鬼畜ゲーとして有名な世界に転生してしまったのだが～ゲームの知識を活かして、家族や悪役令嬢を守りたい！～

超越種 その4

『11番様が落札致しました！　その金額何と、聖金貨18枚です！　皆様、今一度11番様に大きな拍手をお願いします！』


　勝った？　勝ったのか？


　アルスは信じられないといった様子で目を大きく開く。

　そして、両脇へと視線を向けると。

「アルス様！　やりましたね！　落札しましたよ！」

「やるじゃないかい」

　自分の事の様に喜びを見せるエバンと、酒をあおりながらも、祝福をするミネルヴァがいた。


　その二人交互に見やり、自身がハイエルフの少女を落札できたんだと徐々に実感するアルス。


　や、やった。

　落札できたんだ！


「よ……、よっしゃー！　やったぞ！」


　いつものアルスでは考えられないほどの雄たけびをあげる。


「本当に……、本当に良かった」

　そして、ひとしきり叫んだあとは余程安心したのか、一気に腰を下ろし、ソファーに体を預けてぐったりとする。


　そんなアルスの喜びように、驚きを隠せなかったエバンとミネルヴァであったが、お互い顔を見合わせると、仕方がないなといった具合で苦笑する。


　そして、アルスたちの間に気持ち良いムードが漂っていた時。


「お客様！　ここはVIPルームです！　関係者様以外は立ち入ることは……、うわっ！」


　うん？　なんだ？


　突然外が騒がしくなり、警備員らしき悲鳴と共に扉が蹴破られる。


「エバン！」

「っ！」


　その瞬間、驚くほどのスピードでミネルヴァが蹴破られた扉へと振り向き、ワンテンポ遅れたエバンへ声をかける。


「ここにいるのか？　俺のモノになるはずだったニ・ー・ナ・を落札した11番ってやつは……」


　そこに立っていたのは、顔を隠した男の声をした人物と、後ろに二人。大男と少女が付き従っていた。

　そんな者たちを警戒するべく、エバンとミネルヴァは得物を手に取り、殺気を浴びせる。

「ここはお前たちのような野蛮人が入ってきていい場所じゃない……。今すぐこの部屋から出ろ」

　エバンは今までに見せたことのない、憤怒の表情で乱入者へと言い放つ。


「ははっ！　お前……、喧嘩っ早い性格だろう？　そんなんじゃモテないぜ？　そんなお前の主人も同類か！」

　顔を隠した人物はおちょくるようにエバンへと喋りかけると。


「お前にアルス様の何が分かる！」

　エバンがまんまと挑発に乗ってしまう。

「エバン！　これ以上相手の話に付き合うな……、おいお前。流石にこれ以上はおいたが過ぎるんじゃないかい？」

　ミネルヴァが得物を持つ手により力を入れながら睨む。


「マスター。私たち二人相手でもあの赤髪の女、倒せないよ？　」

　顔を隠した人物の仲間であろう少女が、小さな声で話す。

「分かってる。あんな化け物相手に、今はやり合うつもりはない」

「っ！　あいつ……」

　アルスが顔を隠した人物をよく見ると、鑑定眼鏡らしきものをかけているのが確認でき、すかさず自身も鑑定眼鏡をかけて、鑑定しようとすると。


「お前ら。俺の後ろに隠れろ……」

　顔を隠した人物は仲間二人を背後に隠す。



　もしかして……



　アルスは焦りながらも鑑定を急ぐ。


「おいお前。アルスって言ったな。今日は先輩としてお前にいい事を教えてやる。いいか、よく聞け……」


　顔を隠した人物は仲間をより自身に近づけ、アルスに語りかける。



　早く鑑定を！　……、きた！



「……、え？」
　
　顔を隠した人物を鑑定した途端、アルスは体が固まったかのように動かなくなる。






「まさか……、お前……」

　そして、アルスが何かを察した瞬間、顔を隠した人物がある言葉を口にする。







「この世界に来たのはお前だけじゃないと思え……」

　顔を隠した人物は意味深な言葉をアルスへと言い残すと、魔具と思しき物体を地面へ叩きつけ、仲間と共にその魔具から噴出した白い煙で姿をくらまし、その場から消え去ったのだった。