鬼畜ゲーとして有名な世界に転生してしまったのだが~ゲームの知識を活かして、家族や悪役令嬢を守りたい!~

ガクーン

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女傑と白銀の戦士 その2

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「お、お前は……」

 敵司令官がその女性の顔を見た瞬間、恐れるかのような表情を見せ、一歩後ずさる。

「忘れたのかい?」

 深緑の髪にキリッとした目。全身を青と白で統一した服装を身に纏い、腰から覗かせるレイピアらしき武器は、匠の手で作られたと分かる一品。

 
 私も初めて目にした。確かに華麗で美しい女性だ。

 この国に住む者なら一度は耳にしたことがあるほど、有名な人物。

 全女性の羨望の的でもあり、王国騎士団1番隊、隊長でもある王国一の女傑。


「サリアナ・ジュ・フォルゼン。さっきはお世話になったね」

 にこやかな笑みを浮かべながらそう答えるのであった。



「何故お前がここに……あの時確かに」

「確かに私をおびき寄せた……って言いたいのかい?」

 図星からか、敵司令官はその言葉に動揺を見せる。


「確かに私は騙されてあの場所に……」

 サリアナが話をする途中。背後から静かに迫る敵の影。


 あっ、あれは!

「あぶな……」

 サリアナの死角から奇襲を試みる敵二人に反応したエバンは、注意を呼び掛けようと声をあげるが。

 
 くそっ、間に合わない……

 相手の攻撃が一歩早く、サリアナへと迫る。


「大丈夫」

 しかし、サリアナは振り返ることも無く、その攻撃をいとも簡単に受け流し、エバンに微笑みかける。

 そして、背後に息を潜めていた敵二人へと振り向き。

「女性の話を遮ってはいけないって親に教わらなかったかい?」

 笑みを崩すことなく、敵二人の生命を刈り取る。


 武器を抜く瞬間が見えなかった……

 先ほどまでは腰にかかっていたレイピア。

 敵兵を葬り去る瞬間、確かに抜いたはずなのに。目にもとまらぬ速さで、もとの位置に戻っていた。


 ドサリ。

 鈍い音が静かな空間に響く。

「なっ……」

 敵司令官はその一連の光景を目の当たりにし、ゴクッと息を飲む。


 敵司令官だけではない。その場にいる人物たちの殆どが圧倒的力を目の当たりにし、その場から動けずいた。

 ただし、二人を除いては。


「そこの君」

 サリアナは背筋をピンッとさせながらある点を指差す。

 その場にいる人たちは皆、サリアナが指差す場所へと体の向きを変え、サリアナからその指された人物までパックリ道が出来る。

「白銀の……そう、君さ」

 白銀の戦士は自分が指名されている事に気がつくと、静かに口を開く。

「……なんだ」

「私が言いたい事ぐらい分かるだろ?」

 白銀の戦士は黙り込む。


 そして、数秒の間を空けたのち。

「……私とやろうというのか」

 彼女が自分と戦いたがっているという事を理解し、返答する。

 その答えにサリアナは満足したかのように、無言で首を縦にふる。


「……そうか」

 すると白銀の戦士は許可を求めるかのように敵司令官を見つめる。

「駄目だ! お前が倒されたら私達は……」

「私があの女に負けるとでも?」

 その瞬間、白銀の戦士から物凄い圧が湧き出る。


「ぐっ……」

 その圧に圧倒され、押し黙る敵司令官。


「ま、待て! 今だったら私達全員でかかれば何とでも……」

「見ろ」

「何を……」

 白銀の戦士はガイルへと向きを変える。


「あの男……疲労したふりをしているが……」

 そして、胸元から取り出した小ぶりのナイフをガイルめがけて投擲する。

 そのナイフはガイルへと一直線に向かっていき、突き刺さるかと思われた時。


 カキィン。

 バレたかと言わんばかりに笑みを隠しながら、自身に投擲されたナイフを叩き落とした。

「やっぱりバレてたか」


 気づかなかった……

 エバンすら騙されるほどの完璧な演技。しかし、白銀の戦士はそれをも見抜いて見せる。


 こうして、ついさっきまでヘロヘロになっていたかに思われたガイルが何とも無いかのように平然とし始める。

「……これで騎士団隊長が二人そろった。不利なのは私達の方だ」

 黙り込む敵司令官。

「……分かった。好きにしていい」

 そして苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべ、勝手にしろと明後日の方向を向く。


「これで邪魔者はいなくなったね」


 カツ、カツ、カツ……

 白銀の戦士は返答をせず、サリアナに近づいていく。


「そうこなくっちゃ」

 サリアナも笑みを浮かべながら軽快に近づいていく。


 徐々に近づいていく二人。


 そして、二人の間が5メートルを切った瞬間。


 き、消えた! いや、高速で移動したのか。

 辛うじてエバンが追うことが出来るスピードで二人は走り出し、白銀の戦士は腰から白銀の光沢溢れる剣を。サリアナは金色に輝くレイピアを抜き、ぶつかり合ったのだった。
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