鬼畜ゲーとして有名な世界に転生してしまったのだが~ゲームの知識を活かして、家族や悪役令嬢を守りたい!~

ガクーン

文字の大きさ
20 / 115

情報の対価 その3

しおりを挟む
「私は……」

 言葉に詰まるアルス。



 けど俺は……、皆の優しさに触れて、少しずつ心を許す様になっていた。

 昔なら人の表情や仕草を見て、機嫌ばかり伺うような奴だったけど、今は面と向かって話せるようになった。


 そうだ……。少しずつ変わればいい。


 今まで気づかなかった一番大切な事に気が付くアルス。


 あっ、そうか。俺は皆のお陰で……


 先程まで重かった気持ちが、少しずつ軽くなっていくのを感じた。


 アルスは顔を上げ、皆を見渡す。

 
 そうだな……

 アルスはここで、ある決心を再びする。

 俺は……、この世界で俺に優しくしてくれた人たちを守りたい。

 お父様とお母様を。
 自分を慕ってくれる部下を。
 両親が守ってきたこの領地、そして住民を。


 最初に願ったあの思い。

 
 ゲームをやっていた頃に惚れ、俺の心の支えになってくれたあの子を……

 どうにかしてあげたいと願っていたあの子の未来を、悲しい未来を変えてあげたい。

 
 だから俺は……


 アルスは覚悟を持った目で、もう一度言い直す。


「自分の家族や仲間を、領地を、そして……、とある女性を守りたい。もちろん、アイリスさんもニーナさんも俺にとったら部外者でも何者でもなく、守りたい人に入っていますし、その為にも俺は強くならなくちゃいけない。でも、俺自身が強くなるのには限界があります。なので仲間を、信頼できる仲間を作り、築き上げていかなければならないと思ってます。だから……」

 アルスは固い決意を抱き、アイリスやニーナ。そして、エバンへと気持ちを伝える。

「俺に力を貸してくれませんか?」

 アルスの本心からの願いだった。

 場に静けさが訪れる。

 一秒、二秒と時間が過ぎ去る中、その沈黙を破る人物がいた。

「アルス様が私や妹を助けてくれた時から、どこまでも付いていこうと決めました。それが、どれほど険しい道のりであっても、皆がアルス様を裏切っても、私だけはずっとアルス様の味方であろうと。そう決意したのです。だからどうか、私をアルス様の剣や盾として使って下さい」

 エバンは立ち上がりながら熱く答える。

 その光景を見ていたアイリスが。

「私はね……、初めて君に会った時から、何故か親しみを感じてたんだ。でもさ、私達が会ってからまだ1ヶ月ぐらいだよ? 今日で会うのは2回目だしさ……。でも、君に力を貸すのは悪い気がしない。ううん。今じゃ君に力を貸してあげたいとも思ってる。だから……、何か用があったら力を貸してあげる。あっ、勘違いしないでよ? ちゃんとそれ相応の料金は貰うからね!」

 アイリスは少し照れながら、でも自身の思いを答える。

 そんなアイリスの発言に驚きを見せるのはニーナであった。

「アイリスちゃんがここまでデレてるの、初めて見た……」

「茶化さないでください!」

 顔を真っ赤にして起こるアイリス。

「ふーん。でもそうか……、アイリスちゃんの人を見る目は商会一。うん。お兄ちゃんになら力を貸してあげてもいいのかもね」

 そうしてニーナは何処からともなく短刀を取り出し、目にもとまらぬ速さで空を切る。

 その光景にアルスとエバンが唖然としていると。

「これでも私は戦闘じゃ敵なしなんだよ? だから、特別にお兄ちゃんの為に一回だけ。いつ、どんな時でも、私を呼べば助けてあげる。でも、事前に連絡ぐらいは頂戴ね?」

 ニーナの顔は笑っていたが、目は笑っていない。

 むしろ、アルスを慎重に吟味していたようで、何かに納得するようにうんうん。と首を小さく振ると、1回だけならと言う約束で力を貸してくれることになった。

「ありがとう。みんな」

 アルスは奥底から湧き上がってくるモノに少し驚きながらも、嬉しそうに答える。


 それからは連絡方法や、協力の条件を決め、王都の内部情報をもう一度、皆で整理し終えると。

「じゃあ、今日はこれぐらいかな。また何かあったら連絡するよ」

 アイリスはそう言いながら、アルスへ重たそうな小袋を手渡す。

 これは……硬貨袋?

 かなり重量がある。

 アルスはその袋を受け取り、中身を確認する。

「これは……っっ! 聖金貨……、ですか?」

 袋を開けると中には、信じられない量の聖金貨が詰まっており、驚きのあまり落としそうになる。

「そうだよ。アルス君の提供してくれた情報にはそれぐらいの価値がある。あっ、中身は聖金貨25枚ね」

 アルスは中身の枚数を聞いてさらに驚きそうになる。

 聖金貨25枚!? 
 まてよ……、聖金貨1枚が大金貨10枚。
 大金貨1枚は金貨100枚だから……、総額、金貨25000枚!?

 はははっ……、ぶっ飛んだ量だな。

 アルスは驚きを通り越して呆れてしまう。

「流石アルス様です!」

 そんなアルスを横目に、目をキラキラさせながら言葉をかけるエバン。

 むしろこれまで以上に尊敬した眼差しである。

「大袈裟だよ……」

 エバンの言葉でアルスは落ち着きを取り戻し、もう一度聖金貨へと目を向ける。そして、聖金貨の枚数をちゃんと数え、枚数があることを確認する。

「ちゃんと25枚あったよね? 今日は伝えたいこともすべてアルス君に伝えたし、情報料も払ったから、これでお開きにしようか」

「そうですね。今日は有意義な時間を過ごせました。もちろん、この聖金貨も有難く使わせていただきます」

「こっちこそ助かったよ。また何かあったら連絡頂戴ね?」
 
「はい、何かあったらすぐ連絡します」

 そのあと、アルス達はアイリス達に再度お礼を言い、ゼンブルグ商会を後にする。

 そして、大金の入った袋をエバンに託し、屋敷へと帰っていったのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である! 主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない! 旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む! 基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。 王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...