鬼畜ゲーとして有名な世界に転生してしまったのだが~ゲームの知識を活かして、家族や悪役令嬢を守りたい!~

ガクーン

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ハイエルフの少女 その4

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 こういう時は……

 アルスは会話する為、ひざを折り、ニーナと同じ目線の高さまで下がる。

「初めまして。私の名前はアルス。君と仲間になりたくてオークションに参加したんだ。君の名前は?」

 アルスは10歳らしい、ニコニコした表情でニーナに喋りかけた。

「…………私はニーナ」

 ニーナはアルスと目を合わせるが、すぐに目をそらしてそう答える。

「ニーナって名前なんだね。いい名前だ。私もニーナって呼んでいいかな?」

「……好きにして」

 ニーナはぶっきらぼうに言う。

「じゃあニーナ。私の事はアルスと呼んでくれ。あと、私の仲間の紹介をしてもいいかな?」

 ついに無言になったニーナ。

 
 無言ってことは、肯定っていう意味で受け取っていいよね。

「私から見て、右後ろに居るのがエバン」

「初めまして。アルス様の従者のエバンです。よろしくお願いします」

 エバンは従者らしく、惚れ惚れする姿勢でニーナに挨拶をする。

「そして、左後ろに居るのがミネルヴァ」

「やぁ、アルスの愛人のミネルヴァだよ」

 ミネルヴァは当たり前のように噓をつきながら挨拶する。

「しれっと嘘をつくのは止めてください。ニーナ、この人は私の護衛だ。決して私の愛人では無いから安心してほしい」

 アルスがすぐに訂正をすると。

「なんだいアルス。恥ずかしいのかい? 昨日の夜あんなに求めてきたのに……、私は悲しいよ……」

 ミネルヴァは泣くふりをしながら、ニヤニヤした顔を両手で覆い始めた。

「まったくあなたって人は、どれほどアルス様に迷惑かければ気が済むんですか! ミネルヴァさん! 聞いてますか」

 すると、エバンが聞いてられないといった様子で、ミネルヴァに注意し始める。

 すると、3人の騒がしいやり取りに。

「ふふっ」

 ニーナが笑みをこぼす。

 そのことに気が付いた3人は。

「やっと笑ってくれた」「笑いましたね」「笑ったね」

 ホッとした表情で、ニーナを見る。

「っ! 笑ってない……」

 ニーナは顔を赤くして、顔を隠す。

 こうして、4人は少しずつ打ち解け合っていったのだった。




 ~王都奴隷オークションから数日後~

 アルス達は各々、訓練や勉学に励んでいた。

 エバンとミネルヴァは武術の訓練。

 そして、アルスとニーナはというと。

「そうだよ。ここにその数式を当てはめると……、正解!」

「……アルス、教え方上手…」

 アルスがニーナに勉強を教えていた。

 何故勉強をアルスが教えているかと言うと、最初アルスはニーナに弓術の訓練をさせようかと思ったのだが、ニーナが異常に弓術を嫌っていた。それなのに無理やりやらせるのはアルスの美学に反するなと思い、なら勉強を教えるかという事で、仲を深めるためにもアルスがニーナに勉強を教えるという事になり、今に至る。

「それにしても、ニーナは勉強が好きだね」

 アルスがふと感じた疑問をニーナに問いかける。

「……私、本当は勉強とかがしたかったの」

「うん」

 こういう時は、相手の話を聞いてやるだけでも心のつっかえが軽減するというもの。

 アルスは相手に耳を傾ける。

「……でも、私はハイエルフだから……、周りに期待されてて、あまり好きじゃなかった弓の練習も頑張ってやった」

「そうなんだ。偉いなニーナは」

 するとニーナは俯き、頷く。

「でも……、全然上達しなくて……、いつの間にか私を、周りの人は……っ!」

 ニーナはハイエルフの特徴である長い耳を隠しながら、ポツリポツリとアルスに話していくが、突然はっとした様子で、アルスを見るとそれ以上話さなくなってしまった。


 ニーナの気持ちが良く分かる。だからこそ……

 アルスはそっと身を乗り出し。

「ニーナ。辛いことは無理に話さなくてもいいんだよ。出来ることから少しずつやっていけばいいんだ」

 優しい声でニーナに話しかける。

「でもアルスも……、私に期待して買ったんでしょ?」

 ニーナは恐る恐る質問する。

「それを言われたら否定は出来ない。でも、私はニーナがハイエルフだから買ったわけじゃない。君だから仲間にしたんだよ。大丈夫。君が思うようにしていてくれれば私はそれで十分だから」

 アルスは相手に寄り添うように答える。

「でも……」

 段々とニーナの目じりに涙が増える。

 するとアルスはニーナの手を取り。

「約束しよう。ニーナに無理はさせない。だから、君のペースで出来ることをしていってくれればいい」

 アルスの目は真剣そのもの。里でここまで優しくされたことのない、ニーナはそんなアルスに心溶かされ。

「……ううっ、グス」

 アルスに顔を見られないように、手で顔を隠して泣くのだった。
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