鬼畜ゲーとして有名な世界に転生してしまったのだが~ゲームの知識を活かして、家族や悪役令嬢を守りたい!~

ガクーン

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久しぶりの再会 その2

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 前世、嫌と言うほど見た、アルスにとって馴染みのある建物。それは……

「見えました? あれこそ王都を象徴する建物。王宮です。」


 おいおい……、貴族街に入って、全然屋敷に到着しないなって思ってたら、王宮のすぐ近くにあったなんて。

 これだけでも、アルザニクス家の貴族としての地位がとてつもなく高いことが分かる。

 でもそうか。俺に聖金貨数枚相当のアイテムをポンとくれるぐらいのお家だ。

 そのぐらいあっても可笑しくないのか? いや、可笑しい……、よな?


 アルスは自身が考えていたよりもアルザニクス家の階級が高いということに、驚きを隠せていない様子。

「そういえばお母様はどこ行った?」

 だが、切り替えだけは早い男であったアルスは、すぐに調子を取り戻し、エバンへ声をかける。

「奥様ですか? 奥様なら先ほどお屋敷の中へと入られたはずですが」

 その言葉を聞き、花々が咲き乱れる庭などには目もくれず、屋敷の正面口へと歩みを進める。

「アルス様。今お開けします」

 エバンがアルスの前に素早く移動し、二枚開きの正面玄関の口を開く。

 まず、アルスの目に飛び込んできたのはアルスの父であるガイルの銅像。

 その横でアルスの母、サラと、もう一人、銅像に似た男。アルス似の金髪高身長イケメン、つまりアルスの父、ガイルが慎ましく、それでいて楽しそうに会話していた。

「そうか。アルスがもうそんなに……」

 サラの声は聞こえないが、ガイルの声は遠くまで聞こえるような響く声の持ち主であったため、アルスにまで声が届く。


 アルスは二人の会話を邪魔しないように遠くから見守っていると、サラがアルスの存在に気が付いたようで、小さく手を振る。

「どうしたんだ?」

 響くような声でサラが手を振った相手を確認する様に、後ろを振り向くと、こちらからでも分かる位に嬉しそうに破顔する。

「アルスじゃないか!」

 ガイルは飛びかかるように、もの凄い勢いでアルスに迫ると、両脇に手を入れ、軽く持ち上げる。

「おっ、お父様! お久しぶりです。1年ぶりでしょうか?」

 アルスは持ち上げられた衝撃で声が上擦りながらも、久しぶりに会えたからか、嬉しそうにしながら答える。

「最後に会ったのは1月の頃だもんな……。お父さん、アルスに会えなくてどんだけ寂しかったか……、アルス……、会いたかったぞー!」

 アルスの父であるガイルは涙目になりながら、自慢の髭をアルスの顔に押し付け、アルスを抱きしめる。

「痛い、痛いですお父様! 髭が! 髭が刺さってます! 顔に刺さっています!」

 アルスは抱きしめられた衝撃と、髭が顔に刺さる痛みでガイルの腕の中でジタバタしていると。

「あなた。アルスが痛がってるじゃないの。もう離してあげなさい」

 サラがガイルの頭を軽く叩き、アルスを下ろさせる。

「あっ……、悪いアルス。久しぶりに会えたから嬉しくてついな。許してくれ」

 ガイルはしゅんとしながら謝る。

「あはは、大丈夫ですよ、お父様」

 アルスはガイルに抱きしめられて、赤くなった箇所を摩りながら返事をする。

「そういえばさっきから心配そうに見てるそいつは誰だ?」

 ガイルはつい、目に入ったアルスの後ろに居るエバンに視線を向ける。

「あっ、私の後ろに居るのはエバンと申しまして、私の……」

「アルス。それにあなた。こういう話は食事の後にしましょう」

 話が長くなると予感したサラは、二人に声をかける。

「そうだな」「それもそうですね」

 二人はそれぞれ返事をし、ダイニングルームに場所を変えると、既にそこには豪華な料理が並んでいた。

「今日は久しぶりの家族水入らずの食事だからな。二人が好きな料理を作ってもらったんだ」

 こうして、久しぶりのアルスの家族が全員揃っての食事が始まった。


~食事後~

 3人の食事が終わると、残った料理などは下げられ、飲み物だけがテーブルの上に残った状態で、久しぶりのアルザニクス家、全員が揃っての会話が始まる。

 初めはアルスの話題から始まり、3人の間で笑顔が絶えないまま時間もかなり過ぎた頃。時間も時間なので、もうそろそろお開きになるかと思われたある時、ガイルが思い出したかのように、アルスへある質問をする。

「そういえばアルス。銅像の近くで話してた時にアルスの後ろに居た者の話なんだが」

「エバンですか?」

「エバン?」

「エバンはアルスの従者よ」

 サラが付け足す様に会話に混ざると、ガイルが突然口を閉じる。

「……そうか。アルスの従者か」

 ガイルの顔から笑顔が消え、ダイニングルームの空気が凍りつくのを感じるアルス。

「お父様?」

「あ……、すまん。怖かったな」

 ガイルはすぐに笑顔を見せ、何でもないかのように振舞う。

「あなた。セバスの話だと、何に対しても飲み込みが早いし、今じゃ武術の腕も兵の中だったら上の方らしいわよ? そうよね、アルス?」

「はい。最近では、剣を扱う上手さだったら、屋敷の兵の中で一番らしいです」

 アルスの言葉で、一層目を細めるガイル。

「へぇー、そうか……。セバス。エバンって奴を呼んでくれ」

「かしこまりました」

 セバスが音を立てずに部屋からいなくなると、すぐ。エバンを引き連れてダイニングルームへと現れた。

「が、ガイル様。アルス様の従者をやらせていただいています。エバンと申します」

 エバンは自身の名を名乗り、素早く頭を下げる。

「そうか。頭を上げていいぞ」

 ガイルは一言だけ声を発し、エバンへと視線を向ける。

 するとエバンも視線を合わせ、こうして二人が視線を交わした時間、数十秒。

 その間、エバンは言葉を発さず、負けじと視線を合わせたまま、綺麗な姿勢のまま立ち続けた。

 そんな重い空気が漂った部屋で、沈黙を最初に破ったのは、ガイルだった。

「アルスは俺にとって、命よりも大事な息子だ。そんな大事な俺の息子を守る奴は俺よりも強い奴じゃなければならない。そう考えていた」

 ガイルの衝撃発言に誰よりも驚いたのはアルスだった。


 お父様よりも強い奴!?
 
 そんな奴、王国中を探しても数えられるぐらいしかいないだろ……


 アルスが内心焦りながらも、ガイルは話を続ける。

「まぁ、そんな強い奴が都合よくいる訳が無いってことは俺にも分かってる。と言うか、俺以上に強い奴が野良で転がってる訳が無いからな。だから、俺の配下である騎士団の中で優秀な者を育成し、アルスの従者として仕上げようかと考えていたんだが……、アルス。お前はエバンを信頼してるだろ?」

 アルスは無言で頷く。

「そうか」

 ガイルはアルスを見て、我が子を大切に思う親の顔を見せると、もう一度エバンへと視線を向け。

「だが、一つだけ……、エバンに求めることがある」
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