1 / 28
uninstall その1
しおりを挟む
「貴様との婚約を破棄する」
断罪のような宣言に、エクス・ピークマンは足を止めた。今のはメレディス王子の声だ。近衛騎士である自分を置き去りにして何をしているのだろう、と物陰から様子をうかがう。
王宮の庭園にある四阿にいるのは三人。第三王子であるメレディス王子、そしてロングホーン侯爵家のヴィストリア姫、そして、この国の聖女であるドロシー・エーメス様だ。メレディス王子の婚約者でもある。
だが当の王子はヴィストリア姫の腰を左腕で抱き寄せており、姫は姫で王子の胸に顔を埋めており、親密さを必要以上に強調している。かねてより不義の噂が王宮内でささやかれていたし、エクス自身も何度か現場を目の当たりにしたこともあるが、まさか婚約者の前で堂々と見せつけるとは。恥知らずにも程がある。
王子も姫も金髪碧眼の美形だが、向かい合っているドロシーはまるで違っていた。
灰色がかった銀髪をうなじのあたりで切り揃え、金と青の虹彩異色は初代聖女にも見られた証である。金糸の入った白のローブは代々続く聖女の礼服だ。
本来ならゆったりしたデザインの筈なのに、内側から引っ張られてどこもかしこも張り詰めている。瞳も頬の肉で押し上げられて糸のようにしか開かない。この国では、女性は細身の方が美しいとされている。ドロシーの体型はその基準から大きく外れていた。
「理由は聞くまでもあるまい。貴様のような女が聖女というだけで婚約者だと? ふざけるな」
聖女になり立ての頃はそうでもなかったが、今では『酒樽が服を着て歩いている』と陰口を叩かれる有様である。体型だけではない。お付きの者が手入れをしているはずなのに肌は荒れ、髪も艶を失っている。
「貴様は婚約者どころか聖女すらふさわしくない。ただ今を以て聖女の任を解く」
まあ、とヴィストリア姫が嬉しそうに自身の手を王子の背中に回す。
正気だろうか、とエクスは主であるメレディスの考えが理解出来なかった。第三王子に聖女解任の権限などない。
なにより、聖女がいなくなればこの国は終わりだというのに。
ウィンディ王国は広大で肥沃な土地だが、王都の周囲は人の手が及ばぬ荒野や大森林であり、魔物の生息地だった。古来から頻繁に魔物の大群が押し寄せ、甚大な被害をもたらしていた。
それが打開されたのが三百年前である。時の偉大な賢者が王宮の地下に特殊な魔法陣を作り、王都を中心として王国に『結界』を張ったのだ。それにより、魔物の類は王都付近に近づけなくなった。『結界』を張り続けるには、特別な波長を持った魔力を大量に必要とする。そのため、一日に一回は補充しなくてはならなかった。
王国では国内から特別な魔力波長を持った人間を探し出し、『結界』の維持に当たらせた。
男性もいたが肉体的に女性の方が魔力が多い。やがて女性のみの仕事とされた。だが年月が経つにつれて、特別な波長を持つ人間が少なくなっていった。波長が合っても『結界』を維持するだけの魔力を持たず、すぐに魔力欠乏で倒れる有様だった。当時の国王は国民全員に魔力の検査を義務づけた。
同時に『結界』の管理者を『聖女』と呼び、囲い込むために高位貴族並みの地位を与え、王族や有力貴族との婚姻を推し進めていった。
それでも『聖女』は徐々に減っていった。特にここ数十年は短命の者が多い。三年から五年程度で、引退するか命を落とした。当代ではドロシーただ一人だ。
奴隷の両親から生まれ、生まれてすぐに孤児院に預けられた。十歳の時に魔力検査で歴代最高クラスの数値を叩き出し、聖女候補として選ばれた。そして先代の逝去に伴い、エーメスの姓と正式に聖女に任ぜられた。その時、結婚相手に選ばれたのは年齢の近かったメレディスだ。メレディスが十三歳、ドロシーが十五歳の時である。
だが、メレディスは隣国であるミレニアム皇国との政情不安や、ドロシーの体調などを理由にずるずると引き延ばしていた。婚約から十年経っても未だに結婚に踏み切る気配はない。ドロシー以降、聖女候補すらいないというのに。
当初はせっついていた国王王妃両陛下も相次いで病で倒れ、離宮で静養している。国王代理である兄の王太子殿下が代わりに婚姻を促しているが、結婚に踏み切る様子はなかった。
「ふん、その顔は『結界』はどうするつもりだ、と言いたいのだろう。残念だったな。貴様の魔力など必要ない」
勝ち誇った顔でこれを見ろ、とメレディスが取り出したのは金色の腕輪である。
「これは持ち主の魔力を引き上げる。これを使えば貴様でなくても量は充分出せる」
それだけではない、と今度は足下に置いていた薄い石版を持ち上げる。何やら文字が書いてあるようだが、遠くてエクスからはよく見えない。
「貴様しか『結界』を維持出来ないというのなら、魔法陣を新しく作り直せばいいのだ。これまでのものとは違い、大地や空気の中にある魔力からも吸収できる。それに大人数での魔力補給も可能だ。仮に腕輪が壊れたとしても普通の人間が十人もいれば、何とかなる。全てはヴィストリアのおかげだ」
こそこそと隠れて魔術師や賢者を招聘していたのはこのためか、とエクスは腑に落ちた。全てはドロシーとの婚約を破棄するためだ。いくらイヤだと言っても『結界』は維持しなくてはならない。王族としての義務を放棄すれば、資質を疑われる。最悪、メレディスの方が王族の籍を剥奪されてしまう。
ヴィストリアは近隣でも評判の美姫であり、メレディスとは幼馴染みである。強い魔力を持っているらしいが、聖女になれる特別な波長は持っていない。ドロシーとの婚約を破棄し、ヴィストリアと結婚するために、『結界』の仕組みそのものに手を加えようとしているのだ。
ロングホーン侯爵家は代々パトロンとして魔術師を積極的に保護してきた。メレディスと協力して新しい『結界』の魔法陣を作り出したのだろう。
「すでに実験も成功している。この『新結界』があれば聖女など必要ない。……ああ、いや、聖女は必要だな。だがそれは貴様ではない」
芝居がかった仕草で、ヴィストリアの髪を撫でる。
「新しい結界には新しい聖女を。初代『新聖女』それがこのヴィストリアだ。そして、我が妃でもある」
頬を赤らめながらうっとりとした表情で更にメレディスに抱きつく。
勝手にしてくれ、とげんなりしたが、先程からドロシーが何一つ言葉を発しないのが気になっていた。エクスのいる位置はちょうど真後ろなので表情が見えない。
「あーのー」
牛のように間延びした声はドロシーのものだ。
「どうした? 抵抗してもムダだぞ。すでに父上や兄たちの了承も得ている。今後は『新結界』でウィンディ王国を守護するとな」
根回し済みのようだ。手回しのいい。
「こーんーやーくーはーきーとーはー」
声自体は悪くないのだが、わざとやっているのではないかと思うほどのんびりした口調だ。端で聞いているエクスも苛つくほどに。
「どーうーいーうーこーとーでーしょーうーかー」
「今頃そこか!」
メレディスがたまりかねた様子で声を上げた。
「だからお前はイヤなのだ。そのような姿を恥ずかしげもなくさらした上に、のろまで無能とは救えないな。仮にも聖女ならば『結界』だけではなく、ケガ人でも直したらどうだ」
歴代の聖女には治癒の奇跡でケガ人や病人を治した者もいるといわれている。だがドロシーは『結界』の保持が手いっぱいなのか、そうした奇跡を使ったという話は聞かない。そのせいか、聖女ドロシーの名前は貴族や王宮勤めの者だけでなく、平民の間でも軽侮の対象だという。
「そーれーかーらー」
まだドロシーの話は続いている。
「そーちーらーのーごーれーいーじょーうーはーどーなーたーでーすーかー? もーしーかー……」
「もういい!」
メレディスはドロシーを突き飛ばし、強引に話を打ち切った。
「貴様と話していると頭が痛くなる。とにかく、貴様はお役御免……いや、貴様には別の任務についてもらう」
にやり、と端正な顔を崩す。その表情は弱者を苛む喜びに満ちていた。
「貴様にはこれから聖女として辺境への慰問に出てもらう」
『結界』は王都を中心に広がっているが、遠ざかるほど効果は弱くなる。何より三百年の間に王国の版図も広がり、結界の外にも領地は広がっていた。そのため結界の外では魔物の被害が多発し、犠牲者も多く出ている。
幾度も救援願いを出されているのに、王都および『結界』内部に住む王侯貴族は、関係ないとばかりに無視を決め込んでいる。先日も西にあるマッキンレイ辺境伯からの増援願いを退けていた。
「あの口うるさい年寄りも聖女様直々の慰問とあれば文句は言うまい」
「まあ、素晴らしいお考えですこと」
ヴィストリアがうっとしたした顔でほめたたえる。エクスには取り巻きやほかの近衛騎士がよく使うおべっかにしか聞こえなかった。
「……」
ドロシーはまだ四阿の床に転がっていた。立ち上がろうとしているようだが、その動きは緩慢そのものだった。
「まあ、みっともない。あれが聖女だなんて」
「『酒樽聖女』どころか、あれでは『芋虫聖女』だな」
いつの間にか王宮勤めの女官や騎士たちが集まっていた。誰一人助け起こそうとせず、嘲笑を浴びせる。
「目障りだ、さっさと立て!」
「……」
怒鳴られても、床に手を突いて起き上がろうとしているところだった。聞こえている様子はない。
「さっさと立てと言っているのだ!」
メレディスは口角を吊り上げ、足を上げて蹴り飛ばそうとする。
「お待ちください」
さすがにこれ以上は見過ごせない。エクスは物陰から姿を現すとメレディスの前に立ちはだかる。
断罪のような宣言に、エクス・ピークマンは足を止めた。今のはメレディス王子の声だ。近衛騎士である自分を置き去りにして何をしているのだろう、と物陰から様子をうかがう。
王宮の庭園にある四阿にいるのは三人。第三王子であるメレディス王子、そしてロングホーン侯爵家のヴィストリア姫、そして、この国の聖女であるドロシー・エーメス様だ。メレディス王子の婚約者でもある。
だが当の王子はヴィストリア姫の腰を左腕で抱き寄せており、姫は姫で王子の胸に顔を埋めており、親密さを必要以上に強調している。かねてより不義の噂が王宮内でささやかれていたし、エクス自身も何度か現場を目の当たりにしたこともあるが、まさか婚約者の前で堂々と見せつけるとは。恥知らずにも程がある。
王子も姫も金髪碧眼の美形だが、向かい合っているドロシーはまるで違っていた。
灰色がかった銀髪をうなじのあたりで切り揃え、金と青の虹彩異色は初代聖女にも見られた証である。金糸の入った白のローブは代々続く聖女の礼服だ。
本来ならゆったりしたデザインの筈なのに、内側から引っ張られてどこもかしこも張り詰めている。瞳も頬の肉で押し上げられて糸のようにしか開かない。この国では、女性は細身の方が美しいとされている。ドロシーの体型はその基準から大きく外れていた。
「理由は聞くまでもあるまい。貴様のような女が聖女というだけで婚約者だと? ふざけるな」
聖女になり立ての頃はそうでもなかったが、今では『酒樽が服を着て歩いている』と陰口を叩かれる有様である。体型だけではない。お付きの者が手入れをしているはずなのに肌は荒れ、髪も艶を失っている。
「貴様は婚約者どころか聖女すらふさわしくない。ただ今を以て聖女の任を解く」
まあ、とヴィストリア姫が嬉しそうに自身の手を王子の背中に回す。
正気だろうか、とエクスは主であるメレディスの考えが理解出来なかった。第三王子に聖女解任の権限などない。
なにより、聖女がいなくなればこの国は終わりだというのに。
ウィンディ王国は広大で肥沃な土地だが、王都の周囲は人の手が及ばぬ荒野や大森林であり、魔物の生息地だった。古来から頻繁に魔物の大群が押し寄せ、甚大な被害をもたらしていた。
それが打開されたのが三百年前である。時の偉大な賢者が王宮の地下に特殊な魔法陣を作り、王都を中心として王国に『結界』を張ったのだ。それにより、魔物の類は王都付近に近づけなくなった。『結界』を張り続けるには、特別な波長を持った魔力を大量に必要とする。そのため、一日に一回は補充しなくてはならなかった。
王国では国内から特別な魔力波長を持った人間を探し出し、『結界』の維持に当たらせた。
男性もいたが肉体的に女性の方が魔力が多い。やがて女性のみの仕事とされた。だが年月が経つにつれて、特別な波長を持つ人間が少なくなっていった。波長が合っても『結界』を維持するだけの魔力を持たず、すぐに魔力欠乏で倒れる有様だった。当時の国王は国民全員に魔力の検査を義務づけた。
同時に『結界』の管理者を『聖女』と呼び、囲い込むために高位貴族並みの地位を与え、王族や有力貴族との婚姻を推し進めていった。
それでも『聖女』は徐々に減っていった。特にここ数十年は短命の者が多い。三年から五年程度で、引退するか命を落とした。当代ではドロシーただ一人だ。
奴隷の両親から生まれ、生まれてすぐに孤児院に預けられた。十歳の時に魔力検査で歴代最高クラスの数値を叩き出し、聖女候補として選ばれた。そして先代の逝去に伴い、エーメスの姓と正式に聖女に任ぜられた。その時、結婚相手に選ばれたのは年齢の近かったメレディスだ。メレディスが十三歳、ドロシーが十五歳の時である。
だが、メレディスは隣国であるミレニアム皇国との政情不安や、ドロシーの体調などを理由にずるずると引き延ばしていた。婚約から十年経っても未だに結婚に踏み切る気配はない。ドロシー以降、聖女候補すらいないというのに。
当初はせっついていた国王王妃両陛下も相次いで病で倒れ、離宮で静養している。国王代理である兄の王太子殿下が代わりに婚姻を促しているが、結婚に踏み切る様子はなかった。
「ふん、その顔は『結界』はどうするつもりだ、と言いたいのだろう。残念だったな。貴様の魔力など必要ない」
勝ち誇った顔でこれを見ろ、とメレディスが取り出したのは金色の腕輪である。
「これは持ち主の魔力を引き上げる。これを使えば貴様でなくても量は充分出せる」
それだけではない、と今度は足下に置いていた薄い石版を持ち上げる。何やら文字が書いてあるようだが、遠くてエクスからはよく見えない。
「貴様しか『結界』を維持出来ないというのなら、魔法陣を新しく作り直せばいいのだ。これまでのものとは違い、大地や空気の中にある魔力からも吸収できる。それに大人数での魔力補給も可能だ。仮に腕輪が壊れたとしても普通の人間が十人もいれば、何とかなる。全てはヴィストリアのおかげだ」
こそこそと隠れて魔術師や賢者を招聘していたのはこのためか、とエクスは腑に落ちた。全てはドロシーとの婚約を破棄するためだ。いくらイヤだと言っても『結界』は維持しなくてはならない。王族としての義務を放棄すれば、資質を疑われる。最悪、メレディスの方が王族の籍を剥奪されてしまう。
ヴィストリアは近隣でも評判の美姫であり、メレディスとは幼馴染みである。強い魔力を持っているらしいが、聖女になれる特別な波長は持っていない。ドロシーとの婚約を破棄し、ヴィストリアと結婚するために、『結界』の仕組みそのものに手を加えようとしているのだ。
ロングホーン侯爵家は代々パトロンとして魔術師を積極的に保護してきた。メレディスと協力して新しい『結界』の魔法陣を作り出したのだろう。
「すでに実験も成功している。この『新結界』があれば聖女など必要ない。……ああ、いや、聖女は必要だな。だがそれは貴様ではない」
芝居がかった仕草で、ヴィストリアの髪を撫でる。
「新しい結界には新しい聖女を。初代『新聖女』それがこのヴィストリアだ。そして、我が妃でもある」
頬を赤らめながらうっとりとした表情で更にメレディスに抱きつく。
勝手にしてくれ、とげんなりしたが、先程からドロシーが何一つ言葉を発しないのが気になっていた。エクスのいる位置はちょうど真後ろなので表情が見えない。
「あーのー」
牛のように間延びした声はドロシーのものだ。
「どうした? 抵抗してもムダだぞ。すでに父上や兄たちの了承も得ている。今後は『新結界』でウィンディ王国を守護するとな」
根回し済みのようだ。手回しのいい。
「こーんーやーくーはーきーとーはー」
声自体は悪くないのだが、わざとやっているのではないかと思うほどのんびりした口調だ。端で聞いているエクスも苛つくほどに。
「どーうーいーうーこーとーでーしょーうーかー」
「今頃そこか!」
メレディスがたまりかねた様子で声を上げた。
「だからお前はイヤなのだ。そのような姿を恥ずかしげもなくさらした上に、のろまで無能とは救えないな。仮にも聖女ならば『結界』だけではなく、ケガ人でも直したらどうだ」
歴代の聖女には治癒の奇跡でケガ人や病人を治した者もいるといわれている。だがドロシーは『結界』の保持が手いっぱいなのか、そうした奇跡を使ったという話は聞かない。そのせいか、聖女ドロシーの名前は貴族や王宮勤めの者だけでなく、平民の間でも軽侮の対象だという。
「そーれーかーらー」
まだドロシーの話は続いている。
「そーちーらーのーごーれーいーじょーうーはーどーなーたーでーすーかー? もーしーかー……」
「もういい!」
メレディスはドロシーを突き飛ばし、強引に話を打ち切った。
「貴様と話していると頭が痛くなる。とにかく、貴様はお役御免……いや、貴様には別の任務についてもらう」
にやり、と端正な顔を崩す。その表情は弱者を苛む喜びに満ちていた。
「貴様にはこれから聖女として辺境への慰問に出てもらう」
『結界』は王都を中心に広がっているが、遠ざかるほど効果は弱くなる。何より三百年の間に王国の版図も広がり、結界の外にも領地は広がっていた。そのため結界の外では魔物の被害が多発し、犠牲者も多く出ている。
幾度も救援願いを出されているのに、王都および『結界』内部に住む王侯貴族は、関係ないとばかりに無視を決め込んでいる。先日も西にあるマッキンレイ辺境伯からの増援願いを退けていた。
「あの口うるさい年寄りも聖女様直々の慰問とあれば文句は言うまい」
「まあ、素晴らしいお考えですこと」
ヴィストリアがうっとしたした顔でほめたたえる。エクスには取り巻きやほかの近衛騎士がよく使うおべっかにしか聞こえなかった。
「……」
ドロシーはまだ四阿の床に転がっていた。立ち上がろうとしているようだが、その動きは緩慢そのものだった。
「まあ、みっともない。あれが聖女だなんて」
「『酒樽聖女』どころか、あれでは『芋虫聖女』だな」
いつの間にか王宮勤めの女官や騎士たちが集まっていた。誰一人助け起こそうとせず、嘲笑を浴びせる。
「目障りだ、さっさと立て!」
「……」
怒鳴られても、床に手を突いて起き上がろうとしているところだった。聞こえている様子はない。
「さっさと立てと言っているのだ!」
メレディスは口角を吊り上げ、足を上げて蹴り飛ばそうとする。
「お待ちください」
さすがにこれ以上は見過ごせない。エクスは物陰から姿を現すとメレディスの前に立ちはだかる。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
罰として醜い辺境伯との婚約を命じられましたが、むしろ望むところです! ~私が聖女と同じ力があるからと復縁を迫っても、もう遅い~
上下左右
恋愛
「貴様のような疫病神との婚約は破棄させてもらう!」
触れた魔道具を壊す体質のせいで、三度の婚約破棄を経験した公爵令嬢エリス。家族からも見限られ、罰として鬼将軍クラウス辺境伯への嫁入りを命じられてしまう。
しかしエリスは周囲の評価など意にも介さない。
「顔なんて目と鼻と口がついていれば十分」だと縁談を受け入れる。
だが実際に嫁いでみると、鬼将軍の顔は認識阻害の魔術によって醜くなっていただけで、魔術無力化の特性を持つエリスは、彼が本当は美しい青年だと見抜いていた。
一方、エリスの特異な体質に、元婚約者の伯爵が気づく。それは伝説の聖女と同じ力で、領地の繁栄を約束するものだった。
伯爵は自分から婚約を破棄したにも関わらず、その決定を覆すために復縁するための画策を始めるのだが・・・後悔してももう遅いと、ざまぁな展開に発展していくのだった
本作は不遇だった令嬢が、最恐将軍に溺愛されて、幸せになるまでのハッピーエンドの物語である
※※小説家になろうでも連載中※※
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
婚約破棄されましたが、おかげで聖女になりました
瀬崎由美
恋愛
「アイラ・ロックウェル、君との婚約は無かったことにしよう」そう婚約者のセドリックから言い放たれたのは、通っていた学園の卒業パーティー。婚約破棄の理由には身に覚えはなかったけれど、世間体を気にした両親からはほとぼりが冷めるまでの聖地巡礼——世界樹の参拝を言い渡され……。仕方なく朝夕の参拝を真面目に行っていたら、落ちてきた世界樹の実に頭を直撃。気を失って目が覚めた時、私は神官達に囲まれ、横たえていた胸の上には実から生まれたという聖獣が乗っかっていた。どうやら私は聖獣に見初められた聖女らしい。
そして、その場に偶然居合わせていた第三王子から求婚される。問題児だという噂の第三王子、パトリック。聖女と婚約すれば神殿からの後ろ盾が得られると明け透けに語る王子に、私は逆に清々しさを覚えた。
虐げられた聖女は精霊王国で溺愛される~追放されたら、剣聖と大魔導師がついてきた~
星名柚花
恋愛
聖女となって三年、リーリエは人々のために必死で頑張ってきた。
しかし、力の使い過ぎで《聖紋》を失うなり、用済みとばかりに婚約破棄され、国外追放を言い渡されてしまう。
これで私の人生も終わり…かと思いきや。
「ちょっと待った!!」
剣聖(剣の達人)と大魔導師(魔法の達人)が声を上げた。
え、二人とも国を捨ててついてきてくれるんですか?
国防の要である二人がいなくなったら大変だろうけれど、まあそんなこと追放される身としては知ったことではないわけで。
虐げられた日々はもう終わり!
私は二人と精霊たちとハッピーライフを目指します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる