鬼畜ゲーとして有名な世界に転生してしまったのだが~ゲームの知識を活かして、家族や悪役令嬢を守りたい!~

ガクーン

文字の大きさ
44 / 115

王都奴隷オークションの準備 その2

しおりを挟む
「ちょっと二人とも! もう……、私が来たのは、今日が王都奴隷オークションの開催日だから、二人に護衛として付いてきてほしいからって話をしたくてなんだけど? ここまではいいかな?」

 アルスはこのままだと話が進まないと思い、本題へと入る。

「へぇー、奴隷オークションかい。私も一度はこの目で見てみたいと思っていたんだ」

「アルス様の側が私のいるべき場所ですので、もちろん私も付いていきます」

 エバンとミネルヴァは奴隷オークションに付いていく事を了承する。

「良かった。それで行く時間なんですけど、オークションが午後の5時から始まります。あと、そのオークションは格式高いオークションなので、着ていく衣装とかもドレスやスーツじゃなければなりません。そこで、今からセバスさんや使用人たちを呼んで、二人の衣装を見繕ってもらいます! もちろんお金は私が出しますから安心してください」

 アルスが二人にそう説明すると。

「アルス様にお金を出させるのは……、分かりました。ご厚意に甘えたいと思います」

 エバンはアルスに迷惑をかけるのはいけないと思い承諾する。

「いや、私はいいよ。そもそもドレスとかそんな柄じゃ無いからね……、なんだい? ふりじゃないよ? 止めな? 私はドレスなんか着ないからね!」

 ミネルヴァは動きやすい服装が好きなのか、それとも、ただ単にドレスが嫌いなのか、何故かドレスだけは着たくないと言っていたが。

「アルス様。どういたしましょう」

 何処からともなく現れたセバスに驚く様子も見せず。

「エバンには黒メインで。ミネルヴァさんは赤メインでお願いします」

 アルスは二人には絶対この色と決めていた色をセバスに伝える。

「はい。分かりました」

 こうして、二人の元へ来た目的をセバスへ伝え、使用人たちを引き連れたセバスは。

「アルス様。行って参ります」

「私は絶対に行かないよ……、って、誰だい!? 私の体に手をまわした……、や、やめな! ちょっ、アルスー!」

 エバンには男性の使用人を、ミネルヴァには女性の使用人を配置に付け、二人を半ば強制的に屋敷の中へと連れ込んだ。



 ~それから約2時間後。庭のテラス~

「うん! 今日のお茶も美味しい!」

 アルスがテラスでお茶を楽しんでいると、背後からセバスが現れる。

「アルス様。お待たせして申し訳ございません。準備が出来ましたので、どうぞ屋敷の中へ」

「あっ、もう終わったの?」

「はい。着付けまで完了しております」

 流石セバスさんだ。

「ありがとう。セバスさん、どうですか二人は」

「もちろん。一流の仕立て屋をお呼びいたしましたので、最高の出来となっています。あと、旦那様が今回の代金を全額、払っておくともおっしゃっていました」

 またお父様に助けてもらっちゃったな。

 本音としては出来るだけお金を使いたくなかったアルスは、心の底から感謝する。

「分かった。ありがとう。私の代わりにお父様にお礼を言っておいてくれないかい? もちろんあとから私も言うつもりだけどさ」

「承知しました」

 そう答えるセバスの誘導の元、アルスは二人が待つ部屋へと向かった。


「こちらにお二人がおります」

「開けていいよ」

 セバスが丁寧に扉を開け、アルスが中を覗き込む。

 するとそこには男女とも、見とれてしまうほどに、美しい二人が立っていた。

「っ!」

 言葉にならない。正直な感想だ。俺の言葉で言い表せない位に二人が美しく、綺麗。

 まずはエバン。比較的細い印象のエバンは、実は筋肉質な肉体を有しており、その体を存分に沸き立たせるべく、意匠がこらされ、設計された漆黒のスーツによって、全体的に引き締まった印象が見て取れた。また、見る目がある人なら、一流の素材と仕立て屋の作品なのだと分かるように作られているため、貴族との会談でも使えるスーツに仕上がっており、文句のつけどころがない一品だった。

 
 そしてミネルヴァ。まず目が引くのは赤い髪とマッチした赤いドレス。しかも、所々に美しい刺繡が散りばめられており、大胆に空いた胸元とすらりと伸びた足とのコラボレーションが最高に合っている。また、ほんのり分かるほどの化粧を施しているので、いつも以上に妖艶な美女を醸し出しており、オークションでも注目の的になることは間違いないだろう。


「……二人とも似合い過ぎじゃない?」

 アルスは二人の美しさに見惚れていたが、言葉をかける為、息を一旦飲み込み、話す。

「ありがとうございます。自分にはもったいない一品です」

「こんないいドレス着るの初めてだけど、悪くないね。気に入ったよ」

 エバンとミネルヴァは褒められたのが嬉しいのか、満更でもない様子で答える。

 そんな三人は、しばし談笑をしていると。

「アルス様。もうそろそろ……」

 時間を忘れて談笑する三人へとセバスが声をかける。

「もうこんな時間か」

 アルスは時計を見ると、短針は既に3という数字を通り過ぎていた。

「じゃあ行こうか。移動も考えるといい時間だと思う」

 こうしてアルス一行は、セバスが用意していた馬車に乗り込み、奴隷オークション会場へと向かうのだった。


~オークション会場~

「ここがオークション会場か……」

 アルスの前にそびえ立つのは、王都の大通りにある建物の中で、一番大きいとされている物であり、今日のための特別演出か、隅々までいきわたるようにライトアップされていた。しかも、装飾までされており、中々に美しい。

「警備員も多いな……、あれ? 王都兵もいる」

 アルスの目に、王都兵の警備員が映る。

 もしかしたら、お父様もいるかも。

 王都でも類を見ないほどの大規模なオークションということもあって、王都の兵士達も警備にあたっており、辺り一面賑わいを見せていた。

 アルス一行は案内人の案内の元、会場の入り口となる大扉へと足を進めていく中。

「あっ、あれは……」

 王国騎士団3番隊、副隊長を示す紋章を胸に付けた人が警備にあたっていた。

 なんだ……、お父様じゃないのか。

 アルスは少し、気落ちしながらも会場へと入る順番待ちをしていると。

「はい。次の方。お進みください。えっと、貴方は……、ガイルさんの息子さんじゃないですか! ガイルさんの奥様に似て、将来が楽しみな顔をしてますね」

 3番隊、副隊長から声をかけられる。

「ありがとうございます。これからもお父様の事をよろしくお願いします」

「これは丁寧にありがとうございます。隊は違いますが任せてください」

 アルスは当たり障りのない返事をし、その場を後にすると、エバンとミネルヴァを連れて、建物の中へと入っていったのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である! 主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない! 旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む! 基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。 王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

処理中です...