけないだろ」
「……え?」
これには食いつくだろうという挑発でしたが、予想外の答えが返ってきました。
シェフはどこか懐かしそうに微笑み、私に背を向けたままスープを煮込みます。
ここで激昂してくれたら交渉しやすかったのですけれども。
「本当に最高の料理を作れる料理人を、俺は知っている。人智を超えた料理人だ。俺はその人に近付きたくて、料理を続けているんだ。だから営業と営業の間は料理を研究する時間と決めている。そういうわけで、悪いが帰ってくれ」
「ま、待ってください。その人智を超えた料理人というのは、まさか――」
その人物に、心当たりがあります。
名前を尋ねようとしたその時、私の背後の扉が開きました。
「あの、リーゼさん、無理そうでしたらいいですよ」
顔を出したのはクルト様です。
その直後――
「し……し…………師匠おぉぉぉぉぉぉおっ!?」
シェフが驚き、その場に尻もちをつきました。
あぁ、やはりそうですか。クルト様の料理を食べたんですね、この人。
「あ、お久しぶりですゲールハークさん。ここ、ゲールハークさんの店だったんですね」
クルト様は懐かしい知人に会ったような気楽さで声をかけました。
「師匠が俺の店に……もう俺は死んでもいい」
はぁ、この人もクルト様に運命を変えられたうちの一人だったんですね。
「どうなってるんだ?」
泣き崩れるシェフ――ゲールハークさんを見て、後から入ってきたチッチは首を傾げました。
少し正気を取り戻したゲールハークさんは、立ち上がって私達を案内してくれます。
その間に、クルト様から彼について聞きました。
クルト様が言うには、ゲールハークさんは、クルト様が私やユーリさんと出会う以前、「炎の竜牙」が拠点としていた宿でシェフをしていたようです。
その時にクルト様の故郷の料理に興味を持ち、レシピを学んだそうで、それ以来クルト様のことを師匠と呼ぶようになったとのことです。
その話を聞いていたゲールハークさんは苦笑しても、否定はしませんでした。
おそらく、彼も知っているのでしょう――クルト様に自身の秘密を知らせてはいけないと。クルト様の気絶体質のことまで知っているかどうかはわかりませんが。
ってあれ?
「ゲールハークという名前、どこかで聞いたことがあると思っていたのですが、もしかしてミショルンガイドブックで七つ星を取ったホテル・ココノワールの総料理長のゲールハークさんですか?」
「ああ、そんなこともあったな」
やはり――やはりそうだったのですか。
ホテル・ココノワールのレストランといえば、かつて国で一番とも言われていたレストランです。しかし去年、総料理長が突然引退を宣言。その結果、美食の格付けの権威であるミショルンガイドブックでの今年の評価が、星を二つも落として五つ星レストランになったと言われています。
そのくらい、彼の料理の腕は素晴らしいんだとか。
私も一度、彼の料理を食べたことがあります。幼かったので味の詳細は覚えていませんが、とても美味しかったことだけは覚えています。
まさか、その彼の引退にクルト様が関わっていたとは。そしてあろうことか、そのゲールハークさんがクルト様のことを師匠と仰いでいるとは。
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